2000年代の私は、よく遠出して遍路をやったり、フリマに参加したりしていた。
どちらの場合も「自分で担いで歩ける範囲」の装備が基本で、売り物等を持たなければならないフリマの場合も、なるべくコンパクトにしていた。
映画の寅さんみたいに「トランク一個の流れ者」とはいかなかったが、それに近くなるよう努めていた。
お祭りやイベントでのフリマ参加のときは鳴り物なども持参したくなり、そういう場合はコンパクトなウクレレを選ぶことが多かった。
ウクレレは楽器の中ではかなりコンパクトな部類なのだが、大きさがちょっと微妙で、カバンやリュックにぎりぎり入らないことが多く、扱いに困ることがあった。
もう一回り大きければ、覚悟して別に担ぐか、すっぱり持参を諦める。
もう一回りコンパクトなら、荷物をまとめやすくなる。
そのちょうど境目の辺りの大きさなのだ。
楽器が今の大きさ、形に落ち着いてることには、それなりの必然性がある。
何よりも「音」の要素が大きいし、そこに操作性や携帯性も絡んでくる。
私も色々と楽器工作をやってきて、楽器メーカーから出ているウクレレの大きさや形、素材の持つ意味を、少しは理解できるようになってきた。
もしウクレレに今以上の携帯性(要するに小型化)を求めるならば、肝心の「音」の面で、捨てなければならないものが大きすぎるということは、よくわかる。
だからちゃんとした楽器メーカーが、あまりその領域には手を出していないのも、まあ当たり前のことだ。
しかし、幸いなことに私は素人である。
素人なので、自分の楽しみの範囲でおバカな実験的工作をでっち上げるのも自由自在だ。
もしウクレレに今以上の携帯性を持たせるとするならば、物理的にいくつかの方法がある。
楽器として機能させるために弦駒から指板先端までの寸法はいじりようがないとして、ボディのサイズを削るには、以下の三つが考えられる。
1、薄くする
2、細くする
3、小さくする
どれを選んでも「鳴り」の面で条件が悪くなるのは避けようがないが、どのくらいまでなら自分は納得できるか、それは作ってみなければわからない。
ということで、一度極限まで「細く」してみようと試作したのが、以下の作品。
私の自作ウクレレ4本目くらいに当たり、そろそろノーマルな形に飽きて、変なものを作ってみたい気分になっていたころでもあった。。。
一目瞭然だと思うが、マーチンのバックパッカーをパクっている(笑)
当ブログではお馴染みの、例の廉価版ウクレレキットをぶった切り、バックパッカー風に工作したものだ。
作り始めた時点で「鳴り」はほとんど諦めていて、せめて見映えがするようにとデザインにはかなり凝っている。
デザインモチーフは、最初の一本に続いて「ワタリガラス」だ。
北米先住民のワタリガラスをトーテムに持つ部族の意匠を下敷きにしている。
完成して爪弾いてみると、やっぱりというか、全然鳴らなかった(笑)
本家マーチンは同じような形のバックパッカーウクレレも出しているけれども、もっとちゃんと鳴るんだろうな。。。
十年近く前に作ったものなので、今なら同じ形状でも使用する木材に厚みを持たせる等で、もう少しマシな鳴りのものが作れると思うのだが、制作当時はそれでもけっこう気に入って、旅のお供にしていた。
何よりも、リュックのサイドポケットに突っ込めるお手軽さが良かったのだ。
一人旅の夜、焚き火をしながらこのオモチャウクレレを弾いてみたり、星野道夫の本を開いてみるのが好きだった。
●「森と氷河と鯨―ワタリガラスの伝説を求めて」星野道夫 (ほたるの本)
この本は、今でも何年かに一度手にとって、一人静かにゆっくり楽しむ一冊だ。
2014年12月14日
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