前回記事では、私が描きたいマンダラの中でも、もっとも優先度の高い胎蔵曼荼羅について、これまでに制作してきた習作を紹介した。
金剛界についても同様に、習作を紹介しておこう。
前回記事の180cm×180cmのドローイングと同時に制作したもので、画材もロールのクラフト紙、ペンキ、缶スプレー、マジックペンなど。
とにかくザッと描きあげて、目の前に吊ってみたいという目的だった。
制作にあたっては、私のフェイバリットの一つであるアルチ寺院の壁画に描かれるちょっと変わった金剛界曼荼羅を意識している。
こちらも前回の中台八葉ドローイングと同様、金剛界曼荼羅から中心になる五智如来の構造を抽出した「抜粋マンダラ」である。
五智如来の理解には、以下の参考文献に負うところが大きい。
●「理趣経」松長有慶(中公文庫)
名著中の名著ではないだろうか。
理趣経の解説を本筋としながら、チベットまで視野にいれた密教の思想を、極めて平易な語り口で紹介してある。
私が宗教関連の本を読み始めた極初期にこの本と出会えていたことは、今から考えると本当に幸運なことだったと思う。
密教について、曼荼羅について、まず最初に何を読むべきかとと問われれば、一秒も迷わずこの本を推す。
仏教の入門書とかムック本は毎月のように刊行されていて、高名な学者や僧が編者や監修に名を連ねている場合も多いが、明らかに名前を貸しているだけで、内容がナイヨーなどうでもいい紙束をよく見かける。
この本はそういうのとは全く違い、書くべき人が全力投球で書き上げた、入門編にして奥の院みたいな一冊なのである。
2015年05月31日
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