夢を見た。
昔世話になった師匠が亡くなったという。
突然の訃報に困惑する。
まだ話したいことがたくさんあったのに、日々の忙しさに紛れてしまっていた。
最後に会ったのがいつのことかも、はっきり覚えていない。
もうだいぶ前に葬儀も埋葬も済んでしまったという。
このままにしておくことはできない。
僕は一人、師匠の眠る森の中へと急ぐ。
山道を進むと、木立の合間に砂地の広がった空間があり、真ん中に石が一つ置いてある。
僕は石の下を掘る。
砂地なので素手でいくらでも掘れる。
やがて横たわっている師匠が、砂の中から現れてくる。
「おまえが掘り出してくれたのか」
師匠は眠りから覚めたように起き上がる。
「わざわざ掘り出してくれたが、おまえにはもう伝えることは伝えたし、それはわかっているだろう」
少し困った顔で、師匠はそう言う。
僕は黙ってうなずく。
「しかし、こうして最後に話せたのはよかった。ありがとう」
師匠はそう言い残して、森の奥へと旅立っていく。
2015年08月19日
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