2015年08月19日

本当のおわかれ

 夢を見た。

 昔世話になった師匠が亡くなったという。
 突然の訃報に困惑する。
 まだ話したいことがたくさんあったのに、日々の忙しさに紛れてしまっていた。
 最後に会ったのがいつのことかも、はっきり覚えていない。
 もうだいぶ前に葬儀も埋葬も済んでしまったという。
 このままにしておくことはできない。
 僕は一人、師匠の眠る森の中へと急ぐ。
 山道を進むと、木立の合間に砂地の広がった空間があり、真ん中に石が一つ置いてある。
 僕は石の下を掘る。
 砂地なので素手でいくらでも掘れる。
 やがて横たわっている師匠が、砂の中から現れてくる。
「おまえが掘り出してくれたのか」
 師匠は眠りから覚めたように起き上がる。
「わざわざ掘り出してくれたが、おまえにはもう伝えることは伝えたし、それはわかっているだろう」
 少し困った顔で、師匠はそう言う。
 僕は黙ってうなずく。
「しかし、こうして最後に話せたのはよかった。ありがとう」
 師匠はそう言い残して、森の奥へと旅立っていく。

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posted by 九郎 at 23:26| Comment(0) | TrackBack(0) | | 更新情報をチェックする
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