ここまで、中世陰陽師の伝説の秘伝書「金烏玉兎」の、由来および創世神話について紹介してきた。
紹介できたのは「金烏玉兎」のほんの一部分に過ぎない。より詳しい内容に触れたい人は、原典にあたってみてほしい。
書名「金烏玉兎」のうち、「金烏」は太陽の中に住むと伝えられる三本足の烏を、「玉兎」は月に住むと伝えられる兎を指す。月の兎については、以前今昔物語の中の一エピソードを紹介した。「金烏」についても、諸説ある中から中国神話の一エピソードを紹介し、このカテゴリのひとまずの結びとする。
【中国射日神話】
むかし、太陽は十個存在していた。
十個の太陽は東の海中、巨大な扶桑の樹に住んでいた。
一番上の枝で休む一個の太陽が順に空に出て、この世を照らすサイクルを続けていたのだが、長い年月同じことを繰り返すうちに太陽たちはすっかり飽きてしまった。
いたずらっ気を起こした太陽たちは、ある日を境に十個そろって空に上るようになった。地上は炎熱に晒され、大地は焦げ付き、川は干上がった。
困り果てた人間たちは、弓の名手に頼んで太陽を射てもらった。
放たれた矢は見事一個の太陽を射抜いた。地上には金色の羽が舞い、三本足の烏の死体が落下してきた。
弓の名手が次々と矢を放つと、金色の三本足の烏の姿をした太陽は次々と射落とされてしまった。
残りの太陽が一つになったとき、ようやく名手は弓を下ろした。
こうして太陽はたった一つになったのである……
2007年05月22日
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