法事である。
会場は五重塔のような寺だが、実質は三階建てで、廃屋のように古びている。

梯子のようなボロい階段をのぼってニ階の板の間に座る。
建付けが傾いてしまっており、正座していると地上にずり落ちそうになり、危険である。
おれは坊主の座っている一段高い畳のヘリを握って耐える。
他の親類もみんなおっかなびっくり座っている。
三人の坊主は澄ました顔で読経を続けており、その無情さにおれは腹を立てる。
さすがに見かねたのか、坊主の一人が手元の仕掛けを何かいじると、ギギ〜と一瞬だけ板の間が平衡を取り戻す。
しかしその後すぐに前よりももっと傾き、参列者の悲鳴が上がる。

バカバカしくなって梯子を降りると、みんなも続々と降りてきた。
坊主が「下で待機してくれていてもいい」と言ったのだそうだ。
当たり前である。
塔を見上げると、座布団や布団がバラバラと降ってくる。
雪が降っており、寒いのでこれを各自防寒に使えということらしい。
とことん無礼な坊主どもだ。
外は大雪になってしまった。
手持無沙汰のおれは、雪を手にすくいながら、どこからか聞こえてくるラジオニュースを聴いている。
日本全国大雪で、交通機関は全てストップしているらしい。
今日は一日中この腐った寺にいなければならず、暗澹とした気分になる。