年末ということで本の紹介をしてきた。
もう一冊、覚書にしておきたい本がある。
今年9月に刊行された本で、書店でタイトルを見た瞬間に衝撃を受けた。
著者名を見て即買いし、読み耽った。
読後「これは今年の一冊になるな」と思い、ブログでも早々に紹介したいと思っていたのだが、なかなか語る言葉が見つからずにいた。
実は今も、適切な紹介の言葉が出てこないので、ごく簡単な覚書として書き留めておきたいと思う。
●「ふたり 皇后美智子と石牟礼道子」高山文彦(講談社)
メインタイトル「ふたり」に表されている通り、様々な「ふたり」の関係がルポされている。
中でも主軸になるのが、二人のミチコ、サブタイトルの「皇后美智子と石牟礼道子」である。
皇后と、水俣の語り部にして「苦海浄土」の著者・石牟礼道子。
立場も含め、全てが遠く隔たった二人に、いかなる関係が存在するのか?
私は水俣と天皇家について多少の知識があったので、息を殺しながら、時間をかけて丁寧に読み進めた。
結果、確かに二人のミチコの間には強い絆が存在すると納得した。
それも、簡単にお互いへの敬意とか友情とか表現できるような絆ではない。
そうした感情はもちろん含まれているだろうけれども、それはもっと激しく鋭利なものなのではないかと感じた。
孤独な二人の幼女が、泣き叫びながら白刃を突き付け合って、それでもお互いから目を離せないでいる。
あくまで私の勝手な想像だが、そんなイメージが浮かんでくる。
今はこんな感想の断片しか書けないのだが、これからも折に触れ、読み返したい一冊になった。
そしてこれまでに読んだ本の中から、今回の一冊と(ごく私的な捉え方として)深く関連すると考えるものを挙げておきたい。
●「黄泉の犬」藤原新也(文春文庫)
●「なみだふるはな」石牟礼道子 藤原新也(河出書房新社)
2015年12月29日
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