待ちに待った展覧会初日、午後から時間がとれたので早速行ってきた!!!
高校生の頃、強烈に影響を受けたイラストレーターの展覧会が、当時の記憶が色濃く残ろ街で開催され、それを観に行ってきたおかげで、すっかりテンションはクソガキ返りしている(笑)
クソガキの頃のおれが、どれほど生ョ範義にハマっていたかは、これまでに何度も記事にしてきた。
ただ、イラストレーターの作品なので、本の装丁や画集などの印刷物でしか鑑賞したことはなかった。
生の作品に触れるのは今回がはじめて。
遂に遂に、この日が来たのだ。
イラストレーターや漫画家の作品は、基本的には印刷物こそが「完成作品」になる。
しかしそれでもタイプはあって、例えばおれが原画またはそれなりの精度の複製原画を観た範囲でいうと、手塚治虫や永井豪は、原稿の方がキャラクター達が生き生きとして、輝いて見えた。
対して、つげ義春や水木しげるは、状態のいいモノクロ印刷の方が「闇」がしっとり黒々と深く、おれにとっては「完成」して見えた。
果たしてオーライ先生はどちらのタイプであるか?
そんな問いかけも胸に秘めつつ、追憶の地・明石へと向かう。
会場に着く。
個々の作品について語り出すときりがないので、恥ずかしながら絵描きのハシクレであるおれが、あらためて気付いた点などを、覚書にしておきたいと思う。
・作品サイズが意外に小さい。
あの凄まじい描き込み情報量から、原画はもっと大きいのかと思っていた。
もちろん大きい作品もあるのだが、大半は10号からせいぜい20号程度。
イラストとしては普通のサイズで、絵画として考えると小品の部類だ。
それでもサイズ以上のパワーが放射されていたのは言うまでもない。。。
・使用画材はリキテックス。
安価でポピュラーなアクリル絵の具である。
あれ〜、、、おかしいなあ。
おれもリキテックス使ってんだけどなあ。
九州で売ってるリキテックスは成分が違うのか(苦笑)
意外と小さいサイズにあの描き込みなので、絵の具は普通でも、面相筆にはこだわりがありそうだと感じた。
・意外に厚塗りではない。
画風から、もっとこってり油絵のように厚塗りしているのかと思っていたが、どの作品も意外に薄塗りで、キャンバスの布目や、紙の質感が残っている作品が多かった。
紙やキャンバスの白地を透過させる水彩画的な表現も多用しているらしいのは目から鱗だった。
厚塗りせずにあの画風なのは、いかに迷いなく、一気に描ききっているかということとも関連しているはずだ。
画面の上で試行錯誤していると、こうはいかない。
・あの「緑色の宇宙」は、リキテックスを使っているせいか?
オーライ先生の使ってるリキテックスがおれのと同じなら(笑)、「群青より緑の方が深みが出る」というのは、なんとなくわかる気がするのである。
おれの使い方が未熟なせいもあろうが、前からリキテックスはコバルトブルー系の扱いが難しい気はしていたのだ。
気持ちよく発色する「闇」を描こうとすると、青系より緑系の方が階調が出しやすいのかもしれない。
・原画の方がいい!
予想通りというか、オーライ作品は原画の方がやっぱり良かった。
しかし、印刷物でもかなりのレベルで再現はされていると感じた。
それは、絵の具自体の性能にあまり頼らず、混色をなるべく避けてコントラストのはっきりした印刷で出やすい画面作りをしているせいだ。
納期のあるイラストであることが迷いのない集中力を生み、印刷前提であることが色彩やコントラストの強さを生んで、そうした「制約」がむしろ原画の質を高めているのだ。
本当にいい展示だった。
会期はまだまだ長く、たぶん作品の入れ換えもあるので、ぜったいあと何回かは行く!!!
2016年04月16日
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やはり絵を描かれる方の視点はひと味違って興味深いです。
何回か通われるとのこと、今度は印象に残ったイラストについてのコメントもぜひ教えてください(って全部か…)。
まず装丁本のピラミッド展示に圧倒され、SFアドベンチャー誌の表紙絵の大量展示に狂喜し、その他の画業もまんべんなく網羅されていて、満腹しました。
中でも圧巻は、イラスト仕事ではなく絵画として描かれた大作「我々の所産」で、これはまさにオーライ・マンダラ図でした。
館内で流されていた解説ビデオによると、この作品以上の600号の超大作も存在するそうで、まだまだオーライ・ワールドは奥が深いですね。
今まで色々な画展に行きましたが、今日行ったのが一番すごいと思いました。
何という細かい描き込みでしょうか。
もう、溜息を通りこして力の抜けた笑いしか出てきませんでした。
ほとんどエアブラシは使っておられないのですね。
これもすごい。
何よりびっくりしたのはあのスーパーリアリズム!それも1970年代に!
あんなすごい肖像画は初めて見ました。
昭和60年ころは年間100くらいの表紙絵を描いておられたのだとか。
いったいどんなスピードであの細密画を描いていたのでしょう。とても信じられません。
画家を通りこしてもはや"怪物"ですね。
いやあ、行ってよかったです。
お知らせくださりありがとうございました!
時間をかけない前提を、第一印象の強さや発色のよさ、タッチの力強さに繋げるという離れ業で、他の誰にもできることではないです。