塗り絵ばやりが根強く続いている。書店に行けば、何らかの塗り絵本が途切れることなく並んでいる。
塗り絵という言葉を見るたびに、心の底でわずかに反応する部分がある。幼い頃の記憶の断片。
私は幼い頃、視力が少々弱かったので、眼科医に通って訓練を続けていた時期があった。中々根気の続かない幼児の私をあれこれとおだてながら、お医者さんや親の苦労は続いた。
当時から絵を描くのが好きだったので、訓練メニューには「お絵描き」をテーマにしたものも用意されていた。その中に「塗り絵の絵をなぞる」と言うものがあった。
お気に入りのキャラクターが線描きされた塗り絵本にトレシングペーパーをかぶせて、鉛筆でなぞっていくのだ。その際、とくに弱かった右目の視力を高めるために、「アイパッチ」という絆創膏のようなシールで、見える方の左目を隠したりした。
見えない目で線を辿るもどかしさや、くしゃくしゃとしたトレシングペーパーの感触が、今でもふとした瞬間によみがえってくることがある。
例えば書店の塗り絵本が並んでいる一画で。
訓練のかいあって、私の目は中高生の頃には人並み以上によくなった。今はもう視力は落ちているだろうけれども、それでも平均以上には見えているはずだ。
長い年月が経った今、私は神仏の線描き「白描画」をあれこれと集めては、それをなぞったり着色したりを続けている。トレシングペーパーは相変わらず必需品だ。「三つ子の魂百まで」とはこのことか。
そんな私がお勧めする塗り絵本が、こちら。
●「癒しの塗り絵―美しい密教の仏とマンダラ」
塗り絵ばやりということで、仏画塗り絵も何種類か出ているが、私がしっくり来たのはこの一冊。日本の仏画とは違うチベットタンカ風なので好みは分かれるかもしれないが、原典をかなり忠実に再現した線画で、余計なアレンジが少ないのが良い。史料としても十分使え、値段もお手頃。
2007年06月02日
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