生頼範義 生頼範義 生頼範義
生頼範義 生頼範義 生頼範義
おおらい のりよし おおらい のりよし
おおらい のりよし おおらい のりよし
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生ョ範義のイラストは、強烈だ。
初見のインパクトが凄い。
書店や街中に生ョイラストがあると嫌でも目にとまるし、一度見たら忘れられない。
そのインパクトを分析すると、以下のような特徴が挙げられる。
・はっきりしたコントラストの強い色使い
・豪華で、ときに荒々しい筆のタッチ
・卓越した写実
今開催中の「生ョ範義展 The Illustraor in 明石」の、2F第二展示室では、手法も制作年代も幅広い、多数の原画が展示されている。
既に二回展示を観に行って、何周も回ってきたのだが、途中でふと気付いた。
制作年代順になるように鑑賞しなおしてみると、結構絵柄の変遷があるのだ。
とくにリキテックスによるカラーイラストは変化が見えやすく、上で挙げたような特徴が高いレベルで確立したのは、1980年の少し手前あたりの時期ではないかと感じた。
誤解を恐れずに書くと、70年代は写実も色使いも、まだ発展途上だったのではないかと思う。
絵描きの多くは、学生時代に写実表現の修行を積む。
プロフィールによると生ョ範義は19歳で東京芸大の絵画科に入学している。
日本中の若者の中から「絵の上手い順」で入るような所なので、10代のうちに写実は一通りハイレベルで習得していたことになる。
だから「実物モデルを見ながら、じっくり時間をかけて」という条件下であれば、学生時代から描けないものは無かっただろう。
しかし、そういう意味での絵の上手さと、仕事として注文を受け、納期を守りながら量産する能力は、また別物だ。
制作時間を短縮し、仕事の質を上げるために、イラストレーターは通常、それぞれの得意分野を絞る。
肖像、女性像、男性像、動物、植物、風景など、分野を限定することで練度を上げ、資料を集積し、限られた制作時間内でやりくりする。
生ョ範義の場合は人物像とメカニック表現を軸に、SF表現を含めて求められるあらゆる世界観をカバーしていったのだろう。
納期のタイトな、印刷前提のイラストの大量受注という条件が、ある意味では生ョイラストの特徴を生み出したのではないかと思う。
まず、リキテックスという画材がそうだ。
乾燥が速いので、制作時間を短縮しやすい。
乾燥前は水で溶けるが、乾くと耐水性になるので、油彩と水彩の両方の技術を使うことができる。
色数が多いので混色に時間をとられず、発色が良い。
コントラストの強い、はっきりした色使いや、強めの筆タッチは、原画の雰囲気を小サイズの安価なカラー印刷でも再現されやすくする工夫から生まれたのではないだろうか。
そして、文字の入る箇所による構図上の制限、注文による画面中の登場人物の指定などは、かえって作品の構成能力を高めるバネとなっていく。
制作時間と内容のがんじがらめの制限。
年間100枚を超える受注。
そうした過酷な条件が、生ョ範義の画風を鍛え上げたのではないだろうか。
まさに、百戦錬磨である。
あの生ョ範義ですら、自分の画風を確立するのに10年以上のキャリアが必要だったのではないかと感じたことは、二重の意味で衝撃だった。
勇気づけられもし、背筋の凍る思いもした。
とにかく描け、描け、描けと、背中をどやしつけられる、絵描きのハシクレにとってはそんな展覧会なのだ。
(つづく)