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2016年09月17日

プラモ再起動

 私は80年代初頭の「ガンプラ・ブーム」直撃世代なので、小学生の頃からプラモはたくさん作ってきた。
 当時のプラモ、とくに小学生が手を出しやすい低価格帯のものは、色は成型色一色のみ。
 組み立てには接着剤が必要で、カッコよく仕上げるためにはパーツの合わせ目を丁寧にペーパーで消し、塗料で彩色する必要があった。
 今思い返してみると、小学生にとってはかなり難易度の高い作業である。
 当然、そんなに上手くはいかない。
 色むらだらけ、はみ出しだらけになる。
 それでも「付属の接着剤でとりあえず組み上げただけ」の状態よりは、下手くそでもいいから色を塗ってあった方がはるかに見映えはした。
 市販されているプラモのレベルがまだまだ発展途上だったからこそ、子供でも蛮勇をふるって色を塗ったり、簡単な改造を施したりできたのだ。
 模型誌の作例も、とくに実在しないアニメメカなどを「リアル」に仕上げる技術は、まだまだ発展途上にあった。
 雑誌に載っているカッコいい作例が、(実際には難しいのだが)小学生にも「がんばったら手が届きそう」に見えた。
 模型誌の作例が、素人にはおよそ手が届きそうにないプロの技術の領域に入っていったのは、確か80年代半ばくらいからではなかったかと記憶している。
 そのあたりから、読者とプロモデラーの間に距離ができ始めた。
 雑誌に載っている作例が、自分が造るときの「見本」の範囲を超えた。
 工芸品のような緻密な仕上げの作例を、ただ仰ぎ見るほかなくなっていった。
 
 私は中高生くらいまでよくプラモを作っていたが、大学に進学して美術系の実習が多くなると、造形意欲はそちらで満たされるようになった。
 並行して学生演劇の舞台美術もやっていて、それには子供時代からのプラモ経験が大変役立ったのだが、プラモ制作自体からは遠ざかるようになった。
 あともう一つ、大学時代の同級生に本物のモデラーがいたことも大きい。
 彼の技術を目の当たりにして、模型製作とはこんなに緻密なものなのかと驚愕し、ラフで大雑把な性格を持つ絵描きにはとうていムリだと見切りがついたのだ。
 それでも、ラフな造り、塗りでも許容される怪獣モノなどにはたまに手を出したが、メカモノをきっちり仕上げる意欲は湧かなくなった。
 おそらく当時造ったであろう怪獣ガラモンが、これ。

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 90年代半ば以降はメカモノのプラモ自体のレベルが上がり過ぎて、買っても「ランナーから外して組み立てるだけ」以上のことがやりにくくなった。
 それで充分カッコいいし、よく動く。
 下手に色を塗ると「素組み」より汚くなったり、可動部で剥げたりしてかえってカッコ悪くなる。
 いつの間にかキャラクターモデルは「造って塗るもの」から「組み立て式可動フィギュア」になっていき、誰が組んでも一定水準のものが手に入る時代になったのだ。
 それでもたまに新しいガンプラに手を出してしまうこともあり、そんな時には最新技術に感心し、それなりに素組みを楽しむのだが、完成してしまうとなんとも言えない虚しさに襲われる。

 確かにカッコいい。
 よく動く。
 でも、誰が造ってもこうなんだよな……
 わざわざ金を払って、わざわざ時間を割いて俺が造らんでもいいよな……

 言葉にするとそんな気分に襲われ、ちょっとふさぎ込んでしまうのだ。
 そんな感じで、昨今のキャラクターモデルの進化を横目で眺めつつ、あまり近寄らないように過ごす期間が長く続いた。

 ところが一年ほど前、ふとしたはずみで古いプラモに手を出した。
 ガンプラ初期のプラモは「旧キット」と呼ばれながら、今でも生産、販売されているのだ。
 値段は昔のままで、びっくりするほど安い。
 量販店でたまたま見かけて衝動買いし、一気に組み立てた。
 これがまた、楽しいのだ。
 とくに塗るのが楽しい。
 子供の頃にはなかった絵描きとしての技量が今の私にはあるので、筆塗りでもかなりのことができるようになっている。
 旧キットを素組みで筆塗り。
 それだけでこんなにかっこよく仕上げられるのかと、我ながら惚れ惚れしてしまった。

 流行りの緻密な仕上げとは違うけど、これはこれでごっつええやん!
 この塗りは最近他ではなかなか見かけへんで!

 絵描きとしてのプラモ作りにハマってしまったのだ。
 
 以来、たまに古いプラモを買ってきては、時間のある時にごそごそ造り続けている。
 そんな折に出会ったのが、映画「シン・ゴジラ」だったのだ。
 
posted by 九郎 at 00:01| Comment(0) | TrackBack(0) | サブカルチャー | 更新情報をチェックする
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