このカテゴリ妄想絵画論では、私がこれまでに絵を描き、物を作る中で考えてきたことを覚書にしている。
私が私自身の絵を描くための覚書なので、広く一般に適用できる類のものではない。
数あるものの見方の一つとして読んでもらえれば、あるいは参考にできる人もいるかもしれない。
今回は、「色」と「形」についてである。
絵は基本的に色と形から構成されるが、私の見立てでは、絵描きのタイプによってどちらかに重点がある場合が多い。
個性とは一種の「偏り」なので、「色も形もバランスよく気を配って」ということにはなかなかならないのだ。
この「色と形」という分け方の軸に、前回までに述べてきた「線と面」という軸を加えると、わりと立体的に様々なジャンルの絵を俯瞰するヒントになると考えている。
あくまで「私の分類では」ということになるが、具体的に見ていってみよう。
初期印象派は、「色と面」が強い。
ゴッホなどの後期印象派になると、「形と線」の要素が出てくる。
ゴッホは一般的には「輝く色彩」のイメージが強いと思うが、私の捉え方では「形と面」を強調するために強い色彩や「線」の要素を取り入れていると見る。
キュビズムは「形と面」が強い。
ピカソは初期の「青の時代」「バラ色の時代」は「色と面」が強かったが、徐々に「形と線」が前に出てきた。
後期のピカソや岡本太郎は、「形と面」が表現の基本で、それを強調するツールとして「色と線」を駆使していると見ていて、ゴッホと同じカテゴリに入れている。
彫刻など立体は「形と面」が強いものが多く、マンガは「形と線」。
このように並べてみると、私の感覚的な分類がいくらか了解してもらえるかもしれない。
この「色と形、線と面」という分類に、私自身を当てはめてみる。
今の私が最も感情移入できる絵の表現の基本は「形と面」だ。
正直言うと、色のことはよく分からない。
ハシクレとは言え絵描きであるし、一応色彩に関する知識は持っているので、基礎的な指導くらいはできる。
しかし、色の感覚は取り立てて言うほどのものは持っていないと自覚している。
色に関してはどのように扱っていいか迷う期間が長かったのだが、ある時「そうか、色を形として使えばいいのだ」と気づいてから、少しずつ納得して使えるようになってきた。
敬愛するピカソや岡本太郎、ゴッホが、「形と面」を表現の基礎に置きながら、「色と線」でそれを強調しているのではないかと見立てられたことが大きい。
レベルは天と地ほどに違っていても、一応目指す高みが見えていることはありがたいのである。
空間認識能力と同じく色のセンスも、生まれつきと言うよりは、成育歴の中で培われるものだ。
私の成育歴の中には「混色理論」はあっても、「色彩を楽しむ感覚」はごっそりと抜け落ちている。
赤、青、黄、黒、白などの原色を、子供のラクガキのように塗りたくるしか能がないのだ。
2016年10月17日
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