何よりも、バンダイが昔のガンプラを生産し続けていることに感心した。
ガンダムに登場するモビルスーツのプラモデルは、90年代以降、あらゆるものが新しい技術でリメイクされていて、「リメイクのリメイク」すら着々と進んでいる。
そうした新しいプラモは接着剤もいらず、表面処理もいらず、無塗装でもほぼ色が再現されていて、しかも可動範囲が広いので自在にポーズがとれる。
スタイルも良く、見栄えがする。
買って組み立てるだけで、誰でも水準以上の「可動フィギュア」が手に入るのだ。
それに比べて昔のガンプラはというと……
接着剤を使って注意深く溶着しなければならない。
接着面は丁寧に磨き上げて目立たないようにしなければならない。
かなり細かく自分で塗り分けなくてはならない。
可動範囲は極めて狭い。
スタイルも今風とはかけ離れて、もっさりしている。
こうしたリメイク前のガンプラは、近年「旧キット」と呼ばれているようだ。
モナカの皮のように、外形だけを前後または左右の唐竹割りで造形してあることから「モナカキット」とも呼ばれる。(今のガンプラは広い可動範囲を確保するために、外形だけでなく内部にも可動軸の構造がけっこう詰まっている)
今のプラモよりかなり割安だが、ちゃんと作ろうとすると道具をそろえなければならないし、時間も手間もかかる。
普通に考えるとこのような古いプラモは、とっくの昔にお払い箱、絶版になっていて不思議はない。
にもかかわらず、今でも再販が続いている。
企業活動は遊びではないので、生産が続いているということは、それだけの需要があるということだ。
いったい誰が買っているのか?
かつてのガンプラ少年たちのノスタルジーだけで、そんなに需要があるのか?
買っている当人が疑問を抱きつつも、まずはざっくり仮組みしてみる。
●1/100 リアルタイプ RX-77 ガンキャノン
無塗装で組み立てただけだと、こうなった。

ちょっとびっくりした。
全然悪くない。
最初期のガンプラなのでもっとオモチャっぽいかと思っていたのだが、今回は「リアルタイプ」ということもあり、成型色が落ち着いていてすごく良い。
今の流行りの「小顔で細身」のスタイルではないが、ファーストガンダムのアニメの雰囲気が良く再現されている。
かつてのガンプラ少年が熱狂した安彦良和の原画や、大河原邦男の設定画、ポスターなどの雰囲気に極めて近い。
可動はどうしようもないけれども、形に関して言えば、これはこれで正解だ。
ネットで調べてみると、同じような感想を持つ人が一定数存在することを知った。
スタイルや可動や色分けを求めるなら、新しいガンプラを買えばいい。
旧キットの雰囲気を活かしながら、なるべくいじらずに、80年代的な塗りの風合いを楽しむ。
塗装が基本なので、好みによって百人百様の作品が出来上がる。
そんなジャンルがあると知って、なんだか嬉しくなってしまった。
自分だったらどう塗るか?
素組みしたガンキャノンを目の前にして、絵描きの眼が自然に起動してくる。
(つづく)