この一年ほど、旧キットと呼ばれる昔のキャラクターモデルを作っている。
モナカの皮のように、外形だけを前後または左右の唐竹割りで造形してあることから「モナカキット」とも呼ばれる。
今のガンプラは広い可動範囲を確保するために、外形だけでなく内部にも可動軸の構造がけっこう詰まっている。
旧キットは今のプラモに比べるとかなり割安だが、ちゃんと作ろうとすると道具をそろえなければならないし、時間も手間もかかる。
今のプラモのようにスナップフィットで合せ目も目立たないというわけにはいかない。
接着剤を使って注意深く溶着しなければならず、接着面は丁寧に磨き上げて目立たないようにしなければならない。
今のプラモのように組むだけでほぼ色分けされているというわけにはいかず、かなり細かく自分で塗り分けなくてはならない。
可動範囲は極めて狭く、今風の「小顔で細身」なスタイルとはかけ離れて、がっちりもっさりしている。
それでも根強い人気があって、今でも生産され続け、売れ続けている。
旧キットには旧キットなりの楽しみがあって、私も最近目覚めてしまったところだ。
子供の頃大好きだったガンプラの旧キットが今でも再販され、昔と同じ定価で入手できるのは、考えてみればずいぶん贅沢で幸せなことだ。
子供の頃ハマった玩具が、数十年たっても現役で販売されているというケースは、他にはなかなかないだろう。
たとえば絵本なら、昔読んだ有名作品を再読するのに不自由はないだろうけれども、時代と共に消費されて終わるサブカルチャーの玩具の類ではそうはいかない。
大人になってからノスタルジーで子供時代の玩具を求めようとすると、普通は法外なプレミアが付いたりするものだ。
80年代初頭のガンプラブームがビッグバンとなって、キャラクターモデルという市場が形成され、少しずつ形を変えながら今に続いていることが、旧キット趣味を下支えしてくれていることに感謝しなければならない。
仮面ライダーやウルトラマン、スーパー戦隊も、今でも新作が作られているからこそ、旧作の関連商品や書籍がさほどの困難なく入手できるのだ。
しかし、ガンダムから始まったリアルロボット・アニメ全てが、こうした「恵まれた」状況にあるわけではない。
第一作から継続して新作が作られ続けているのはガンダム以外では「超時空要塞マクロス」くらいで、シリーズが続いていない作品の旧キットは、やはり入手困難だ。
それでも「ガンダム」を擁するバンダイが扱っていた他番組の旧キットなら、まだ待っていれば再販の機会が見込める。
ところが「ガンダム以外、バンダイ以外」の作品になると、基本的には発売されていた当時のプラモの現物を探すしかない。
80年代旧キットは「ガンダム以外、バンダイ以外」のものでも大量に生産されていたので、まだ「法外」というほどのプレミアはついていないが、いずれ払底していくだろう。
ガンプラにしても、金型は徐々に消耗していくので、未来永劫旧キットの供給が続くわけではない。
この娑婆世界では、なんでも諸行無常、一期一会だ。
プラモ屋の店先での出会いを大切に、買ったプラモはじっくり丁寧に完成させていきたい。

2016年12月11日
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