blogtitle001.jpg

2017年05月05日

広げた風呂敷の畳み方3 マンガ「無限の住人」のこと

 ああ、そう言えばこのGWから、実写版「無限の住人」の劇場公開が始まっているのだなあと思い出す。
 キムタク本人が珍しく必死で宣伝中とか。
 原作のマンガ版は以前読み耽ったことがあるので、実写版も興味はあった。
 事前情報の範囲では、つまらなくはなさそうだけど、実際観に行くには「もう一押し」欲しい。
 どうせキムタクが出るのなら、主役の万次じゃなくて、狂気の殺し屋「尸良(しら)」を熱演して役者開眼!!! とかだったら絶対観に行くのだけれど(笑)
 しばらくは私が信頼する目利きの皆さんのレビュー待ち。

 今回は映画公開に便乗して原作についてである。
 沙村広明の原作マンガは93年から月刊アフタヌーン誌で連載され、「これ本当に完結するのか?」と長らくファンを悶えさせる長期連載人気作の一つになっていたが、2012年無事完結。
 私は2000年頃から気になりながらも「これは溜めておいて完結近くになってから一気に読むべし!」という勘が働いて、あえて黙殺してきた。
 2009年頃「そろそろか?」と読み始め、一気にハマって繰り返し再読、妄想交じりの深読みをしながら完結まで追いかけた。

 同時期に同様のハマり方をした「GANTZ」「シグルイ」とともに、完結までの数年間をたっぷり味わいつくした。
 同時期に同様のハマり方と言えばもう一作、「ベルセルク」もあるのだが、こちらはいまだ終りの気配が見えない。
 マンガ「GANTZ」については、これまでにも何度か語ってきた。

 広げた風呂敷の畳み方1
 広げた風呂敷の畳み方2


●「無限の住人」沙村広明(アフタヌーンKC)
 少々注意すべきは、このマンガ「時代劇」ではない。
 江戸の風景に仮託した「バイオレンスファンタジー」に分類するのが妥当なので、年長の「時代劇ファン」が読むと面食らうかもしれない。
 リアルな描写に頼れない分、筋立てやバトルの「質」が問われるのであり、この作品はそこが面白いのである。

 読者の期待が高まり切った長期連載人気作は、終わり方のハードルもどんどん高くなっていく。
 思い入れの強いファンを多数抱えれば抱えるほど正解はなくなり、どのように終わっても文句はでる。
 それは、ヒットしたことで「隅々まで語りつくせる場」を得たことの代償とも言える。
 まずそこまでたどり着いたこと自体が凄いし、多大な重圧の中、完結させられたのならなお凄いと素直に思う。
 だから私は好きな作者、好きな作品については、基本的に作者の描いたラストをそのまま味わうこと、肯定することを前提に読む。
 以前「GANTZ」について語った時にも、そのような読み方を提示したつもりだ。
 私が「無限の住人」で最も興味深く味わったのは、「当初の筋書と、勝手に動き始めたキャラの関係」だった。
 マンガの長期連載作品において、作者も読者も度々体験し、最も面白く感じるのは、「キャラが勝手に動き出す」という現象ではないだろうか。
 日本の雑誌連載マンガの醍醐味はそこにあり、その現象を起こしやすくするためのノウハウこそが、作者や編集者の手腕と言っても良い。
 当初はさほど重要ではなかった脇役が、暴走によって作中で重みを増すことはよくあるし、あらかじめ「枠」を嵌められがちな主役級を、存在感で食ってしまうことすらある。
 本作において、そのような「予想外の成長」を遂げた代表格が、先にも名を出した殺し屋「尸良(しら)」だと思う。
 この男、まさに最悪のゲス野郎である。
 登場した最初の時点から、嗜虐趣味で「仕事」以外で女子供まで殺しまくるサイコだった。
 それが、主人公万次に右手首を切り落とされると、残った右腕の肉を自らそぎ落とし、骨を武器に仕立て上げて復活する。
 苦痛で白髪に変わり、狂気と残虐性はアップ、おそらくこのあたりから作者の想定外にはみ出し始めていたのではないかと思う。
 さらに別の登場人物に残った左腕を切られ、滝つぼに叩き落される。
 落下の衝撃で左目を失明し、痛覚も失うのだが、それでも復活。
 その後、あるきっかけで不死身の主人公万次の左腕を得て、自身も不死を獲得する。
 キャラクターの存在感、生命力にじわじわと引きずられ、作者にも制御不能になりつつある過程が非常にスリリングだ。
 尸良は元々、「万次とヒロインVS天津影久率いる逸刀流」という、ストーリーの本筋にからむキャラクターではない。
 だから最終話に向けたクライマックスへの展開以前に、やや離された位置で決着が付けられた。
 作者が途中から尸良を隔離したのは賢明な判断だったと思うし、「本筋のクライマックス」は、それはそれとしてよく盛り上げ、綺麗に終わらせたと思う。
 しかし、私が作品鑑賞で重視する「感情のピーク」という点では、やはり「尸良の悲惨な野垂れ死に」のシーンこそ、強く印象に残ってしまう。
 長期連載ではこのような「想定外」は往々にして起こるもので、それも含めて、やはり「無限の住人」は名作だったと思うし、作者はよくぞ描き切ったと思うのだ。

 本作「無限の住人」は、今公開中の実写版以外にも、アニメ版等の派生作品がある。
 その中でも私が一番好きなのが、和製ハードロックバンド・人間椅子のイメージアルバムである。


●「無限の住人」人間椅子
 人気漫画のイメージアルバムでありながら、同時に人間椅子のオリジナルアルバムでもある極上の一枚。
 実写化やアニメ化の際には、もうごちゃごちゃ言わんと収録曲の「刀と鞘」か「辻斬り小唄無宿編」をオープニングに、「無限の住人」をエンディング主題歌にすれば良いと昔から思っていた。
 マンガのファンに一回でも聴いてもらえれば、そのクオリティは理解してもらえると思うのだが、ビジネス上の理由からか、現在までに一度も実現していない(悲)
 とにかく動画サイトででもどこでも、タイトル曲「無限の住人」だけは聴いた方が良い。
 ハードでアコースティックでプログレでしかも「和」の世界と言う、人間椅子にしか不可能な離れ業である。
 ジャケットも手掛けたマンガ家・沙村広明は、元々人間椅子のファンだったそうなので、ここまでの仕上がりには感涙したのではないかと思う。
 この機会に、原作ファンは必聴!
(今現在amazonでは高値がついているが、再発もあるかもしれない)
posted by 九郎 at 13:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 神仏絵図覚書 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


この記事へのトラックバック