定価は700円か800円で、当時の小学生にとっては少々値が張ったが、とくにお気に入りのMSを1/100で作るというのが定番だった。
クリスマスやお年玉、誕生日などに手に入れる「イベントプラモ」という感じだったと記憶している。
私はその頃、1/144で種類を集めて並べる方にハマっていたので、このスケールで作ったのは主役機のガンダムだけだったはずだ。
当時の1/100スケールのガンプラで特筆すべきは、「成型色だけでけっこう色分けできている」ということだ。
低価格の1/144は一色成型がほとんどだったが、1/100では三色くらい使用されているものが多く、とくに色分けのシンプルなジオンのMSは、組んだだけでけっこう色分けが再現されていた。
可動や付属の武器も豪華で、小学生にとっては少々お高めでも、作ってみると満足感が大きかった。
塗らなければならない箇所が少ないことを考えると、コスパは高かったのだ。
今考えると700円か800円という価格は、内容に比してびっくりするほど安い。
現行のキットで同じスケールのものを作ろうとするとMG(マスターグレード)という上位モデルになるので、まず軽く2000円超え、5000円以上のものも数多い。
その分、可動・スタイル・色分け共にハイレベルで、内部構造まで再現されていたりするのだが、昔のいわゆる「プラモ」とは別物の感が強い。
かつてのガンプラ少年が、時を経てもう一度プラモ復帰するなら、この1/100のシリーズは本当にお勧めだ。
大人になってみればこの値段は問題にならないし、「あの頃手を出せなかったプラモはこんなのだったのか!」という感動が味わえると思う。
以下に各キットを紹介してみよう。
【連邦MS】
●1/100ガンダム
記念すべき1/100スケール第一作。
ガンプラ第一作の1/144ガンダムとほぼ同時発売だったはずで、小学生の私が最初に作ったガンプラが、確かこの1/100だったはずだ。
ただこのキット、少々問題有りである。
本当の意味での「ガンプラ創成期」なので、まだ「リアル志向」という方向性が確立していなかったらしく、かなりオモチャっぽい構成なのだ。
ガンプラ以前のロボットプラモは「廉価版超合金」という色合いが強かったのだが、この1/100ガンダムも当初はその路線上で開発されたと見受けられる。
コアファイター、Aパーツ、Bパーツの変形合体が再現されており、バネ式で弾が飛び出すロケット砲というアニメに登場しない武器が付属しているのは、まさに「超合金っぽさ」と言える。
変形合体が出来るのは良いけれども股関節と足首は固定で、可動やスタイル、「リアルさ」では1/144より後退している面もあった。
リアルロボットプラモの進化の原点を体感できる「文化遺産」としての価値は高いと思うが、「カッコいい1/100ガンダム旧キット」を求めると、ちょっとキツいかもしれない。
●1/100ガンキャノン
色分けはそこそこながら、形状・可動ともに当時としては素晴らしい秀作キット。
とくに腕関節の構造はよく考えられていて、およそ動きそうもないデザインを上手く可動させていて感心する。
ちゃんと変形可能なコアファイターも収納でき、設定だけで作中で登場しなかったスプレーミサイルランチャーも付属している。
●1/100ジム
色分け、可動ともにそこそこ良好。
ブーム当時はこのジムをベースにガンダムからパーツを移植して「まともなガンダム」を作る定番改造があった。
【ジオンMS】
●1/100旧型ザク
設定は「旧型」だがプラモでは最後発の「最新型」キットなので、可動・色分け共に極めて良好。
劇場版だけに登場した旧型ザク用マシンガン、バズーカ、ヒートホークも付属。
●1/100シャア専用ザク、量産型ザク(箱絵と成型色違いで内容は同じ)
1/144、1/60ザクの発売後、満を持して登場した当時のザクのプラモの「決定版」だった。
可動、色分け、スタイルともに極めて良好な名作キット。
最近のザクのプラモとは違う、柔らかい曲線美が素晴らしい。
マシンガン、バズーカ、ヒートホーク付属。
●1/100グフ
こちらも可動、色分け、スタイル極めて良好な名作キット。
長短のヒートロッド、ヒートサーベル付属。
マンガ「プラモ狂四郎」に登場した「山根のグフ」の印象が強烈で、ヒートロッドの糸ハンダ巻きに子供はみんな憧れた。
●1/100ドム
意外なことに1/100ではガンダムに続く第二作。
最初期のキットなので可動や色分けは物足りないが、「これぞドム!」という迫力満点の形状は、初期名作キットと言えるだろう。
1/144ジオングにこの1/100ドムの足を取りつけて「完成形」にする改造もけっこう流行った。
●1/100ゴッグ
なにげに可動が凄い「かくれ名作」キット。
腕の伸縮や手首の折り畳みで「潜航形態」が再現でき、腰やモノアイまで可動!
ずんぐりした武骨なスタイルは、「今のキットよりアニメに近い」と感じる人も多いだろう。
●1/100シャア専用ズゴック、量産型ズゴック(箱絵と成型色違いで内容は同じ)
こちらもずんぐりした太めのスタイルで、今の目で見ると「ちょっとパンツでかい」感じだが、色分けも可動も良好な秀作キット。
●1/100アッガイ
こちらも当時としては可動が凄く、両腕や爪の伸縮まで再現。
●1/100シャア専用ゲルググ、量産型ゲルググ(箱絵と成型色違いで内容は同じ)
1/144と同じような構成で、可動・色分け・形状にやや難あり。発売自体はこちらの方が早いので、1/100の課題が解決されないまま1/144に引き継がれたというべきか。
腰の回転可動はポーズ付けに効果を発揮している。
●1/100ギャン
1/144では再現されなかったシールド裏や宇宙機雷も付属し、可動や色分けも改善。
【リアルタイプシリーズ】
●1/100リアルタイプ ガンダム
●1/100リアルタイプ ガンキャノン
●1/100リアルタイプ ジム
●1/100リアルタイプ 旧型ザク
●1/100リアルタイプ ザク
●1/100リアルタイプ ドム
●1/100リアルタイプ ゲルググ
上掲の通常版キットの成型色を暗色に代え、マーキング用の水転写デカールを大量に付けたバージョンが「リアルタイプ」としてシリーズ化されたもの。
形状は全く同じだが、キットによっては成型色が増え、色分けが向上したものもある。
定価は据え置きだったのでお買い得感があり、リアルタイプカラーが好みの人はもちろん、通常カラーを作る場合でも全塗装派はデカール目当てにこちらを買っていた。
私がおっさんになってからガンプラ復帰したのも、このシリーズのリアルタイプガンキャノンを手に取ったことがきっかけだった。
ミリタリー趣味の箱絵も素晴らしく、後のMSVシリーズにつながる試みだったのではないだろうか。
そして1/100でも、アニメ未登場のこいつらがキット化!
●1/100アッグ
●1/100アッグガイ
●1/100ゾゴック
こいつらまで出たのに、ガンタンクやジオング、ボール、ゾックは結局1/100では発売されなかった。
おそらく「800円枠」に収まらないことが原因だろう。
ゾックやボールはともかく、ジオングやガンタンクなら、たとえ1000円を超えても、このキワモノMSシリーズより売れたのではないかと思うが、企業判断というものは中々素人には計り知れない。
ともかく、このサイズでこの内容の「ほぼ全MS」が800円以内で発売され、今も入手可能であるということが、往年のガンプラブームの熱狂を今に伝えているのである。
(続く)