2018年03月24日

70年代スーパーロボット・ビッグバン

 アーティストの作品評価において、「広く一般に届いた人気作」と、「ファンの間で愛される最高傑作」の間に、ズレが生じるケースが多々ある。
 永井豪は多くの名作を生み出してきたマンガ家で、後続のサブカルチャーに多大な影響を及ぼしたが、「広く一般に届いた」という意味での代表作は、やはり「マジンガーZ」になるだろう。
 そして「ファンの間で愛される最高傑作」は、間違いなく「デビルマン」だ。

 前者の成立過程については、以下の記事で詳述したことがある。

「スーパーロボット」の誕生

 その他の過去記事からも抜粋・再構成しつつ、紹介してみよう。

 そもそも日本のTVアニメはロボットアニメから始まった。
 言わずと知れた手塚治虫「鉄腕アトム」(1963年〜)である。
 等身大ロボット、巨大ロボットバトル、メディアミックス、キャラクターグッズ展開など、後発のロボットアニメは「アトム」の要素を受け継ぎ、一部抽出したり、新たな要素を次々に添付することで、発展したと言ってよい。
 巨大ロボットバトルの要素を抽出し、「人間が操る」という要素を加えれば「鉄人28号」(63年〜)になり、「兵器としての操縦型巨大ロボット」の流れができた。
 コミュニケーション可能な知能を備えた等身大ロボットの要素は、「人体と機械の融合」という要素を加えた「エイトマン」(63年〜)をはじめ、サイボーグやアンドロイドテーマのマンガやアニメ、特撮作品に継承されて行った。
 アトム以降のロボットアニメを、さらに劇的に進化させた「中興の祖」としては、なんといっても永井豪「マジンガーZ」(1972年〜)が挙げられる。
 先行する「鉄人28号」の操縦型巨大ロボットバトル路線を継承しながら、「マジンガーZ」から独自に創出された要素は非常に多い。
 何よりもまず、実際に人が乗り込む「搭乗型」であることが特筆される。
 これにより、「鉄人」のリモコン操作より主人公との一体感が増し、バトル描写に臨場感が生まれたのだ。
 他の新規アイデアも列挙してみよう。

・人体を約十倍に拡大したスケール感。
・下手すると悪役に見えてしまいそうな、悪魔的でスマートなデザイン。
・新素材や新エネルギー源による高性能化。
・コクピットを兼ねた小型戦闘機との合体。
・飛行ユニットとの合体。
・続編である「グレートマジンガー」まで含めると、主役機の交代劇。
・同じく永井豪率いるダイナミックプロ原作の「ゲッターロボ」まで含めると、複数のチームマシンによる変形合体バリエーション。

 後のロボットアニメにも継承される「ウケる」要素が、これでもかというほど一連のダイナミックプロ原案の作品で創出されているのがわかる。
 他ならぬ「スーパーロボット」という呼称自体が「Z」の主題歌の歌詞の一節で、勇ましく戦闘的なアニメソングの系譜も同主題歌から始まったのだ。

 マジンガーZは玩具にも進化をもたらした。
 ダイカスト素材を使用した頑丈で重量感のある「超合金」と、軽量で比較的大型のソフトビニール製玩具は、以後のスーパーロボットアニメの定番アイテムになり、おもちゃメーカーが作品を提供するビジネスモデルが確立した。
 30分枠の一話完結方式で主役ロボットが活躍するフォーマットは、「ロボットプロレス」「玩具の30分CM」などと言われながらも、多くの優れた作品を生み出した。

 もう一つ確認しておくべきは、これらのダイナミックプロによるスーパーロボット作品は、TVアニメ先行の企画であったことだ。
 こうした構図はほぼ同時期に制作された石森章太郎原作の特撮番組「仮面ライダー」等とも共通している。
 マジンガ―シリーズに関して言えば、同時進行で執筆されたマンガ版よりも、ヨーロッパなど、海外の放映でも絶大な人気を博したTVアニメ版こそが「正伝」だったのではないかと思う。
 永井豪自身によるマンガ版は、厳密には「原作」ではなく、アニメ版と並行したアナザーストーリーであった。
 シンプルな勧善懲悪でスーパーロボットの活躍を描いた良作ではあるものの、必ずしも「全力投球」の作品ではなかった。
 同時期に最大の問題作である「デビルマン」を執筆中で、そちらに主要なエネルギーを傾注しながらの連載だったのだ。

【永井豪マンガ版】

●「マジンガーZ」

 マジンガーシリーズのコミカライズでは、むしろ同じダイナミックプロ内で制作された桜田吾作版が、絵柄の好みは分かれるけれども、骨太なストーリー展開が光る。

【桜田吾作版マジンガーシリーズ】

●「マジンガーZ」
●「グレートマジンガー」
●「UFOロボ グレンダイザー」

 永井豪が原案を担当し、TVアニメにもなった「ゲッターロボ」「ゲッターロボG」も、同じダイナミックプロの石川賢がマンガ版を担当した。
 こちらも手加減抜きのハードな描写で、70年代スーパーロボットマンガの最高峰と言ってよいだろう。



●「ゲッターロボ」
●「ゲッターロボG」

 以後も70年代を通じて、永井豪とダイナミックプロは多くのスーパーロボット作品を生み出し、他の作り手も巻き込んで、サブカルチャーの一大市場を形成していった。
 70年代末の「機動戦士ガンダム」によって、アニメの世界にはもう一段階進化したリアルロボット路線が創出され、やや年長の新たなファン層を開拓した。
 それでも幼年層にも鑑賞しやすいシンプルなスーパーロボット路線への需要は、時代を超えて残った。
 単独テーマのTV番組でなくとも、たとえば特撮ヒーロー番組内の一要素として、スーパーロボットは採用され続けたのだ。

 近年、永井豪自身が過去の有名作の創作秘話を明かすマンガも制作されており、マジンガーZについては、以下に詳述されている。


●「激マン!マジンガーZ編」永井豪とダイナミックプロ(ニチブンコミックス)
 全五巻。
 全てが「史実」というわけではないかもしれないが、マンガとして楽しめる。
 マンガ内マンガとして、マジンガーZを今の作画密度で描き直したものがかなり挿入されている。
 続編にあたる「Z&グレート編」も執筆されており、順次単行本化されている。

 また、執筆年代はかなり前後するが、70年代末に短編で描かれた「異形のマジンガーZ秘史」も存在して、ファンにはこよなく愛されている(笑)
 興味のある人は「思い出のK君」で検索!

 今、試みにamazonで検索してみると、以下のアンソロジーに収録情報があった。
 中身は未確認だが、わりと最近のコンビニ版なので、見かけたらチェックしてみよう。


(続く)
posted by 九郎 at 12:00| Comment(0) | サブカルチャー | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: