歌い手、川口真由美2ndアルバムを聴き込んでいる。
先月発売の一枚だ。
●「人のチカラ 〜沖縄・平和を歌う2」川口真由美
川口真由美さんのことれまでにも何度か記事で紹介してきた。
去年はファーストアルバムのレビューを書いた。
反骨のカーリー 川口真由美さんのこと
私は二年前の反原発デモの時、ステージの後で彼女と少しだけ話したり、歌ったりしてとても楽しかった。
それ以来のファンだ。
今回の2ndも、直球ど真ん中のプロテストソング・アルバムである。
川口さんの歌は全て、デモや抗議行動、座り込みの現場や、暴虐に晒された人々の肉声から生まれる。
そこで弱者側に立ち、ぺしゃんこになりそうな心の「気付け薬」としてうたう歌なので、表現は限りなくストレートに、そしてシンプルになる。
極論上等
理想論上等
暴虐の「現場」で力を持ち得るのは、こうした言葉であり、声であることがよくわかるアルバムだ。
現在の商業音楽の世界では払底してしまったプロテストソングだが、歴史を遡れば、むしろそうした「反骨」こそが大衆芸能の生命線であった。
古くから各地を放浪する芸能者や民間宗教者は、「語り」によって圧政に対する反抗を力付けてきた。
近世ではこうした民間宗教者の「語り」が、一部「大道芸」に姿を変えて、「チョンガレ」「チョボクレ」などと呼ばれながら、滑稽・諧謔と鋭い風刺で庶民の喝采を浴びていた。
時には放浪する大道芸人のネットワークを巧みに利用し、情報伝達やオルグの手段として一揆のエネルギー源に活用した例もあったようだ。
●『「世直し歌」の力―武左衛門一揆と「ちょんがり」』五藤孝人(現代書館)
残念ながら現代の神社仏閣の縁日や、街頭の辻々からは、このような刺激的な音風景は姿を消してしまった。
ただ、今であれば、各地の抗議行動のシュプレヒコールやメガホンアピールの中に、そうした「世直し歌」の系譜が続いていると見ることもできる。
とくに、全国の抗議行動を遍歴しながら、巧みなリズムで盛り上げるパーカッション奏者やラッパーの皆さんに、往時の「道々の者」の姿がダブって見えることがあるのだ。
そして、今回紹介した川口真由美さんのプロテストソングスタイルも、聴く者を限りなく力づける「世直し歌」の系譜に、間違いなく連なるのである。
川口さんは放浪芸スタイルのレパートリーもお持ちのはずなので、次のアルバム制作の機会には、ぜひ選曲して欲しい!
もし可能なら、抗議活動現場の「実況録音盤」を聴いてみたい!
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演歌師
2018年06月08日
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