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2018年12月02日

小田隆「うつくしい美術解剖図」

 しばらくがっちり人体描いてなくて、手が大分忘れてるのに気付いた。
 ハシクレとは言え絵描きなので、一通り人体デッサンの訓練は積んでいるはずなのだが、「忘れる」ということは本当の意味で身にはついていなかったということか(苦笑)
 これからも描いたり造ったりしていくために、ここらで一発、がっちり人体の復習をしたおこうと思い立った。
 上手いデッサンの模写で「型稽古」しようと、書店で良いお手本を物色。
 やっぱりダ・ヴィンチかなと思ってたら、頭のおかしい(最大級の賛辞)本を見つけてしまった!


●小田隆「うつくしい美術解剖図」(玄光社)
 名画や彫刻作品をお題に、骨格や筋肉の解剖図に変換し、あらゆる角度からタッチを活かした鉛筆の線画で紹介している。
 この「線画」という点が極めて重要!
 写真でも3DCGでもなく線画!
 輪郭線で囲むというのは、情報の高度な「編集」作業だ。
 優れた絵描きの手で「編集」された図像を模写することで得られる学習効果は、極めて高い。
 そして何よりこの本が「頭おかしい」(最大級の誉め言葉)点は、天使や人魚、ケルベロスやケンタウロス等の空想生物の骨格や筋肉、古生物の復元作例まで含めて収録されている点だ!
 絵描きだけでなく、造形や生物的メカデザインをやってる人は必見なのである!


 本を入手してから、さっそく模写&書写を開始。
 図だけではなく、文章部分も「写経」するのが私の学習スタイルで、とくに目次の書写は学習見通しを立てるのに有効。
 たまに美術系などの受験相談を受ける機会があるのだが、先行する表現者の模写や文献の筆写を勧めると、最近の子には変な顔をされがちで、まず実行はしてもらえない。
 自分が敬意を払える絵や文を、知的興奮をもって写すのでなければ効果がないので、気乗りしないのを強いては勧めないのだが、「もったいないな」とは思う。
 たとえば数学などで考えると「過去の歴史の蓄積を無視して一から数の仕組みを考える」ことの無謀が分かるはずなのだが……
 ただ、相談される立場とは言え、上から目線で指示するだけでは信頼されないのもまた当然。
 私の師匠がそうであったように、「目の前でやって見せる」プロセスは必要だ。
 そんな時、「俺だってまだまだ、日々精進してるんやで!」という現物、スケッチや模写の束があると、がっちり完成した作品を見せるより、むしろ制作に対する姿勢が伝わるのだ。

 限られた時間の中、学習の最大効果を上げるため、目的から逆算して模写の方法を設定。
・人体の構造を手で覚えなおすため、グリッド線を引いて形状・バランスはなるべく正確に写す。
・小田先生の見事な鉛筆タッチは今回は省略させてもらい、輪郭線を強く出して形状、空間の把握に努める。

 本の第一章から順に手を動かしてると、だいぶ思い出してはくるのだが、骨格部分、とくに肋骨の重なりを描くのに難渋。

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「俺こんなに下手やったかな?」
 と、笑ってまうほど描けない。
 しかし、地道に続けてれば意外と早く慣れてくるものだ。
 スポーツやる人には、ブランクの後の復帰過程を思い浮かべてもらうと、感覚がわかってもらえると思う。
 体幹骨格を正面、背面模写し終えたあたりで、背骨リズムというか肋骨リズムというか、そういうものがつかめてきた気がした。

 著者の小田隆先生のTwitterを拝見していると、よくドローイングや板書の類がアップされているのでとても参考になる。

 続いて頭骨。
 これは手が結構覚えているし、線が少ないのでわりとスムーズに模写が進む。
 頭骨のお勉強していて、自分でよくやっているマッサージポイントのことが少し理解できた。
 弱視児童の頃、確か矯正の先生が教えてくれたのが、眼窩の周囲、こめかみの凹み、そして耳の後ろの乳様突起周辺のマッサージだった。
 寝る前にやると寝つきがよくなり、疲れが取れやすいので、今でも活用している。
 目と首、肩、腰は連動していて、乳様突起は胸鎖乳突筋で首、肩とつながる起点。
 どうりで効くわけだ!

KIMG0987.JPG

 そうこうしているうちに、十一月中に第一章の模写完了。
 今月も引き続き時間を見つけながら、ぼちぼち二章のダヴィデ像の模写に入っていきたいと思います。
posted by 九郎 at 22:12| Comment(0) | 妄想絵画論 | 更新情報をチェックする
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