●「ガンダムデイズ 」小田雅弘(トイズプレス)
読んでいるとあの頃の記憶が次々によみがえってきたので、覚書として書き留めておきたいと思う。
80年代初頭、大学生だった小田雅弘はじめとするモデラー集団「ストリームベース」は、当時のプラモ少年にとって、ガンプラブームを牽引するカリスマ集団だった。
私たち小学生の間でも「ストリームベースの小田さん」と言えば、「世界一ザクを作るのが上手い人」だったのだ。
とくにキットの胴体肩部分を「ハの字」にカットし、下から見上げた形にパースをつける加工法は衝撃で、日本中のガンプラファンが真似したのではないかと思う。
同じ頃の私はと言えば本当に子供だったので、ガンプラ制作と言っても成型色以外をはみ出さずに塗ることで精いっぱい。
ザクの肩のハの字切りは、果たせぬ夢だった。
それからはるかに時は流れ、数年前にガンプラ復帰してから早々にハの字切りリベンジは果たした!

夢を果たしてみれば、土偶だなんだと言われる旧キットの、なんと愛しいことか。
今風のカッコよさとは全然違うけど、意外と大河原設定画に忠実だし、足首無可動でもつま先形状のおかげで「一歩踏み出し」が決まるのだ!

小田さんと言えばなんと言ってもザクなのだが、それに匹敵する衝撃だったのが「HOW TO BUILD GUNDAM2」のジオング。
今回の「ガンダムデイズ」によると、あのダークでメカニックな作例は、実はかなり突貫工事で、天井に張り付けた設定画を就寝前に夜ごと眺めながら制作されたとのこと。
去年私が旧キットのジオング作った時も、やっぱり小田さんの伝説の作例が頭にあった。
技術的に難しいことはできないのでとりあえず素組してみると、形状自体は全然悪くなかった。
今でもジオングの改造素体としては安くて良いものではないかと思う。
せめて塗りは頑張ろうと思い、小田さんのダークな色遣いや、大河原御大のポスターカラーイラストの筆遣いを参考に塗った。
金属シャフトで可動が限られてるけど、見る角度によっては十分カッコよく、自己満足にふけることができた。


本を読んでいてちょっと衝撃だったのが、MSV第一弾の旧キット1/144 06Rのこと。
最初期ガンプラで、子供心に色々不満があった旧キットのノーマルザクに比べ、小田さんの作例を模したと思しき06R は、箱絵も含めて本当にカッコよく見えて熱狂した。
私たちガンプラ少年は、「これ、小田さんのザクや!」と感動したものだったが、ご本人はあのキットも箱絵も不本意で、結局一度も作らなかったそうだ。
小田さんの「ザク愛」を、逆に強く感じるエピソードであった。

MSVシリーズで第二次ガンプラブームになり、小田さんご自身はジオン系にしか関心がなかったようだが、当時のメイン顧客はやはり小学生。
膨大な数の小学生ファンのもたらす売り上げが、年齢層の高いジオン好きのマニア層の趣味を買い支えるという構図が既にあった。
そして当時の私を含む小学生は、なんだかんだ言ってやっぱりガンダムを欲しがった。
そこで「プラモ狂四郎」のパーフェクトガンダムと、小田さん、大河原御大の合作で出来たのが、MSVシリーズの「主役機」フルアーマーガンダムである。

年長ファンのザク愛と年少ファンのガンダム愛、その両輪が生んだあの奇跡については、今年先行して刊行された「MSVジェネレーション」(あさのまさひこ)関連記事で存分に語ったことがある。
分岐点1983 その4
●「MSVジェネレーション ぼくたちのぼくたちによるぼくたちのための『ガンプラ革命』」あさのまさひこ(太田出版)
今年はあれから35年のメモリアル。
当時を振り返る書籍がいくつも刊行される年になった。
●「MSV THE FIRST」 (双葉社MOOK)
83〜84年当時のMSVやMSXにまつわる設定画やパッケージアートを、大きいサイズのカラーでほぼ網羅してある。
印刷物からのスキャンデータらしく、色味の精度はやや低いが、これだけの図版が一冊で揃うのは貴重。
当時の関連年表や、関係者へのインタビューも豊富。
●「GUNDAM CENTURY RENEWAL VERSION―宇宙翔ける戦士達」(樹想社)
ガンダム世界のSF考証の原点となった伝説の特集本。
2000年に一度復刻されるも、長らく古書価格が高騰し、入手困難だった。
しかしつい先ごろ樹想社の通販で、定価の半額の2000円+送料で通販が開始。
何らかの事情あってのことかもしれないが、ここは「買って応援」の場面ではないだろうか。
今年はtwitterで多くの凄腕モデラーの皆さんとも出会い、サブカルチャーについて様々に考えることのできた一年になった。
気付けなかった
早速応援に向かいます!
現在の公式設定とは違いますが、内容は特濃です!