もう二週間ほど前のことになりますが、耳にした時ちょっとした驚きがあり、その後もじわじわ効いてきて、ずっと考え続けているニュースがありました。
即席の袋麺の売り上げが、とくに若年層を中心に右肩下がりで落ち続けているというのです。
折しもNHKの朝ドラではチキンラーメン創成期のストーリーが放映され、盛り上がっているのかと思いきや、のニュースです。
袋麺の売り上げが落ちる一方、同じ即席のカップ麺は堅調とのこと。
考えられる理由は、まあ皆さんも最初に思いつくであろう「袋はめんどくさい」ということでしょう。
人間の数ある感情の中でも「めんどくさい」は極めて強力な感情です。
ほとんど「最強」と言って良い感情で、対抗できるのは「おもしろい」か「愛しい」くらいしか見つからないと言うのが私の持論です。
それも、成育歴の中で「めんどくさい」の侵略を受ける前に、「おもしろい」「愛しい」を原体験しておく必要があります。
先に「めんどくさい」が入ってしまうと、そこから「手間のかかる楽しみ」を上書きするのは至難の業です。
私も90年代の学生時代から劇団員時代にかけて笑ってしまうほど貧乏だった頃、即席麺はよく食ってましたが、あまりに貧乏過ぎてカップ麺はぜいたく品でした。
袋麺の安いやつと比較して、一食三倍くらいしたはずで、今も相場はそんなもんでしょう。
コスパで言えば米最強。
その次が近所のパン屋のサービス品のパンの耳(正方形で、片方から見ると食パンに見える)、最後に五食入りの袋麺という感じでした。
月初めの金のあるうちに米を5キロ確保し、それを食い延ばすために他を挟んでいく感じで、貧乏なりに工夫するのが楽しかったものです。
私の場合は「貧乏」が「めんどくさい」に打ち勝っていたわけです(笑)
今の若い子らの多くもさほど裕福ではないと思いますが、「貧乏なりに楽しみを見つける」のを圧倒するほど「めんどくさい」の侵略が進んでしまっているのかもしれません。
そう言えば最近の若者にとっては、マンガすら「めんどくさい」部類のエンタメになりつつあるという話を聞き、驚愕したことがありました。
マンガで育ち、「マンガばかり読まないでもっと本を読みなさい!」と言われ続けてきた世代の私にとっては非常に分かりにくい感覚だったのです。
しかし自分でもスマホを持つようになって、マンガや小説を読む時間がかなり減ったことに気付くと、「無理もない」と思うようになりました。
スマホを持って、マンガや小説に使う時間が減ったとは言え、私は今でもおもしろい作品を探すことに貪欲ですし、読む時はがっつり読みます。
しかしそれは、スマホ以前に読書体験の膨大な蓄積があったればこそ。
読書の楽しみを知る以前にスマホを持ってしまっていたら、どうなっていたかわかりません。
70年代の幼児であった私は、様々ないわゆる「昔遊び」も現役でしたし、コンピューターゲームはちょうどで初めでしたがまだ全身でハマるような進化は遂げておらず、ガンプラブームは非常に手間と技術を要するホビーでした。
今のように子供でも扱える携帯ゲーム端末でネットにつながる時代に生まれたらと思うと、子供たちの「めんどくさい」感覚を、上から目線で批判するのははばかられます。
食べ物なら袋麺、暇潰しだったらマンガ辺りに、何らかの「分水嶺」があるのかもしれません。
袋麺がめんどくさくなければ、調理に進める。
マンガがめんどくさくなければ、他の書物に手が届く。
文化の最終防衛ラインと言うか、何かそのようなものが決壊しつつあるのを感じます。
袋麺が売れない、マンガが売れないというのは、大袈裟に言うと「めんどくさいハルマゲドン」じゃないかと思うのです。
めんどくさい幻魔大戦、じんわりと進行中です。
2019年02月23日
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