昨年末から川奈まり子の著書を読み続けている。
ジャンルは「実話怪談」で、ごく簡単に言えば「本当にあった怖い話」に分類されるだろう。
そのジャンル自体に強い関心があったわけではないのだが、昨年から始めたTwitterでふと目に留まった著者アカウントを追ううちに、興味をひかれて本を手に取るようになった。
川奈まり子の実話怪談は、以下の三段階から構成される。
・怪異の実体験
・体験者本人の語り
・聴き取った川奈まり子の文章
この三段階の微妙な距離感が、実にスリリングなのだ。
ことさらに恐怖を煽ることのない淡々とした筆致は、「現代の民俗学」のようにも感じられる。
怪異体験と自己同一化の強い、「怖い」語り手と対する時、聴き取りは川奈まり子自身の怪異体験の様相を帯びてくる。
本の要所要所に、著者自身の(現在進行形のものも含めた)体験談が挿入されており、実話怪談の蒐集の体裁を取りながらも、大きな流れとして「川奈まり子の物語」になっているのも凄い。
読み進めるうちに、読者である私の側にも怪異が呼び覚まされてくる。
怪異はある意味「過去の記憶との対面」で、他者の実話語りの中に自分の過去を見るような読書体験になってくる。
ここまでくると「怪異」の浸食は、体験者から川奈まり子を通じ、読者である私自身にまで及ぶのだ。
すっかりハマって二冊三冊と作品を追い、気付いたことをメモ代わりにTwitterで呟いていて、頭の中で次々に触発されてくるものがあった。
当ブログ「縁日草子」の各カテゴリで別々に追い続けてきたテーマを、横断的につないでいける可能性を感じた。
関連して読み返しておきたい本、新しく読みたい本が何冊か出てきた。
良い機会なのでカテゴリ「怪異」を新設、ぼちぼち記事を書いていくことにした。
まずは川奈まり子の作品紹介から始めてみたいと思う。
2019年03月04日
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