2019年03月22日

試作スケッチ「おにのうで」

 先月の「動物のからだ展」で出会った「ライオン前肢乾燥標本」、当面の目標としていた鉛筆スケッチが完成したので、本格的に作品化して行くために仕切り直し。

 会場でこの標本に一目惚れしたのは、お寺に奉納されていれば「鬼の腕」と称されそうな、夢枕獏「キマイラ」に出てくる幻獣の腕のような、禍々しくも威厳ある佇まいからだった。
――これをモデルに「鬼の腕」または「キマイラの腕」が描きたい!
 そんな着想を得たので、ぼちぼち進めていく。

 直接のイメージはライオン前肢と夢枕獏「キマイラ」からなので、まずはイメージをかきたてるため、夢枕獏「キマイラ梵天変」より、該当箇所を写経。

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 作中の描写は重視するが、厳密に「文章通り」は不可能。
 読んでいて「絵の浮かぶ文章」というのはあって、夢枕獏の文章はその典型なのだが、イコール「そのまま絵に描ける」では無いことが多い。
 一旦分解して再構築する必要がある。

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 本描きはM40キャンバスにアクリルを想定していて、その前段階の試作に木炭とMBM紙を使用、後程コンテパステルで軽く着色まで視野にいれて進める。

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 先月の「動物のからだ展」会場で最初に描いた一枚と同様、結果は問わずに勢い重視で、一旦思い付きを出し尽くしてみる。

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 鉛筆と木炭は「黒で明暗をつける」という点では同じだが、感覚は全く別。
 鉛筆は「硬い素材を刃物で刻む」感覚、木炭は「柔らかい素材を盛り削りする」感覚だ。
 中高生ではじめて鉛筆から木炭に持ち変えた時、早めに意識を切り替えられると、対応しやすくなる。
 木炭は「パンで消す」イメージがあると思うが、少々油分が付くので、私は普通の消しゴムメインで、練りゴム併用が好みで、「消す」というより「白で描く」感じ。
 先の彫塑の「盛り削り」の例でたとえるなら、消しゴムの白が「盛り」で、木炭の黒が「削り」に相当する。

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 話しのついでに感覚が似ている手法を簡単にまとめてみると、以下のようになる。
【制作中に推敲しやすい】木炭、油彩、塑像
【あまり推敲しない】鉛筆、水彩、彫刻

 全体から細部へと、徐々にスピードダウンしていき、木炭を紙の表面に馴染ませていく。
 時間的に一回では仕上がらないので、間をあける。

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 直接木炭にさわれない日は、出来ることで自主練。
 イメージの補助に、妖怪ミイラの類いの画像をザッとクロッキー。

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 これも余談になるけれども、各地に残っている妖怪ミイラの類には、それを制作する専門業者のようなものがあったらしく、材料調達を考えるとかなり不気味な雰囲気も漂ってくる。
 妖怪コトリとも関連してくるかもしれない。
 模写だけとはいえ美術解剖学をかじって見ると、生物標本としての価値はほとんど感じられない。
 ただ、これを作る専門業者がいたらしいことの不気味、業の深さは、一度手を通して体感しておく。

 制作再開にあたっては、ざっとはたいて一度木炭を落とす。
 ここまでやったことの痕跡は、はたいても残っているので、無駄にはならない。
 違和感を残したまま進めず、何度もやり直せるのが木炭。
 プロポーションの決定までは試行錯誤を繰り返す。

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 制作中は日々の生活の中でも注意すべきことが出てくる。
 洗い物、入浴後の指先ケアは必須になる。
 私にとっての木炭は「主に素手で描き、木炭も使う」という感覚なので、指先ガサガサでは思うように描けないのだ。
 鉛筆画の場合は「ほとんど鉛筆、あとは補助」という感じなので、さほど指先ケアに気を使う必要はない。

 モノクロは前回の鉛筆で堪能したので、今回はコンテパステルで少し色も試してみる。
 着色前に一度軽めにフィキサチフスプレーで木炭を定着。
 木炭の段階で骨格は既に固まっているので、色はアドリブを楽しみながら、じっくり進めていくのが良い。

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 適当に休憩や軽めの定着をはさみながら、じわじわと。

 うむ!
 この絵はここで筆置き!

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posted by 九郎 at 21:21| Comment(0) | 妄想絵画論 | 更新情報をチェックする
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