先ごろ、このカテゴリでも紹介してきた実話怪談の書き手・川奈まり子さんが、Twitterで呟いておられたことが気になった。
怪異体験の聴き取り対象の年齢層が、「ロスジェネ」と呼ばれている層とかなり重なっているのではないかという主旨の呟きである。
ロスジェネとは、いわゆるバブル世代の直後、就職氷河期を経験した、年齢で言うと三十代後半から四十代後半にかけての年齢層を指す。
別の分類では「団塊ジュニア」とも重なっており、同年代の人口が多いので受験や就職で過酷な競争にさらされたにも関わらず、政策的には放置されてきた世代でもある。
実は私も、この世代に引っかかっている(苦笑)
現在の少子化の流れは、この世代が家庭を持ち、子育てに入ることが困難だったために事態が悪化したともいえる。
民主党政権で実施された「子ども手当」は、極めて不十分ながらも、団塊ジュニアに現ナマが撒かれた希少な政策であった。
年代別の人口を考えると、このタイミングが少子化に抗するラストチャンスであったかもしれないのだが、政権交代によりあっさり撤回され、少子化対策は既に手遅れになった。
本来もっともっと手厚く支援されるべきであった団塊ジュニアにろくな補給を与えず、無意味な精神論で玉砕を強いてロスジェネ化させたこの国は、旧日本軍の愚策「インパール作戦」から何一つ変わっていないようだ。
日常生活や体調の不安定、強いストレスは、おそらく怪異と親和性が高い。
これまでの成育歴をふり返ると、私自身ははっきりと「怪異」の領域まで入ってしまうことは少なかったのだが、それに近い「夢がやや現実に浸入してくる」体験はあった。
いわゆる「金縛り」や「幽体離脱」などである。
金縛りと幽体離脱
幼児期、思春期、社会に出る前後、あとは「中年の危機」の年代に、それは出やすかったと記憶している。
ロスジェネが今現在、怪異の体験を語るケースが多いというのは、「さもありなん」と感じた。
四十路を越えると、それまでの自分をあれこれ振り返ることも多いだろう。
今現在だけでなく「過去がぶり返して現在の体験化する」というのもありそうだ。
怪異の効用というか、怪異を心と体の治癒の契機とするノウハウというものもあるはずで、昔はそれを宗教や民俗が担っていたのだろう。
先に挙げたような怪異に会いやすいそれぞれの年代で、節目として民俗行事は用意されている。
怪異現象には一応「科学的説明」がつくものも多く、私がよく体験してきた金縛りや幽体離脱はその典型だ。
しかしながら「科学的な説明」の欠点は、実際体験している最中の恐怖感に対し、屁のツッパリにもならないところだ(笑)
不動真言なんかの方が「現場」では有効だったりすることを、私自身これまで度々実感してきた。
経済的にも人との縁からも疎外されがちだったロスジェネは、伝統的な宗教や民俗からも切り離された年代である。
心身の不安定から怪異に遭遇してしまった際のセーフティーネットが何もない、いわば「怪異難民」になってしまっているのかもしれない。
そしてそこに口を開けて待っているのがスピリチュアル系カルトだったりする。
そう言えばロスジェネは子供時代から青年期にかけて、メディアがオカルト漬けだった世代でもあり、オウム世代とも一部重なっている。
このカテゴリ「怪異」で考えるべきことが、少しずつ焦点を結んできたようだ。
2019年03月31日
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