2021年09月12日

ズッコケ宇宙はいまも

 もう二か月前のことになってしまったが、7月22日、児童文学作家・那須正幹(なす・まさもと)さんが79歳でお亡くなりになった。
 78年刊行の「それいけズッコケ三人組」が大人気となり、全50冊の長期シリーズを完結させたことで知られている。
 私にとっての那須先生は、多少のご縁があり、ある意味「恩人」であったので、覚書にしておきたいと思う。

 70年代初頭生まれの私は、世代的には「ズッコケシリーズ」直撃でもおかしく無いのだが、子供の頃はたまたま読んでいなかった。
 90年代の学生時代、家庭教師先の子供の部屋で手に取って、あまりの面白さに大人になってからハマり、何冊か興味深く読んだのを覚えている。
 2000年代後半に子供が生まれてから、絵本や児童文学を再び手に取るようになり、「そう言えばこのシリーズは面白かったはず」と再読をはじめ、それから一年ほどかけてシリーズ50冊完読。
 まるであらゆるジャンルの文学とパラレルに「ズッコケ宇宙」が存在するかのような、広大で豊饒な世界観に耽溺する、素晴らしい時間を持てたのだった。
 最終巻では三人組が永久回帰する時間の夢から覚め、通常の時間の流れに戻って小学校を卒業していく描写もあり、涙と感動。

 それから40代になり、ちょうど刊行されていた後日譚のシリーズ「ズッコケ中年三人組」を追うことになった。
 通常の時間軸の中で人生を送り、私と同じく40代に差し掛かって疲れ気味だった三人組が、あの「魔法の時間」の住人たちと再会し、少しだけ生きる力を取り戻し、現実と折り合いをつけていく様に、静かな共感を覚えた。
 私自身も人並みに心身の衰えを感じ、時に不調に陥り、「中年の危機」的なものも経験していた折、「ズッコケ中年三人組」シリーズとシンクロするように数年かけて付き合えたことは、救いになった。

 もう一つ、書いておかなければならない。
 ちょうど同じ頃、とある地方の児童文学作品公募で、選者の那須先生に拙作を推していただき、受賞に至ったことがあったのだ。
 若い頃から色々創作を続けていたものの、世間的な評価やプライズとは縁遠かった私にとって、それは本当に嬉しい体験だった。
 あの時の自己肯定感の後押しが無ければ、その後の子育ても仕事もどうなっていたか、ちょっと怖い気がするのだ。
 那須先生とは、ついに結局直接お会いする機会はなかったのだけれども、紛れもなく「恩人」だったと思う。

 ズッコケシリーズ、中年ズッコケシリーズを追うことで、少年時代の友達が俺の心の中によみがえってきて、もう一度一緒に遊んでみたくなり、四十過ぎてからまた児童文学の創作を再開したのはそのおかげだった。
 そうして描いてみた作品のいくつかは、以下のブログで公開している。

 放課後達人倶楽部

 那須先生のズッコケ以外の作品は、実はまだあまり読めていない。
 反戦や反核テーマの作品も、遅ればせながら読んでいきたいと思う。
posted by 九郎 at 22:38| Comment(0) | 児童文学 | 更新情報をチェックする
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