天理教を知るには、何よりもまず教祖・中山みきを知ることから始めるのが良い。「おやさま」と親しく呼ばれる教祖の人生は、そのまま万人に向けての教えの雛型として読み替えられている。
私は教団としての天理教とは無関係で、決して宣伝をするつもりは無い。(これは当ブログで紹介する全ての宗教についても言える)
しかし「おやさま」中山みきの苦難と犠牲に満ちた人生については素直に敬意を払えるし、「教え」と「教団」の間に存在する抜き差しならぬ関係について考えるための、多くのことを学んだ。
以下に教祖・中山みきを知るための本を紹介してみよう。
●「劇画 教租(おやさま)物語」作;服部武四郎 画;中城健雄(天理教道友社)
教祖の全生涯と、その後の天理教の歴史を劇画で詳述した全一冊愛蔵版。
内容的には教団の公式見解に沿ったやや大人しいものだが、何よりも作画の質が高い。この手の「教団が刊行した漫画教祖伝」の中では出色の仕上がりで、精緻な絵柄は読んでいてぐいぐいと引き込まれる。ヒット作もある人気劇画家が、信仰する宗教に対して真っ向から取り組んだことが、良い結果を生んでいる。
漫画の中山みき伝については、以前竹熊健太郎氏のブログで、劇画家・平田弘史氏が製作開始したものの、連載打ち切りとなったエピソードが紹介されていた。
私は現行の「教祖物語」もそれはそれで好きなのだが、平田先生の作品が中断されたことは返す返すも残念だったと思うのである……
●「天理の霊能者―中山みきと神人群像」豊嶋泰国(インフォメーション出版局)
中山みきを中心に、現在の教団内部からは出てこない情報が満載された一冊。著者は学研の「宗教の本」シリーズにも執筆しており、本書もタイトルはセンセーショナルだが内容は至って真面目な資料集だ。
天理教では現在教祖の図像の類は公開していないのだが、この本には過去に制作された様々な教祖図像が収録されている。それによると、中山みきの実像はすらりと背が高く、やや面長で気品のあるおばあさんだったらしい。
前出「劇画おやさま物語」作中では小柄で丸顔のイメージだったので、意外な感じがした。
●「教祖様―ふしぎな婦の一生」芹沢光治良(善本社)
こちらは教団の外から見た教祖伝。
著者は「神の微笑」「人間の運命」などを発表した著名作家。中山みきの全生涯を、ときにキリストと比較しながら詳細にわたって描き出す労作で、教団内外を問わず広く読み継がれている。
中山みきの周囲の人々が、彼ら彼女らの敬愛する「おやさま」を大切に思うが故に、全くの善意から教祖の意思を埋没させていく過程が、これでもかこれでもかと描写される。
教えを変質させるのは誰か?
それは破壊的な意思を持った国家権力ではなく、教祖の身の上を案じ、懸命に守ろうとする素朴で善良な身内達であったのだ。
一人静かに「信仰」と言うものについて思索したいときに、手元にあってほしい一冊。

2007年07月23日
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