私自身が素人なので、「入口」になれる本を中心に読んでおり、中高生向けのブックガイドにもなっているはずだ。
とくに高校生は、将来志望する分野についてどんどん読書を進めてほしい。
分野によっては情報収集だけでなく、他のスキルも必要になる場合がある。
芸大や美大以外の受験でも、志望する学部・学科によっては美術実技が課されるのだ。
例としては建築、工業デザイン、映像、教育分野など。
鉛筆や水彩絵の具などの基本的な画材を使用し、与えられたテーマから自由に構成、モデル無しの想像で描くケースが多い。
併せて小論文や面接が課される場合もある。
画塾で内容的にぴったりの講座が開設されるほどの需要はなく、学校で指導できる教員も少ない。
過去問を開いてみても、受験生は何をどう対策すればいいのか途方に暮れがちだ。
とくに地方在住だと、まず独習の手がかりがない。
こうした入試課題は、美大芸大的な写実デッサン力というより、入学後に専門分野を学べるだけの「素養」の有無を問われている。
・志望する分野について自主的に情報収集しているか?
(ネット検索、読書、資料集め、メモ、スケッチ等)
・普段から身の回りのものや風景をよく観察し、それらしくスケッチできるか?
・何か話題をふられた時、自分の興味に引きつけて、絵や言葉でリアクションできるか?
これらの素養の有無を確認する実技課題であって、過去問の細かな文言は枝葉末節にすぎない。
どんな分野を志望するのであっても、まずは情報収集、そして読書。
今回は建築分野について、とっかかりになりそうな本や、自分に合った本の探し方を紹介してみよう。
工学部建築学科等で、出されたお題に即して想像でスケッチを描くことを求められるのも、問われているのは「素養」だ。
何のインプットも無しに描けるわけが無いし、スケッチだけでなく面接や小論文が課される場合もある。
好きな建築家とか好きな建築様式を語れるくらいに情報蒐集し、過去問の文言にこだわらず実物や写真をお手本にしたスケッチの蓄積が必要だ。
今はネット検索で得られる情報も多いが、やはりしっかり書籍になっている情報や画像を先に学んでおき、ネットは補助にするのがセオリーだ。

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●『代表作でわかる世界の建築史入門』(世界文化社)
世界史の流れに沿って、主要な建造物についてカラー図版で紹介。
社会科の副読本としても良いし、現代文の文明批評への理解も深まるだろう。
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●『図説 建築の歴史 西洋・日本・近代』(学芸出版社)
上掲書同様、歴史上の代表的な建築物について図と解説で紹介してあるのだが、こちらは日本の建築物も扱ってある。
また、モノクロのペン画におこしてあるのが素晴らしく良く、自分で描いてみる時の参考になるだろう。
資料を元にスケッチを始めてみると、色々うまくいかないことが出てくるだろう。
何枚か描いて苦戦してみてからパースの本を開いてみると、眼から鱗がおちる経験になるはずだ。
試験で求められているのは厳密な透視図ではなくあくまでラフスケッチなので、あまり難しく考えず、自分の絵柄の中で導入できる技は導入すれば良いだろう。
幅広い知識とともに、「自分が好きな建築家」もぜひ語れるようになってほしい。
個人的な推しは、「近代建築の巨匠」フランク・ロイド・ライトだ。
何よりパッと見で凄さ、面白さが分かりやすいし、完成写真や図面、ライト自身の完成予想図もたくさん出回っていて、入手可能な資料が多い。
ライトについて深堀りすると、伝統建築と近代建築の違い、西欧建築と日本建築の対比、造園や都市計画まで、幅広いテーマが含まれてくるので、学びに広がりが生まれる。
ライト自身の著書も文庫本で出ているので手にとりやすい。

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●『自然の家』フランク・ロイド・ライト(ちくま学芸文庫)
たまに雑誌で特集されることもある。

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●Casa BRUTUS 2023年 11月号 [フランク・ロイド・ライトと日本]
自分の好きな分野の読書を進めることは、そこから世界を理解することにつながるのだ。