別に本など読まなくても良いといえば良いのだが、できることなら中学生の頃の読書体験はそれなりにあってほしい。
そう言えば小学生の頃「本当にあった怖い話」の類の本が好きでよく読んでいたなと思い出し、そして私自身がこの七年ほど、川奈まり子の実話怪談にハマっていることに思い至った。
興味の範囲が重なりそうなので、手持ちの川奈作品からいくつかを勧めてみた。
中学生だった娘がまださほどこだわりなく父親と話してくれる幸運に感謝しつつ、手始めに『少女奇譚』、『少年奇譚』の中の冒険譚的なエピソードを拾って読んでみた。
調子が出てきたので、続いて『一〇八怪談』のシリーズ。
川奈作品はわりに音読向きで、とくに『一〇八怪談』は見開き二ページ程度の短い作品の連続なので、日々15〜20分の時間をとって音読しやすい。
内容も現代の実話怪談を入り口に、その土地の歴史や信仰にまで遡るエピソードもあり、淡々と音読を続けているうちに視野が広がってくる。
私が川奈作品を読み始めた頃、初見から「民俗学っぽいな」という印象を持った。
後に『迷家奇譚』を手にとって、なぜそうしたアプローチになっているのか納得したものだった。
ひとしきり川奈作品を読んだ後、娘との読書は小泉八雲や柳田国男、宮沢賢治の童話、芥川龍之介の古典再話にも、自然に進んでいくことができた。
川奈作品は、日本文学の流れとしっかり地続きなのだ。
そして今年の夏、そんな「地続き」ぶりがよくわかるアンソロジーが刊行された。
●『雪の怪談・冬の怪』(河出文庫)
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日本の実話怪談の流れも俯瞰できる一冊。
収録作家を目次順に紹介すると、小泉八雲、鈴木牧之、志賀直哉、岡本綺堂、加藤博二、柳田国男、泉鏡花、辻まこと、下村千秋、寺田冬彦、国枝史郎、芥川龍之介、田中貢太郎、片山英一、上田哲農、上原義広、トリが川奈まり子。
いつか読みたいと思いながらまだ手を出せていなかった著名作家の作品が並んでおり、これでまた読書の幅が広がりそうだ。
中学生の頃の娘と、毎日少しずつでも音読の時間が持てたことは、本当に良かったと思っている。
そもそもは七年ほど前、たまたま旧Twitterで御本人と私立中高一貫男子校について他愛のない雑談をさせていただいたことをきっかけに、私の川奈まり子読書は始まったと記憶している。
ちょっとした偶然から、多くの気付きをもらったこの七年である。
