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2025年12月12日

建築入門から開ける近未来の眺望

 建築分野については以前一度記事にしたことがある。
建築から見る世界史
 さらにごく最近、素晴らしい建築入門に出会ってしまったのでご紹介。

●『これからの建築入門 〈自分でつくる〉を取り戻せ』松村秀一(岩波ジュニア新書)
https://amzn.to/4iU3Sjl

 今年十月の新刊だが、今後は中高生から読める平易な建築入門の定番になるだろう。
 建築については、現代の「カッコイイ」建築から興味を持ったり、歴史的建造物から入っていくのがよくあるパターンだ。
 本書では第1章、第2章で「そもそも建築とは何か?」「歴史的にはどんな人々が建築を担ってきたか?」「現在の建築家とは何か?」「建築に関わる立場にはどんなものがあるか?」という根幹部分から語りおこされる。

 第3章は「建築物はいつまでもつか?」「長くもてば良いのか?」についての考察。
 近代以降の鉄筋コンクリート建築物の実際の耐用年数について触れられ、(あくまで設計や施工に問題が無く、適切にメンテナンスされた場合のことだろうけれども)「想定していた50年程度より、かなりもつ」という結論に至る。
 今後予想される少子高齢化社会においては、筆者の指摘するように「既存の箱を長期的にどう再利用していくか」が建築の大きなテーマになってくるのは間違いない。

 第4章は建築資材の変遷がテーマ。
 伝統的な地産地消の自然素材から、戦後建築の工業製品化、林業政策の失敗、将来的には解体現場からの資材調達など、これからの建築を考える時、とりわけ重要と思われる話題が取り上げられる。

 第5章は実際に施工を行う「職人」について。
 こちらも少子高齢化で減り続ける「職人」を、今後どう確保していくかというテーマ。
 人員不足を補う作業の機械化について、「機械優先で人間に下働きをさせてはならない」という指摘は、進行しつつあるAIによる仕事の代替にも通じる。
 女性参入によるジェンダーフリー、必ずしもプロではないDIY勢による「コミュニティ大工」など、必ずしも暗い見通しだけではない「職人」の未来像が語られている。

 第6章は、建築を志す若者に向けて。
 建築を生業とするための複数ルート、大学で「建築学」を学ぶことの意味、「建てる」一辺倒ではないこれからの建築に対する考え方が提示される。
 この最終章までに仕事の具体像がかなり提示してあるので、本書を読んできた建築に関心を持つ若い人は「自分ならどこへ進みたいか」という見通しが立てやすくなっているだろう。

 メインテーマの建築の過去、現在を通して社会の変遷を考察し、近未来の世の中と仕事の在り方を見晴らす好著。
 建築を志望する中高生はもちろん、直接建築志望でなくとも社会の在り方の近未来に興味がある若者に広くお勧めできるし、もちろん大人が開いても十分に読みごたえがある。
 ジュニア新書の良さ満載の一冊だった。
posted by 九郎 at 21:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 教養文庫 | 更新情報をチェックする
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