この夏、私が個人的に思い入れのある幾人かの方々が、お亡くなりになった。
2007年7月28日には「プロレスの神様」カール・ゴッチさんが、82歳で昇天されている。
以前、月と桜に誘われてでも書いたことがあるが、私は一時期熱狂的なプロレスファンだった。正確に言うと、会場に足を運ぶようなコアなプロレスファンではなく、かつてターザン山本編集長率いる雑誌「週刊プロレス」が主導していた「活字プロレス」の愛読者であった。
90年代に全盛期を迎えていた「活字プロレス」は、プロレスの中から格闘技路線を生み出す流れを作り、「格闘プロレス」UWF、修斗、シュートボクシング、K−1等の現在の格闘技団体につながるムーブメントの源流になっている。
プロレスの中から格闘技志向が生まれたそもそもの源流が、カール・ゴッチの伝える関節技を主体とした「キャッチレスリング」にあった。派手さのない地味な関節の極め合いスタイルだったが、ショーではない本物の強さに憧れる少数のレスラー達に伝授され、受け継がれていった。
その流れはとくに日本で花開き、佐山サトル、前田日明、藤原喜明などが中心となってUWF運動が展開されていく。その流れの末に、現在日本の「総合格闘技」と呼ばれるジャンルが成立している。
元々はフロリダのカール・ゴッチ邸でごく少数のレスラーに共有されていた技術・思想が、世界の様々な格闘技を巻き込んで、新たなジャンルが創世されていく。ちょうど90年代の「活字プロレス」はその過程と同期し、言葉によって加速させて行く役割を果たしていた。
当時の私は「週刊プロレス」や「格闘技通信」の発売日を待ちかねて、明け方のコンビニに走って新しい世界が生み出されていく様を追い続けていた。
辺境でひっそり伝えられていた物語が、何かのきっかけで世界規模に拡大していく奇跡的な流れ。
それは宗教の世界でまれに起こる現象にもよく似て見えた。
カール・ゴッチその人については、以下の漫画をお勧めする。
●「プロレススーパースター列伝」梶原一騎/原田久仁信
70〜80年代のプロレスラー達の生い立ちや超人的エピソードを、当時リング上で設定されていた物語のままに記録した列伝。
史実ではないが、レスラー達のリング上での真実がここにある。神話に描かれる神々の闘いにも似ている。
第11巻には「プロレスの神様」カール・ゴッチも登場。誇り高い不遇の最強レスラーとして、アントニオ猪木率いる新日本プロレスの成立過程に関わる様子が描かれる。
2007年08月27日
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