いつもの帰り道。
ふと夜空を見上げた時、異様な感覚に襲われた。
感覚が先にやってきて、理由は後からじわじわ分かってきた。
ここ数日、順調に満ちてきていた月が、急に欠けていたのだ。
確か今夜は満月だったはず……
あ、そうか!
月蝕か!
論理的に納得して一安心するまでに、数分かかってしまった。
科学知識のある現代人としての私に戻ってみれば、子供の頃から何度か体験済みの天体ショーだ。
帰宅して確認してみると、やはり皆既月蝕があったそうで、私が見たのは最後の数分間だったらしい。
全部を観察できなかったのは残念だったが、予備知識無く眺めた夜空から受けた異様なショックは、得がたい経験だった。
太古の人々が月蝕から感じたであろう衝撃の、ごく一部でも追体験できたかもしれない。
数分間、憑かれたように月蝕を眺めた後には、何事もなかったかのような満月が、空にぽっかり浮かんでいた。
満月の周囲には雲がゆっくりと流れ、その動きのせいか、水に映った月のようにも見えた。
2007年08月28日
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拙僧の住んでいるあたりでは、ほとんど雷雨で何も見えませんでした。残念でございます。
大乗仏教で八宗の祖といわれる龍樹祖師が書いたという『大智度論』で、月が悪魔に食べられる話が出ていまして、それを世尊が止めさせるのですが、なるほど今回のような「触」であれば、そのようなイメージが喚起された可能性、ありますね。
今回の月蝕は各地方で見えた所、見えなかった所様々あったようですね。
見えた所でもその見え方は様々だったようで、こちらでは白い月が欠ける様子が見えましたし、ニュース等では赤い月が欠ける様子が紹介されていました。
稲妻とともに月蝕も見えた所もあったそうですよ。
私の好きな画家に「イ・クトゥット・ブディアナ」と言う人がいまして、この方はバリ島在住なのですが、「月の女神を呑み込む魔物」をモチーフにした作品があります。芸能山城組のアルバムジャケットにもなっている作品ですが、ご紹介の説話と何か関係あるかもしれませんね。