今昔物語天竺部では、お釈迦様の最期にあたって、実の息子にして十大弟子の一人でもあるラーフラとの関わりが描かれている。
間もなく師である父がこの世での時を終えると知ったとき、その事実に耐えられなくなったラーフラはこの世界から逃げ出した。悲しみと向き合いきれずに別の仏国土に逃避したのだが、その世界の仏に「すぐに元の世界に帰って顔を合わせるべきだ」と諭される。
泣く泣く戻ったラーフラは、横たわる父と対面する。
迎えた仏は息子の手をとり、最期の言葉を残した。
このラーフラは私の息子
十方の仏よ
どうかこの子にあわれみを
あらゆる執着を離れたはずの仏の、らしからぬ言葉。
教理はひとまずさておいて、民間で愛されたお釈迦様の最後の物語は、このようなものだった。
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