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2011年10月21日

原発関連覚書

 一週間前のことになるが、ちょっと気になる新聞記事を見かけたので、内容の要旨を覚え書きにしておく。
 毎日新聞2011年10月14日の記事である。
 社会面に写真入り、見出し付きでそれなりに大きく扱われている。見出しには以下のような言葉が使われている。
原発は仏の教えに背く
「ふげん」など命名懺悔
 
 曹洞宗大本山永平寺(福井県永平寺町)で、来月11月2日、シンポジウム「いのちを慈しむ〜原発を選ばないという生き方」開催されるという。催しを運営する「禅を学ぶ会」事務局長、西田正法さん(永平寺布教部長 56才)のコメントを記事よりそのまま引用する。
「使用済み核燃料を残し、DNAに作用する放射線という危険をはらむ原発は、子孫への負の遺産となる。命を長い時間の視座に置く仏教の教えと相反する」

 記事によると永平寺は同県敦賀市の新型転換炉「ふげん」(廃炉作業中)と高速増殖炉「もんじゅ」(事故により停止中)の命名に関わったとされていると言う。
 具体的にどのように関わったのかは記述されていない。
 ごく常識的に推察すれば、なんらかのつてで原発関係者から新型炉の命名の相談を受けた永平寺のどなたかが、有名な菩薩の名をつけるようアドバイスしたということなのだろう。
 ちなみに両菩薩は次のようなお姿をしている。
 文殊菩薩
 普賢菩薩
 そのことについても西田布教部長はコメントしているので、記事からそのまま引用する。
「原発に対する認識が足りなかった私たちの責任は重く、間違いだった。懺悔することから始めたい」

 一読、かなり踏み込んだ発言に驚く。
 福井県と言えば世界でも類を見ない原発密集地として知られているが、その地元の大寺院布教部長が正面切って「反原発」の立場をとったこと。
 原発という存在そのものが「仏教の教えと相反する」とし、過去の永平寺の関わりを「間違いだった。懺悔することから始めたい」とまで言い切ったこと。
 これまでにも再三述べてきた通り私は「原発即時停止」の立場をとっているが、その私から見ても「そこまで言って大丈夫?」と感じるほど思い切った発言だと思う。
 記事を見る限り、単に西田氏個人の意見とは読めない。
 曹洞宗全体が反原発に舵を切ったということは無いだろうが、少なくとも永平寺がそのように表明したとは読める。
 私が読んだ記事そのものではないが、ほぼ同内容の東京新聞の記事はネットで読める。
 永平寺、脱原発シンポへ 「後世に負の遺産は慈しむ教えに反す」

 wikiによると「もんじゅ」命名への永平寺への関与は誤報であるとされているが……


 よそ様のことなので、今回は記事から常識的に読み取れる内容以上には踏み込まず、覚書として記録するのみとする。

 ちなみに、東西両本願寺でも「脱原発」をうかがわせる動きはあるようだ。
 本願寺新報2011年8月20日号 脱原発 − 人間の傲慢さ厳しく提起した事故 −
 京都新聞 原発依存を問い直す 東本願寺で公開研修始まる
posted by 九郎 at 22:34| Comment(0) | TrackBack(0) | | 更新情報をチェックする

2011年12月05日

原発関連覚書2

 全日本仏教会が、「脱原発宣言」というべき内容の宣言文を12月1日発表したようだ。

 宣言文

 全日本仏教会についての概要は、wikiを参照のこと。

 当ブログはこの宣言文のような「段階的脱原発」ではなく、「国内の全原発即時停止」が最も「現実的」であると主張しているのだが、こうした動きが出ること自体は肯定的に受け止めている。
 ただ少々気にかかるのは、こうした「脱原発宣言」は、いったいどのようなメンバーによる、どのような議論を経て採択されたものであるかということだ。
 全日本仏教会という名称を一般が見れば、まるで日本仏教全体が「脱原発」に舵を切ったかのような印象を受けるかもしれない。
 しかしネット上でも「反原発」「脱原発」とは一線を画す僧侶の皆さんは、私が知っているだけでもけっこういらっしゃるので、実際の日本全国のお寺や僧侶の皆さんに、この「宣言文」がどのくらい賛同されうるものなのか、ちょっと判断がつかない。
 

 このニュースを引用して、「日本仏教が脱原発宣言した!」と手放しで喜んでいる反原発ブロガーも散見されるが、もう少し慎重に経緯を見守った方がいいと思う。

 以前紹介した、永平寺での脱原発シンポについても、実際に参加なさった皆さんがブログ記事にしたものが出そろってきた。
 たとえばこちら 
 今回のシンポは曹洞宗全体を代表するものではなく、あくまで永平寺有志としての立場ということだ。
 「もんじゅ」「ふげん」の命名に、永平寺が関わったとされる件についても、経緯が明らかになっている。


 その他、最近のニュースでは、どうやら高速増殖炉「もんじゅ」が撤退の方向に進みつつあるようだ。
 原発推進派の皆さんの中にも胸をなでおろしている人が多いことだろう。
posted by 九郎 at 00:27| Comment(0) | TrackBack(0) | | 更新情報をチェックする

2012年03月11日

3.11

 何か書くべきことがありそうな気がしたのだが、やっぱり今日は何も書けない。
 ただ、祈る日。

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posted by 九郎 at 23:27| Comment(0) | TrackBack(0) | | 更新情報をチェックする

2012年03月19日

いましろたかし「原発幻魔大戦」

 前にいましろたかしの作品を読んだのはいつだっただろうか?
 もしかしたら十年以上経っているかもしれない。

 二十歳前後の頃、デビュー作(?)の『ハーツ&マインズ』はよく読んでいた。
 作中のどうしようもない若者たちと、ほぼ等身大の感覚で、喫茶店で友達の噂話を聞くような気分で読み耽っていた。

 ふと立ち寄った本屋の原発関連本のコーナーで、思いがけず、いましろたかしの名前を見かけてしまった。


●「原発幻魔大戦」いましろたかし(ビームコミックス)

 まず、「原発幻魔大戦」というタイトルに目を引かれた。
 あとがきによると、やはりこのタイトルは平井和正「幻魔大戦」から借用したもののようだ。
 いましろたかしが平井作品を読んでいたとは思わなかったが、平井読者であればこのタイトルを使うことの「重さ」というものは十分承知の上なのだろう。

 久々に読んだいましろ作品。
 絵はかなりシンプルに枯れており、私の知る初期作の粗いタッチは無い。
 しかし登場人物達の、表現が難しいのだが「どこか醒めた閉塞感」みたいなものは、まったく変わらず描かれているように見えた。
 
 かつての『ハーツ&マインズ』ファンは、一度手に取っておいて良い作品だと思う。
 いかにもいましろ作品らしい、思い込みは強く、問題意識はあるのだけれども、何もできない無力さをかかえた登場人物が、3.11以降の世界に生きる様子が見られる。

 初期作が描かれた1990年前後であれば、こうしたキャラたちは、そして私自身は、それぞれに苦しみもだえながらも、どこか楽天的に日常をおくることができた。
 しかし2011年3月11日以後、その前提ははっきり崩れてしまった。
 この日本で本当に「幻魔大戦」が始まってしまっても、あいかわらず何もできず、ケータイやネットに貼りつきながら、情報を詰め込むだけの自分がいる。
 突き詰めて考えれば悲惨な事態は、表面上はごく平穏に進行していく。
 そのもどかしさの、極めて淡々としたリアルな表現がここにある。

 3.11で直接被害を受けた皆さんにとっては、もしかしたら気楽で無責任で薄っぺらな内容に見えるかもしれない。
 しかし、直接の被災者でない者にとっては、何か一歩踏み出すにしても、何もできないにしても、こうした視点から始めるほか無いのだ。
posted by 九郎 at 23:46| Comment(0) | TrackBack(0) | | 更新情報をチェックする

2012年06月09日