今月6月1日から、アメリカザリガニとミシシッピアカミミガメの法律上の取り扱いが変わり、無断放流が禁止になった。
捕獲と飼育はこれまで通り合法だが、放流が厳罰化されたとのことで、NHKニュース等でも紹介されていた。
ただ、ニュースや各種解説を見ても「子供がザリガニ釣りを楽しんだ後」の対処についてははっきりしない。
厳密にいえば「釣ったらリリースできない」になるはずだが、そこはグレーゾーンとしてボカしてあるのかもしれない。
わが原風景たる
播州平野は、往古の
播磨国風土記の記述にもある通り、田んぼだらけのわりに降水量が少なく、溜池や用水路だらけの土地柄である。

私が子供の頃の70年代は、件のアメリカザリガニやミシシッピアカミミガメをはじめとする外来生物が、どんどん広まる時期にあった。
当時すでに私たちが「ザリガニ」と呼んでいたものはほぼ100%アメリカザリガニであったし、ミシシッピアカミミガメのかわいらしい幼体が「ミドリガメ」と称して縁日の夜店などで盛んに販売され、飼いきれなくなると近所の池などに悪意なくどんどん放流されていた。
80年代に近くなると、ルアー釣りブームとともにブラックバスやブルーギルが次々と無断放流で広がっていった。
大人たちは多少その異様さを感じていたと思うが、私たち子どもにとっては在来の魚類や水棲昆虫とともに「普通に生息している」生き物であった。

フナもコイもいるし、雷魚やブラックバス、ブルーギルもいる。
両生類にイモリもアマガエルもトノサマガエルもウシガエルもいる。
水棲爬虫類ではイシガメもクサガメもミドリガメもいる。
岸近くには水生植物が繁茂し、水棲昆虫が生息していて、トンボやイトトンボも飛び回っている。
私たち子どもは大いに釣りや虫捕りに精を出し、駆け回っていた。
それが普通の風景だったので、ずっとそのまま続くと思っていた。



しかし、そんな風景は長くはもたなかった。
2000年代に入った頃には、近所の溜池の多くは様変わりした。
植物はなくなり、ドロッと濁った水にコイとミシシッピアカミミガメだけが泳いでおり、たまにザリガニ釣りの子供が散見される程度。
他の生き物はほぼ姿を消した。
アメリカザリガニ、アカミミガメにコイも加えた外来生物三種は、雑食で極めてしぶとく繁殖する。
一時期猛威を振るったブラックバスやブルーギルは「捕食者」なので、エサがなくなれば早々に姿を消すのだが、雑食生物は始末が悪い。
池の植物まで食べつくしても、近所の人のエサやりなどがあれば、そのまま増え続ける。
かくして播州平野のかなりの溜池や水路は、最終的にこの三種の天下となり、他の生物は消滅していく。
元の多様な生物相を復活させるには、「無断放流の禁止」だけでは全く足りず、積極的な駆除が必要ではないだろうかと思う。
団塊世代とそのジュニア世代前後(私も微妙にそこに引っかかっている)は、あまりに無邪気に原風景すら消費しつくしてしまったのだ。
そしておそらく、消費しつくし、後に何も残さなかったのは、溜池の原風景についてだけではない。
つらつらそんなことを考える、出生率1.26の今日この頃である。