カテゴリ節分では、節分行事と牛頭天王、スサノオの関連について概観してきた。
牛頭天王は祇園で祀られるなど、人気の高い神様であるが、その人気の割には定番図像が無く、発祥もわかりにくい謎の神だ。
牛頭天王像は実に様々な姿で描かれ、造られている。三面のもの、四臂のもの、密教の明王に似た姿のもの、日本の神代風のものなど色々あるが、多くは頭上に牛頭を頂いている点で共通している。
中でも私が気になるのは、現在愛知県にある興禅寺に所蔵されているという木像だ。まだ写真でしか見たことが無いのだが、ただならぬ雰囲気は十分伝わってくる。いつか是非、実物を拝観してみたい像だ。
素朴な造りの古い木像で、頭部中央に馬(?)の顔、その左右に角の生えた童子のような顔、そして頭上には牛頭をのせている。三面十二臀で手には各種の持物を持っているが、それが何なのかは定かではない。
顔立ちは円空仏に少し似ていて可愛らしくも見えるが、じっと見ているとだんだん恐ろしいような気分になってくる。
今回はその、私が感じた「恐ろしさ」の部分を強調して、一枚イラストを描いてみた。
念のために確認しておきますが、元の木像はもっとかわいい感じですよ(笑)
2009年01月02日
2009年01月03日
カテゴリ「節分」参考図書1
当ブログ「縁日草子」最初期のカテゴリにして代表的なコンテンツ節分について、遅ればせながら参考図書を紹介しておこう。
●「風土記」(平凡社ライブラリー)
記事蘇民将来、風土記逸文より、蘇民将来雑記において紹介した蘇民将来神話の原典は、「備後国風土記逸文」に記述されている。
風土記はどこを読んでも面白いエピソード満載なのだが、手軽に親しむには現代語訳され、廉価な平凡社ライブラリーがお勧め。
●「風土記」(岩波文庫)
風土記は日本の古典の中でも最古層に属するが、内容的にはさほど難解なものは無い。より原典に近い雰囲気を感じ取るには岩波文庫版がお勧め。
●「安倍晴明占術大全」藤巻一保(学研)
記事金烏玉兎、牛頭天王縁起等で紹介した、より発展した形の蘇民将来神話については、この一冊がお勧め。詳しい紹介は本の中の本を参照のこと。
●「風土記」(平凡社ライブラリー)
記事蘇民将来、風土記逸文より、蘇民将来雑記において紹介した蘇民将来神話の原典は、「備後国風土記逸文」に記述されている。
風土記はどこを読んでも面白いエピソード満載なのだが、手軽に親しむには現代語訳され、廉価な平凡社ライブラリーがお勧め。
●「風土記」(岩波文庫)
風土記は日本の古典の中でも最古層に属するが、内容的にはさほど難解なものは無い。より原典に近い雰囲気を感じ取るには岩波文庫版がお勧め。
●「安倍晴明占術大全」藤巻一保(学研)
記事金烏玉兎、牛頭天王縁起等で紹介した、より発展した形の蘇民将来神話については、この一冊がお勧め。詳しい紹介は本の中の本を参照のこと。
2009年01月04日
カテゴリ「節分」参考図書2
●「陰陽師―安倍晴明の末裔たち」荒俣宏(集英社新書)
このカテゴリ節分で概説してきた備後国風土記の世界から続く、岡山県や四国の現代における陰陽道の風景を紹介した一冊。日本の各地域には、消滅しつつあるとは言え、まだまだ古い民俗が残されていることがわかる。
陰陽道の世界を背景にこの地域で生まれた新宗教、金光教についても触れられている。
●「金光大神の生涯」村上重良(講談社)
記事金神、天地金乃神で紹介した金光教の教祖についての伝記。著者は如来教、黒住教、金光教、天理教、大本教など、江戸〜明治期の新宗教に関する第一人者。新宗教の流れを時代背景とともに俯瞰した視点で、非常に理解しやすい。
古い本なのでやや入手困難か。
●「出口なお 王仁三郎の予言・確言」出口和明(みいづ舎)
記事艮の金神、スサノオで紹介した新宗教・大本についてはこの一冊。
著者は大本聖師・出口王仁三郎の孫にあたり、出口なお・王仁三郎の数奇な生涯を小説化した長編「大地の母」が主著。「大地の母」は一般的知名度は低いが知る人ぞ知る名作で、古武術研究の甲野善紀氏や、宗教学者の島田裕己氏も高く評価している。
本来ならば「大地の母」を強くお勧めしたいところなのだが、なにぶん文庫サイズで全十二巻の長編なので、今回は一冊でまとまったものを紹介。大本の解説本は各種あるが、王仁三郎となおの激しい対立「火水の戦い」についてきちんと触れてあるものは数少ない。
2009年02月02日
カテゴリ「節分」参考図書3
このカテゴリ節分の主人公は、なんと言っても牛頭天王だろう。今回はこの謎の神に肉薄する参考図書について紹介してみよう。
●「牛頭天王と蘇民将来伝説」川村湊(作品社)
かつて広く民衆の信仰を集めた牛頭天王は、維新後の国家神道体制の確立とともに、その姿を埋没させられた。記紀神話に登場しない来歴不明の異神であることや、天皇以上に民衆に親しまれた「てんのう」であったことがその原因であるらしい。
各地の民俗や文献に残る牛頭天王の断片を丹念に辿り、この異様な神の多様な姿を描き出す一冊。牛頭天王信仰の成立過程そのものが、神が神を喰い、交わり、転生する、異様な神話体系であると感じられる。様々な古文献のテキストが収録されているのがありがたい。
私がカテゴリ「節分」を記事にしたのが2006年、この本はその1年後に発行されている。記事を書いた時点でこのような本を読めていたらと無いものねだりをしたくなるが、もし先に読んでいたらもうそれだけでお腹いっぱいになって、わざわざ自分で拙い記事にする意欲はなくなっていたかもしれない(笑)
●「陰陽道の神々」斎藤英喜(佛教大学鷹陵文化叢書)
タイトルも本の造りも硬い学術書のような体裁だが、文章は物凄く平易で明快。私のような素人にも読みこなし易い。
牛頭天皇をはじめ、当ブログのカテゴリ金烏玉兎で扱った盤古神話についても詳述されている。カラー図版の牛頭天王や五帝五竜王の図像は一見の価値あり。
この本も私がカテゴリ「金烏玉兎」を記事にした後に発行されているのだが、記事を書いた時点でこのような本を読めていたらと無いものねだりをしたくなる。しかしもし先に読んでいたらもうそれだけでお腹いっぱいになって……(以下略)
●「異神(下〉」山本ひろ子(ちくま学芸文庫)
当ブログ「縁日草子」で様々な神仏についてのモノガタリを紹介する内に、徐々に「中世神話」の世界に心惹かれるようになってきた。
日本の記紀神話の世界と印度から中国を経由して伝わった外来の神仏が、数百年の醸造期間を経て、互いに交わりあった異様な神仏習合の神話世界を生んだ。そのような渾沌の中から、ゆり戻しのようにただ一つの要素を強調し、開明性を打ち出した鎌倉仏教の試みが生まれた一面もありそうだ。
この本はそうした中世神話の主人公とも言うべき神仏について詳細に考察しており、下巻には牛頭天王が取り上げられている。 上巻と併せてカテゴリ大黒の参考図書としてもお勧め。
●「牛頭天王と蘇民将来伝説」川村湊(作品社)
かつて広く民衆の信仰を集めた牛頭天王は、維新後の国家神道体制の確立とともに、その姿を埋没させられた。記紀神話に登場しない来歴不明の異神であることや、天皇以上に民衆に親しまれた「てんのう」であったことがその原因であるらしい。
各地の民俗や文献に残る牛頭天王の断片を丹念に辿り、この異様な神の多様な姿を描き出す一冊。牛頭天王信仰の成立過程そのものが、神が神を喰い、交わり、転生する、異様な神話体系であると感じられる。様々な古文献のテキストが収録されているのがありがたい。
私がカテゴリ「節分」を記事にしたのが2006年、この本はその1年後に発行されている。記事を書いた時点でこのような本を読めていたらと無いものねだりをしたくなるが、もし先に読んでいたらもうそれだけでお腹いっぱいになって、わざわざ自分で拙い記事にする意欲はなくなっていたかもしれない(笑)
●「陰陽道の神々」斎藤英喜(佛教大学鷹陵文化叢書)
タイトルも本の造りも硬い学術書のような体裁だが、文章は物凄く平易で明快。私のような素人にも読みこなし易い。
牛頭天皇をはじめ、当ブログのカテゴリ金烏玉兎で扱った盤古神話についても詳述されている。カラー図版の牛頭天王や五帝五竜王の図像は一見の価値あり。
この本も私がカテゴリ「金烏玉兎」を記事にした後に発行されているのだが、記事を書いた時点でこのような本を読めていたらと無いものねだりをしたくなる。しかしもし先に読んでいたらもうそれだけでお腹いっぱいになって……(以下略)
●「異神(下〉」山本ひろ子(ちくま学芸文庫)
当ブログ「縁日草子」で様々な神仏についてのモノガタリを紹介する内に、徐々に「中世神話」の世界に心惹かれるようになってきた。
日本の記紀神話の世界と印度から中国を経由して伝わった外来の神仏が、数百年の醸造期間を経て、互いに交わりあった異様な神仏習合の神話世界を生んだ。そのような渾沌の中から、ゆり戻しのようにただ一つの要素を強調し、開明性を打ち出した鎌倉仏教の試みが生まれた一面もありそうだ。
この本はそうした中世神話の主人公とも言うべき神仏について詳細に考察しており、下巻には牛頭天王が取り上げられている。 上巻と併せてカテゴリ大黒の参考図書としてもお勧め。
2009年02月06日
鬼を統べる神
牛頭天王のルーツは、強いて遡れば世界中に古くから存在する牛頭人身の神々のイメージに連なるかもしれないが、直接的には大陸から朝鮮半島伝いに渡来した神が、中世日本で似た性格を持つ現地の神と合体して成立した鬼神だろう。
牛頭天王の図像は様々な種類のものが流布されており、これと言った定番は無い。ただ、頭上に牛の頭を冠し、斧状の武器をかざしていることが多いので、それを目印にすれば同定し易い。
仏教で言えば天部(仏教流に読み替えられたインドの神々)のような姿で描かれることが多いが、中には多面多臂の明王部のような姿で描かれたものもある。
今回はそうした明王部的図像を元に一枚描いてみた。
元図は陰陽道の「神像絵巻」に描かれた牛頭天王像で、カテゴリ「節分」参考図書3で紹介の「陰陽道の神々」斎藤英喜(佛教大学鷹陵文化叢書)のカラー表紙を参照した。
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牛頭天王の図像は様々な種類のものが流布されており、これと言った定番は無い。ただ、頭上に牛の頭を冠し、斧状の武器をかざしていることが多いので、それを目印にすれば同定し易い。
仏教で言えば天部(仏教流に読み替えられたインドの神々)のような姿で描かれることが多いが、中には多面多臂の明王部のような姿で描かれたものもある。
今回はそうした明王部的図像を元に一枚描いてみた。
元図は陰陽道の「神像絵巻」に描かれた牛頭天王像で、カテゴリ「節分」参考図書3で紹介の「陰陽道の神々」斎藤英喜(佛教大学鷹陵文化叢書)のカラー表紙を参照した。
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