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節分の主人公は、なんと言っても
牛頭天王だろう。今回はこの謎の神に肉薄する参考図書について紹介してみよう。
●「牛頭天王と蘇民将来伝説」川村湊(作品社)
かつて広く民衆の信仰を集めた牛頭天王は、維新後の国家神道体制の確立とともに、その姿を埋没させられた。記紀神話に登場しない来歴不明の異神であることや、天皇以上に民衆に親しまれた「てんのう」であったことがその原因であるらしい。
各地の民俗や文献に残る牛頭天王の断片を丹念に辿り、この異様な神の多様な姿を描き出す一冊。牛頭天王信仰の成立過程そのものが、神が神を喰い、交わり、転生する、異様な神話体系であると感じられる。様々な古文献のテキストが収録されているのがありがたい。
私がカテゴリ「節分」を記事にしたのが2006年、この本はその1年後に発行されている。記事を書いた時点でこのような本を読めていたらと無いものねだりをしたくなるが、もし先に読んでいたらもうそれだけでお腹いっぱいになって、わざわざ自分で拙い記事にする意欲はなくなっていたかもしれない(笑)
●「陰陽道の神々」斎藤英喜(佛教大学鷹陵文化叢書)
タイトルも本の造りも硬い学術書のような体裁だが、文章は物凄く平易で明快。私のような素人にも読みこなし易い。
牛頭天皇をはじめ、当ブログのカテゴリ
金烏玉兎で扱った盤古神話についても詳述されている。カラー図版の牛頭天王や五帝五竜王の図像は一見の価値あり。
この本も私がカテゴリ「金烏玉兎」を記事にした後に発行されているのだが、記事を書いた時点でこのような本を読めていたらと無いものねだりをしたくなる。しかしもし先に読んでいたらもうそれだけでお腹いっぱいになって……(以下略)
●「異神(下〉」山本ひろ子(ちくま学芸文庫)
当ブログ「縁日草子」で様々な神仏についてのモノガタリを紹介する内に、徐々に「中世神話」の世界に心惹かれるようになってきた。
日本の記紀神話の世界と印度から中国を経由して伝わった外来の神仏が、数百年の醸造期間を経て、互いに交わりあった異様な神仏習合の神話世界を生んだ。そのような渾沌の中から、ゆり戻しのようにただ一つの要素を強調し、開明性を打ち出した鎌倉仏教の試みが生まれた一面もありそうだ。
この本はそうした中世神話の主人公とも言うべき神仏について詳細に考察しており、下巻には牛頭天王が取り上げられている。 上巻と併せてカテゴリ
大黒の参考図書としてもお勧め。