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2007年09月30日

太陽と月を喰う悪魔

 須弥山のことを調べているうちに、色々関連事項についても勉強できた。
 須弥山宇宙観には、人や神々や星、阿修羅の住まう位置が、一応全て含まれており、インド起源の古い神話はそうした位置関係を下敷きにしている。
 その中にでも話題になった、「月を喰う悪魔」のお話がある。細部には諸説あるが、概容を紹介してみよう。

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 昔、不老不死の霊薬「アムリタ」を盗んだ阿修羅がいた。
 太陽と月がそのことをヴィシュヌに告げ口すると、ヴィシュヌは阿修羅の首を切った。
 しかし阿修羅はアムリタを飲んでいたので、首と胴体はそれぞれラーフとケートゥという星となった。
 ラーフは太陽と月を憎んで追い回すようになり、時に飲み込むこともあるという。これが日蝕・月蝕である。
 しかしラーフには胴体が無いので、飲み込まれた太陽と月はすぐに現われてしまうのだ……
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2007年11月02日

ハロウィン

 10月31日はハロウィンだった。
 ハロウィンは、私の子供の頃は完全に欧米のドラマの中の風物だったけど、最近は季節ものとして取り入れている地域もあるようだ。
 私が知っているある町では、子供向けの英会話教室がハロウィンを長年やっているうちに、いつの間にか町中に広まったそうだ。
 子供たちが妖怪や魔女に扮して「トリック・オア・トリート(お菓子をくれなきゃ、いたずらするぞ!)」と家々を巡る風景や、かぼちゃを繰り抜いた飾りは、異国由来だけれどもどこか懐かしい感じもする。
 日本のお盆や地蔵盆その他のお祭と、構成要素に似たところがあるので、受け入れやすい土壌はあると思う。そもそも日本に「純粋に固有な風習」など無く、どんな風習でもどこかの時点で外来のものが移入されてきたのだから、このハロウィンも今後分布は広がっていくかもしれない。

 実は今年の春先、オモチャカボチャの苗を買ってきて育てていた。
 ハロウィンの頃には収穫した実でお化け飾りを作ろうと思っていたのだが、残念ながら受粉がうまくいかず、実らなかった。
 なので、一枚イラストを。

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2007年12月07日

降魔成道

 明日12月8日は「成道会(じょうどうえ)」で、お釈迦様が悟りを開いたとされている日にあたる。
 約二千五百年前、お釈迦様が菩提樹の下で悟りを開く直前、成道を妨害しようとする魔の軍勢を降伏したという伝説がある。その魔軍を差し向けたのが、須弥山の遥か上空に住する第六天魔王だ。
 (第六天魔王第六天参照)
 仏教説話集「今昔物語」天竺部では、以下のような物語が紹介されている。

 お釈迦様が菩提樹の下に座したとき、もうすぐ彼が悟りに至ることを予感した天地の神々は一斉に賛嘆の声を上げ、その声は天空の第六天宮殿を振動させた。第六天魔王は自分以上の境地に楽しむ者の出現を阻止しようと決意した。
 まず三人の娘を派遣し、お釈迦様の欲望につけこもうとしたが、通用しなかった。次には自ら赴いて、第六天の王の地位を持ちかけたが、通用しなかった。最後に魔の軍勢を率いて襲い掛かったが、これも通用しなかった。
 魔を退けたお釈迦様は、この後成道を果たした。

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(画像をクリックすると少し大きくなります)

 今回この降魔成道の絵を描くにあたって「今昔物語」をあらためて読み返してみたのだが、天竺部の冒頭にお釈迦様の物語が物凄く詳細に描写されていて、非常に面白かった。
よく読むと第六天魔王がお釈迦様の出生シーンから既に登場していたり、神々の王・帝釈天や、第六天より更に上空に住する梵天が重要な役割で登場したり、カテゴリ須弥山の世界観が生き生きと活写されているのがわかった。


 今昔物語は日本が舞台の「本朝部」がよく読まれるが、天竺部はお釈迦様の伝記として本当に面白く、よくできている。
 当ブログではいずれ絵伝「お釈迦様物語」を描いてみたいと思っていたのだが、今昔物語をベースにするのも一つの手だなと感じた。
posted by 九郎 at 21:57| Comment(5) | TrackBack(0) | 季節の便り | 更新情報をチェックする

2007年12月31日

なまはげ

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 秋田県の大晦日
「泣ぐこはいねがー」と叫びながら
 目をむき牙むき髪振り見出し
 出刃包丁を振り上げて家々を練り歩く
 大きな顔の来訪者
 子供を存分に泣かせ
 家人になだめられて
 災い引き受け去っていく 
 免疫を司る厄の神
 




 それでは皆様、よいお年を。
 
posted by 九郎 at 00:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 季節の便り | 更新情報をチェックする

2008年02月15日

最期にひとつ

 2月15日は「涅槃会(ねはんえ)」で、お釈迦様がこの世から涅槃へ入ったとされる日。
 今昔物語天竺部では、お釈迦様の最期にあたって、実の息子にして十大弟子の一人でもあるラーフラとの関わりが描かれている。

 間もなく師である父がこの世での時を終えると知ったとき、その事実に耐えられなくなったラーフラはこの世界から逃げ出した。悲しみと向き合いきれずに別の仏国土に逃避したのだが、その世界の仏に「すぐに元の世界に帰って顔を合わせるべきだ」と諭される。
 泣く泣く戻ったラーフラは、横たわる父と対面する。
 迎えた仏は息子の手をとり、最期の言葉を残した。
 
このラーフラは私の息子
十方の仏よ
どうかこの子にあわれみを


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 あらゆる執着を離れたはずの仏の、らしからぬ言葉。
 教理はひとまずさておいて、民間で愛されたお釈迦様の最後の物語は、このようなものだった。


【関連記事】
はなまつり
成道会
涅槃会
托胎霊夢
降魔成道
posted by 九郎 at 23:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 季節の便り | 更新情報をチェックする