2018年06月11日

旧キット 1/144 MS-06R ザクU(前編)

 先月、あさのまさひこ著「MSVジェネレーション」を読んだことをきっかけに、80年代前半のリアルロボットアニメ、プラモのブームについて、色々思うところがあり、当時のプラモ少年からの一つのアンサーとして一連の記事にしてきた。

 分岐点1983(80年代リアルロボットブーム覚書)


●「MSVジェネレーション ぼくたちのぼくたちによるぼくたちのための『ガンプラ革命』」あさのまさひこ(太田出版)

 81〜82年、劇場版ガンダム三部作公開と共に勃発した空前のガンプラブームを「第一次ブーム」とするなら、83〜84年のMSVシリーズ発売は「第二次ブーム」にあたるだろう。
 アニメ作中に登場しない派生MSプラモのブームは、第一次ブームでプラモ制作の楽しさを知り、技術を身に付けた小中学生を主要な顧客に、年長のモデラーやファン層をイデオローグとして牽引された。
 その頃の私は完全に子供。
 素組みや小改造、筆塗り塗装がなんとかできるようになった程度の、当時よくいたプラモ少年の一人だった。
 MSVシリーズは、そのくらいのレベルの子供にとってはほど良い難易度で、第一次ブームが終ってもまだプラモが作りたかった層の受け皿になった。

 私たち年少ファンにとってのMSVは、なんだかんだ言ってもやっぱり「ガンダム」だった。
 マンガ「プラモ狂四郎」のパーフェクトガンダムをシリーズ向けにアレンジした「フルアーマーガンダム」が一番人気だった。
 後に狂四郎のパーフェクトガンダムそのものもプラモ化され、ファン主導のMSVブーム終盤のサプライズギフトになった。

 一方、年長ファン層にとってのMSVは何と言ってもザクの派生デザインが人気だっただろう。
 上掲の「MSVジェネレーション」でも、著者あさのまさひこが最も熱を込めて語っているのはプラモ第一作にあたる「1/144 MS-06R ザクU」だった。
 読んでいるとムラムラとこのプラモをもう一度作りたい気分が盛り上がってくる名文である。
 ちょうど手元には、中古屋のワゴンセールで安く入手した「箱つぶれ」が確保してある。
 さっそく引っ張り出して作り始めてみた。


●1/144 MS-06R ザクU

 年長ファンの間では「ゼロロクアール」と呼びならわされていたであろうこのプラモ、私たち年少ファンの間では「ザクツー」で通っていた。
 アニメのザクよりカッコいいパワーアップ型だから「ザクツー」という、子供らしい理解の仕方である。
 本来の設定(まあ、これも後付けなのだが)では、アニメの「旧ザク」にあたるのが「MS-05 ザクT」で、量産型ザクやシャアザクにあたるのが「MS-06 ザクU」である。
 ノーマルな「ザクU」に追加装備を盛り込んであるのが「Rタイプ」なので、型番でいえば年長ファンの「ゼロロクアール」がやっぱり正しい。
 こんな所にも「理論の年長ファン、無邪気に楽しむ年少ファン」という構図が表れている(笑)

 まず、箱絵が素晴らしい。
 MSVはどれも「箱買い」できるものが揃っており、中身の出来とのギャップも少ない良いシリーズだったが、中でもこの第一作の箱絵は出色である。
 プラモの主役のザクが「後ろ向き」ででっかく描かれていることに度肝を抜かれるが、これは子供だった私でも「まあ、前から見たらほとんど普通のザクと一緒やからな」と、すぐに納得したことを覚えている。
 MSVがMSVたる特徴は、ノーマルシリーズに比べてかなり大型化されたランドセル(当時は「バックパック」と呼ばれていなかった)に顕れるので、この箱絵のアングルは絶対的に正しいのだ!

 このプラモは今でも再販されており、タイミングさえ良ければ定価の500円、量販店なら二割引き程度で買えるので、「今すぐ欲しい」という人以外は無理してプレミアで買ったりするようなものではない。
 私が確保していた中古プラモは、箱のくたびれ具合いや、チューブ型の接着剤が入っていることから見て、おそらく当時品。
 古いガンプラの中古品はプラが劣化・変形していたり、付属デカールが変色・干からびたりしている場合があるのであまりお勧めはできないが、私が確保していたブツはさほど状態は悪くなかった。

 まずは素組み。
 ダークグレーの一色成形。
 昔のプラモなのでパーツの接着面の不整合やヒケは各所にある。
 別売りの接着剤による溶着、合わせ目消し、パテ埋め等は必須で、むしろその作業工程を楽しむのが旧キットだ。

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 足首可動軸の接着固定がけっこう難しかった。
 この箇所は「しっかり接着して2〜3日(できれば一週間ぐらい)動かさずに待つ」のが正解。
 子供の頃はそれが待てなくて動かしてしまい、色々大変になってしまったことなど、思い出した(笑)
 旧キットとは言え、可動にこだわる人は、ここをボールジョイントにして接地を改善するだろう。

 今回私は往年の名作プラモをそのまま味わうため、完全に素組みにしてあるが、子供の頃作った時には小改造をほどこした。
 GWに実家に帰省した時に、押し入れマウンテンサイクルから当時造った「ザクツー」のパーツが一部が発掘されたので、紹介してみよう。
 改造個所がよく分かるのは胴体前面。


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 コクピットハッチが開くように、プラ板で工作してある。
 今見ると工作も塗装もかなり荒っぽいが、とにかくちゃんと完成させているのは偉い!
 頑張ったな、三十数年前の俺!

 この「前作」を完成させたのが確か中学に上がった前後だったはずだ。
 この後、私は雑誌の作例記事等で眼ばかり肥え、頭でっかちになってしまって、やたらにプラモを切り刻んで結局完成しない不治の病に罹ってしまった。
 中二病のプラモにおける一症例、未完成癖である。
 刻を超えてアドバイスができるなら、「とにかく無理せず一つ一つ完成させろ!」「他人の作例や、手法の流行は気にするな!」と言ってあげたい(笑)


 今はもう、達観したおっさんなので、流行りなど気にせず好きに造り、好きに塗ることができる!

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(続く)
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2018年06月12日

旧キット 1/144 MS-06R ザクU(後編)

 先月、「MSVジェネレーション」(あさのまさひこ著)を読んでから、猛烈に「06R」の旧キットが作りたくなった。


●「MSVジェネレーション ぼくたちのぼくたちによるぼくたちのための『ガンプラ革命』」あさのまさひこ(太田出版)

 こういう時は細かいことは気にせずに勢いで作ってしまうのが良い。
 無改造筆塗りで一気に仕上げる。

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 基本は全くの素組みで、モノアイだけは市販パーツを貼り付けてある。
 キットには水転写デカールでモノアイ用の赤丸が付属しているが、もう少し明るさ立体感、筆タッチが欲しいので、ここだけは別売りパーツ。
 組み上げてからでも手足が外れてくれるので、80〜82年のノーマルガンプラよりはかなり塗りやすい。
 塗装はいつも通りつや消し黒を缶スプレーで吹き、その上から黒立ち上げ風にアクリルガッシュ筆塗り
 いつもと違うのは、一部プラモ用塗料の「黒鉄色」とシルバーを使ったことぐらいだ。

 子供の頃、初めて黒鉄色を塗ってみた時の驚きが蘇ってくる。
 銀粒子が混ざった黒の質感がとても金属らしく見えて、「すげー! ほんまに黒で鉄や!」と感激した。
 黒鉄色で塗った上から、エッジの部分をシルバーでドライブラシすると、更に金属感はアップした。
 この質感がすっかり気に入った私は、1/250情景モデルのMSいくつかを全身つや消し黒鉄色+銀ドライブラシで塗り、メタルフィギュア風に仕上げたことなども思い出す。

 黒鉄色の質感をガッシュの基本色だけで再現するのはさすがに無理なので久々に使ってみたが、つくづく良い色だと思う。
 腕や胸のパープルの箇所は、かなり彩度を落として控えめに塗ってある。
 子供の頃06Rを作った時は、ここもグレーで塗っていた。
 当時のバイブル「HOW TO BUILD GUNDAM」に、黒とグレーを基本色に、銀で激しく汚してあるリックドムの作例があって、私はその色合いが大好きだったのだ。

 今回は一応色指定通りパープルに塗ってあるが、グレーの諧調差にも見える程度に彩度を落とした。
 ドムのカラーリングから逆算したであろう配色が、なんとも武骨でカッコいい。

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 確保してあったキットはたぶん三十年以上前の当時品。
 水転写デカールが使用可能か気がかりだったが、木工用ボンドの水溶きで補完すると、なんとか貼り付けられた。
 よく乾燥してからつや消しトップコートを軽く吹き、整えて完成。

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 極太のプロポーションは、これぞまさに80年代ザクプラモ!
 ノーマルのシャアザク(肩ハの字切り)や、量産型ザク(本体無改造・武器セットで完全武装)を並べてみると、そのボリュームがよく分かる。

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 最初期ガンプラのノーマルザクの方も、土偶だなんだと言われながらも、大河原邦男の設定画にはよく似ている。
 ただ、アニメ作中の安彦良和の原画の絵柄では、ザクはもっと太マッチョに描かれていて、MSVシリーズはそちらの印象に寄せてあるのだろう。
 五割増くらいの横幅に加え、一番違うのが頭部形状の解釈だ。

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 上掲「MSVジェネレーション」によると、縦長の卵型の頭部形状やマッシブな体形は、当時世界一ザクを作るのが上手かったストリームベースの小田雅弘の造形を取り入れていたそうだ。
 確かに、子供の頃はじめてこの06Rのプラモを作った時、「すげー! これ小田さんのザクやん!」と感動したことも思い出す。
 あの直観は、正しかったのだ。
(子供の頃は何でも一つ一つに感動し、時間が経ってもそれは記憶に残っているものだなあ……)

 ずっと後になってから発売されたFGザクと並べると、形状やスタイル解釈の流行りすたりが見えて面白い。

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 キットにはザクマシンガン、マシンガン用握り手、ヒートホーク、左右握り手、左右平手、中隊長マークの角、マーキング用デカールが付属している。
 欲を言えば、「黒い三連星仕様」なのでバズーカも欲しかった所だが、これは別売りの武器セットから調達すればよい。


●1/144 モビルスーツ用武器セット

 実は後に発売された「MS-06R-2 ジョニー・ライデン少佐機」を買えば、+100円でバズーカも含めて追加パーツがたくさん手に入り、「黒い三連星仕様」として作ることもできる。(ただし成型色は真っ赤っか!)


●1/144 MS-06R-2 ジョニー・ライデン少佐機

 非常にお買い得なのだが、こちらを買うとMSVシリーズ中の最高傑作、伝説の箱絵が手に入らないのが悩ましいところだ(笑)


 三十数年ぶりの「ザクツー」、めちゃめちゃ楽しかった!!!


 プラモ・フィギュア作例まとめ
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2018年06月24日

ガンプラ旧キット制作参考資料

 80年代ガンプラ旧キットを制作する時の参考資料として、やはり当時の作例やイラスト、設定資料の類の載っている書籍が欲しくなる。
 手持ちの資料の中から、いくつか今でも比較的入手し易いものを紹介してみよう。

 何はともあれまず再見したいのは、ブーム当時描かれた御大・大河原邦男のイラストだ。
 あの頃活躍していたモデラーの皆さんから、広大な裾野たるプラモ少年まで、みんな参考にしていた「根本資料」と呼べるのが、大河原イラストではないだろうか。
 ブーム初期、ガンプラを塗る時の参考になるのは、まずはプラモの箱絵や組立解説書の色指定だったが、それだけではオモチャ然とした旧来のロボットにしかならなかった。
 当時「リアル」を志向するガンダムイラストを描けるのは、メカニックデザイナーである大河原邦男しかいなかったのだ。

 ポスターカラーで筆タッチを活かした骨太な絵柄。
 激しいウエザリング。
 精密なマーキング。
 ミリタリー感覚溢れるリアルタイプカラーなどなど。

 多くのガンプラファンに「こんな風にプラモを作りたい!」と思わせる、素晴らしいイラストだったと思う。
 大河原御大の画集はいくつも出ているが、ガンダム関連でもう一度見たいイラストが、ほとんど収録されているのが、以下の一冊。


●「大河原邦男画集―Gundam art works」(ムービック)
 ファーストガンダムだけでなく、ゼータからF91あたりまでのイラストや、近年制作された新作も多数収録されている。
 思い出補正もあろうけれども、やはり圧倒的に昔のイラストが良い。
 あの「ラストシューティング」を含む劇場版のポスターや、初期MSVの設定画、ソノラマ文庫小説版の表紙絵なども、もちろん収録。
 あと一枚、確かボンボンに載っていた「歴戦を経たガンダムマークU」のイラストが収録されていれば、私の中では100点満点だったのだが、おしい!

 そしてブーム初期、大河原イラストにインスパイアされた作例が次々に発表されたのが「月刊ホビージャパン」であり、その伝説の総集編が、以下のものだった。


●「HOW TO BUILD GUNDAM1、2」

 現在は復刻版や電子書籍版も刊行されており、入手は極めて容易。
 おっさんになった今読み返すと、子供の頃仰ぎ見るだけだった記事中の改造が、「けっこうできる」ようになっているのがわかってちょっと感動する。

 82年、ブームがそろそろ後半に入ると、ガンプラ記事の「熱」は、模型専門誌から児童マンガ月刊誌「コミックボンボン」へと移行した。
 当時活躍していたモデラー集団ストリームベースの面々の作例、製品情報、そして史上初のガンプラマンガである「プラモ狂四郎」連載で、ボンボンは一気にガンプラ雑誌と化した。
 相互の記事が互いにリンクし、うねるように加速していく当時の熱狂は、リアルタイムで雑誌を読んでいないと中々理解しがたいのではないかと思う。
 強いて挙げればマンガ「プラモ狂四郎」のストーリー展開が、あの頃の雰囲気を一番伝えているかもしれない。
 序盤の小改造からパーフェクトガンダム完成に至るまでの盛り上がりは、今見ても色あせない。


●「プラモ狂四郎」やまと虹一(講談社)

 ボンボン掲載の作例や設定資料、関連記事は、文庫サイズ三冊にまとめられており、復刻もされているので入手は比較的容易だ。


●「<復刻版>機動戦士ガンダムモビルスーツバリエーション1〜3」

 ボンボンと共にガンプラファンによく読まれていたのが、プラモ屋店頭で販売されていたバンダイ刊行の「模型情報」で、小冊子ながら毎月充実の内容だった。
 MSVについては別冊ハンドブックとして刊行され、こちらも近年復刻されている。


●「模型情報・別冊MSバリエーション ハンドブック 復刻版」

 もう一冊挙げるなら、ブーム後半のボンボン作例を集成した以下の一冊だ。

●「コミックボンボン別冊 スーパーモデリング」
 小田雅弘によるジョニー・ライデンの06R-2ザクが表紙を飾る。
 ジョニー・ライデン機にドムのバズーカを持たせたのはおそらくこの作例が最初だったはずで、そのあまりのカッコ良さに定番設定化していった。
 80年代を風靡した小田雅弘ザク作例の到達点である。
 こちらは復刻されていないので入手困難だが、一部作例写真は小サイズながら、以下の一冊にも収録されている。


●「ガンプラ・ジェネレーション」五十嵐浩司・編(講談社)
 ガンプラに十周年を記念して刊行されたもの。
 ファーストガンダムからMSVを中心に、90年代末までのガンプラの歴史を回顧している。
 今となっては幻の「MSX」シリーズのカラー設定も収録。

 制作中のBGMには、以下の音源がおススメ。


●ベスト・オブ・ガンダム
 ファーストガンダムのTV版、劇場版の主題歌、挿入歌がとりあえず一通り全部収録。
 曲間に劇中セリフが入っているのも良いが、一部別の声優さんが無理やりつないでいるような?
●機動戦士ガンダム ― オリジナル・サウンドトラック
 ファーストガンダム劇中音楽で聴きたいものは、とりあえず一通り収録。

 80年代前半のガンプラブーム全般の「通史」としては、これまでにも度々紹介してきた以下の一冊が挙げられる。


●「MSVジェネレーション ぼくたちのぼくたちによるぼくたちのための『ガンプラ革命』」あさのまさひこ(太田出版)

 当ブログでガンプラ旧キット作例は以下に。

 プラモ・フィギュア作例まとめ

 これまでの作例の中で、大河原邦男タッチで割と気に入っているのは、ガンダムシャア専用ズゴック

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 まだまだ粗いので、精進します!
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2018年06月29日

80年代リアルロボットプラモ ボックスアートの世界

 80年代前半は、リアルロボットアニメの盛り上がりとともに、プラモが質・量ともに爆発的な進化を遂げた時期でもあった。
 商業的な上り調子にあるジャンルには才能も結集するので、この時期のプラモの箱を飾る「ボックスアート」には、多くの傑作が描かれた。
 ブームの口火を切ったガンプラの場合、80〜82年のノーマルシリーズはわりとオーソドックスなアニメプラモの箱絵の範疇にあった。
 ブーム後期発売の1/100リアルタイプシリーズから、アニメの世界から一歩踏み出したリアル志向、ミリタリー趣味の箱絵が現れ始めた。
 シリーズ丸ごとミリタリーモデル的な絵柄が箱を飾るようになったのは、ガンプラブームと同時進行で発売されていた「太陽の牙ダグラム」シリーズからだったと記憶している。
 82年になると、「超時空要塞マクロス」「戦闘メカ・ザブングル」のシリーズも、ミリタリー趣味の箱絵で統一された。
 そしてリアルロボットアニメの制作点数がピークに上り詰める83〜84年には、発売されるプラモの大半がリアルな絵柄で占められるようになった。

 私見では、リアルロボットプラモの箱絵が最も盛り上がっていた時期は82〜83年あたりではないかと思う。
 中でも突出してハイレベルだった三シリーズを、メインイラストレーターとともに書き出してみよう。

●「超時空要塞マクロス」高荷義之
●「ガンダムMSV」石橋謙一
●「聖戦士ダンバイン」開田裕治

 これらのシリーズは、メインイラストレーターだけでなく、もうどの箱絵をとってみてもそれだけで買いたくなるような傑作ぞろいだった。
 高荷義之は挿絵やミリタリーモデルの箱絵、石橋謙一は航空機模型の箱絵、そして開田裕治はSFや怪獣イラストなどの得意分野を持っており、それぞれの持ち味を生かした作風でロボットプラモの新境地に挑んでいた。

 マクロスやMSVの場合、中身も先行するガンプラより技術的な進化が見えて満足度が高かった。
 私の独断で両シリーズの箱絵の傑作を上げるとすれば、以下のもの。


●1/5000マクロス強攻型
●1/144 MS-06R ザクU

 ちょっと残念だったのがダンバインのシリーズで、箱絵の華麗でファンタジックな世界観に、中身のプラモが追い付けていなかった。
 今あらためて組んでみると、異世界メカの先例のない立体物としてはかなり頑張っているのが分かる。
 二重関節の多用で当時のプラモとしては可動範囲が広いし、三本爪で支える足首は見た目以上に安定感がある。
 極上の箱絵との落差で損をしてしまっている印象だ。
 どの絵も素晴らしいのだが、後半主役メカ・ビルバインの1/48のボックスアートは、往年のプラモ少年の記憶の中に「超傑作」として刻み込まれているはずだ。


●1/48 ビルバイン

 同じ開田イラストでは、ロボットプラモではないが同時期の怪獣プラモシリーズ「The特撮Collection」が素晴らしかった。


●1/350ImageScale メカゴジラ The特撮Collection 


 MSVとダンバインの両シリーズは初めからバンダイのプラモなので、待っていれば今でも再販は望める。
 とくにMSVシリーズは再販頻度も高い。
 ダンバインの方は金型の管理状況の問題か、一部再版されないアイテムもあるようだ。
 それにしても発売から三十年以上経った今、メインイラストレーターの石橋謙一、開田裕治の画集を求めなくても、現役プラモのボックスアートとして楽しみ、作る時の参考にすることができるのは、素晴らしいことだ。

 マクロスシリーズの高荷義之の箱絵は少し事情が異なり、箱絵まで当時そのままのプラモの再販はほとんど望めない。
 あの迫力のある箱絵のシリーズが現役プラモではないのは、なんとももったいないことだ。
 私の手元には、マクロスシリーズの箱絵を始め、当時の高荷イラストの多くが収録された以下の画集がある。


●「ロマンアルバム別冊 高荷義之アニメ・イラスト集」
 マクロス、ダンバイン、ガンダム、ザブングルに関する大量のカラーイラストを収録し、インタビューや対談も充実した夢のような一冊。
 多分現在入手困難だと思うが、私は一年ほど前、近所の中古屋の100均ワゴンセールで発見。
 一瞬目を疑ったが、プロボクサーのジャブ並みのスピードで確保した(笑)

 高荷義之画集の類で今求めやすいのは以下のものか。


 

 高荷、石橋、開田の御三方は、私にとってはボックスアート界不動の「ビッグスリー」だ。
 筆使いを活かした絵柄は、CG全盛の今、あらためて凄みを感じる。
 大河原邦男を含め、当時から私は筆跡で魅せる絵柄が好きで、その延長線上で生ョ範義ファンになったところがある。

 80年代前半、こんな豪華で贅沢な箱絵のプラモの数々が、切れ目なく発売される時代にリアルタイムで居合わせて、本当に幸運だったと思う。

 当時を回顧しながら、旧キットを80年代風味で塗った作例は、以下に。

 プラモ・フィギュア作例まとめ

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2018年06月30日

極私的80年代旧キット購入の掟

 子供時代、80年代前半のリアルロボットアニメ、プラモブームにちょうど居合わせ、どっぷりハマった。
 その後、私はぼちぼち作品対象年齢から外れ、80年代後半になるとブーム自体が失速したこともあり、プラモ制作からも長らく離れることになった。

 極私的80年代リアルロボットアニメ年表
 リアルロボットアニメの対象年齢

 それでもなんとなく心の底でくすぶっているものはあり、90年代以降も模型誌を開いてみたり、模型店で新製品の動向をチェックすることだけは続けていた。
 ごくまれに、現行MGやHGUCのいくつかを買ってみて、素組みしてみることはあった。
 そのまま組み立てるだけで色分けがほぼ完了しており、ポージングも自在の新製品を眺め、技術革新に感嘆しながらも、どこか空虚なものを感じていた。

 確かに凄い。
 子供の頃、夢に見ていたカッコよくてよく動くプラモが、ついに手に入ってしまった。
 しかし……
 これ、俺だけじゃなく、誰が作ってもこうなんだな……

 結局、私の心が求めているのは「カッコよくて良く動く完成品」ではなかったのだ。
 80年代のあの頃、なかなか思い描くようにはプラモを作り切れなかった。
 小学生時代はお小遣いが限られていたし、工作技術や塗装技術も全くなかった。
 中学生になると技術は多少進歩したものの、思い描く理想には程遠く、また勉強の方も忙しくなって、一つ一つのプラモを完成まで持っていくことが難しくなった。
 心の底でくすぶっていたのは「あの頃のやり残し」であり、欲しかったのは「プラモを納得できるよう完成できる自分」だったのだ。

 時を経て、私は絵描きのハシクレになり、広く浅くではあるけれども様々な工作技術を体験してきた。
 長らくプラモは作ってこなかったが、素組み(+αの小改造)の枠内を守る限り、旧キットを自分なりに納得できるレベルで塗って完成できるようにはなっていたのだ。
 そして、昔のプラモを一つ一つ完成させることで、自分の中の育ち切れなかった半端な自分を、自己治癒できるらしいことに気付いたのが二年ほど前。
 それ以来、仕事や作品制作の合間に、旧キットをぼちぼち作り続けている。

 旧キット、素組み、アクリルガッシュ筆塗り

     *    *    *

 プラモを購入する時、自分なりの「掟」は守ることにしている。
 コレクションではなく、買ったらあくまで作って完成させることを前提とする。
 中古品は「箱つぶれ」でも安いなら全然OK。
 一部パーツ欠けなどのジャンク品でも、無理なく完成させられそうならOK。
 一期一会を大切にし、作るのにプレッシャーを感じるようなプレミア品には手を出さない。
 以上の「掟」を遵守するための、各シリーズの再販や中古相場の大体の目安をまとめておこう。
 

★ガンプラ
 他のどのシリーズよりも全般に再販が望みやすく、基本的に価格も発売当時のまま据え置き。
●ノーマルシリーズ
 MSであれば、とくにコレクションサイズの1/144は、再販頻度が高い。
 それ以外のスケールやMA、支援メカ、戦艦等も、頻度は低いが待っていれば再販は望める。
 ノーマルシリーズのガンプララインナップについては、過去記事で詳しくまとめたことがある。
 ブーム当時のガンプラ
●MSV
 1/144、1/100のMSVは、ノーマルシリーズ同様、再販頻度は高い。
●ゼータ
 それなりに再版されている。
●ダブルゼータ
●センチネル
●逆シャア
 これらのシリーズは、頻度は多少低くなるが、再販は望める。

 ガンダム以外の作品でも、バンダイから出ていたシリーズは、頻度は低いが再販はされている。
★ザブングル
★バイファム
★ダンバイン
★エルガイム
★レイズナー
★ドラグナー
 さすがに価格は当時のままとはいかず、多少の割増になるケースがあるようだ。
 また、金型の管理状況の問題からか、一部再版されないアイテムもある模様。


 問題は「非ガンダム、非バンダイ」の旧キットシリーズだ。
 基本的に再版は望めず、極めて低い頻度で再版されたとしても、価格は大幅に上がるケースが多い。
 当時品を

★イデオン
 初期ガンプラブームと同時発売だったので生産数がかなり多かったらしく、探せば当時品でもさほど高価でなく求めることが可能。
 とくに敵メカは中古価格がかなり安い。
★ダグラム
★マクロス(現在、再販はバンダイから)
★ボトムズ
 これらのシリーズは、当時品または過去の再販品で、価格二倍程度なら買いか。
 三倍以上になると、よほど旧キットに思い入れのある人以外は、素直に内容が飛躍的に改善された現行キットを買う方が良いと思う。
★モスピーダシリーズ
 つい最近再販があった。今がチャンス!


 旧キット制作は、基本的に数百円から千円二千円程度のプラモを、時間をかけてちまちま作り上げ、塗り上げる、安上がりの趣味だ。
 私の場合は中高生の頃からの未完成癖を矯正する、心のリハビリのような気分で取り組んでいる。
 これからも、無理のない範囲でぼちぼち行きます。

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