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2017年03月08日

連邦のプロパガンダ?

 80年代初頭のガンプラブーム当時、多くの子供たちがそうであったように、私はプラモ先行のガンダムファンだった。
 不人気で打ち切りになった本放送はもちろん見ておらず、プラモデルに付属した簡単な解説や、ケイブンシャの「ガンダム大百科」等でストーリーの概要を知った。
 当時はまだ動画配信はおろか、ビデオ録画すら一般化していなかったので、はじめのうちは劇場版のTVCMで断片的に流れる映像だけが、ほとんど唯一の「動くガンダム」だったのだ。
 だから映像や音楽については、後発の劇場版の方に先に触れていたことになる。

 劇場版は三作とも主題歌に恵まれていて、けっこうヒットしていた。
 第一作の主題歌「砂の十字架」は、谷村新司の楽曲を当時まだ無名だったやしきたかじんが歌っていて、のちにその経緯を元にしたトークが持ちネタになっていた。
 第二作の「哀戦士」と第三作の「めぐりあい」もかなり売れて、アニメソングが一般の歌番組にまで頻繁に登場するケースのはしりになった。
 ガンダムは、内容やメカニックデザインだけでなく、アニメソングの改革でもあったのだ。
 なぜそんなことが可能になったかといえば、映画が大ヒットしたことはもちろんだが、主題歌自体が「普通に聴ける良い曲」だったことも見逃せない。
 ロボットアニメの主題歌なのにロボットの名前を連呼せず、歌詞はストーリーや世界観に即しながらも、作品から離れて曲単体でも十分鑑賞できるクオリティになっていたのだ。

 先に劇場版の主題歌を聴いてしまっていたので、ようやく再放送でTV版を視聴した時には、逆の意味で驚いた。
 主題歌「翔べ!ガンダム」が、あまりにもベタベタのロボットアニメソングだったのだ。
 この曲はこの曲でTVアニメの主題歌としてよくできており、思い入れのある人も多いだろう。
 だから決して貶める意図はないのだが、劇場版主題歌とは全く「方向性」が違っていたことは確かだ。
 歌詞の中に「機動戦士ガンダム」という番組名ががっちり入っていて、アップテンポで勇気を鼓舞するような曲調は、ロボットアニメの主題歌としては王道中の王道だ。
 ただちょっと気になるのは、曲の中で「ガンダム」の名は連呼されているものの、アニメの内容と歌詞の内容がほとんど無関係になっている点だ。
 関連する記事中でも度々述べてきた通り、アニメ「機動戦士ガンダム」は、単純に闘志を燃やす内容ではないし、単純に巨大な敵を討つ内容でもないし、単純に正義の怒りをぶつけるような内容ではなかったのだ。
 歌詞には「井荻麟」名義で富野監督自身もクレジットされているので、一応この歌詞は「監督公認」ということになるだろう。
 なぜこのような乖離が生じたのか、大人になってみると、色々妄想が掻き立てられるところだ。

 一つ考えられるのは、歌詞を書いた時点では、タイトル以外に表にできることがあまりなかったのではないかということだ。
 TVアニメの主題歌は、当然ながら第一回放映分が完成するかなり前から制作が進められていなければならない。
 今でこそ全く新しいリアルロボットアニメの始祖としての地位が確定した「ガンダム」だが、企画の初期段階では、純然たる子供向けのロボットアニメの中の一つとして話が進んでいたはずだ。
 作り手の「革新的で枠に収まらない」志の部分は、スポンサーやTV局に対しては、むしろ隠しておきたかったのではないだろうか。
――アニメの内容になるべく触れず、子供番組の主題歌としての形はきっちり整った歌詞をでっちあげろ!
 今あらためて歌詞を眺めてみると、そんな意図すら感じられてしまうのは、私が汚れっちまったおっさんであるせいだろうか(笑)
 露悪的な表現をすれば、金主をだまくらかす方便として書かれた歌詞ではないかという妄想が湧いてくるのだ。
 保守的なスポンサーの意向と格闘しながら、ガンダムのスタッフはやりたいことを貫いた結果、視聴率の不振から一度は打ち切られてしまう。
 それでも奇跡の復活で劇場版は空前の大ヒットとなり、副産物としてガンプラという文化まで生み出してしまう。
 内容と全くそぐわない歌詞の主題歌は、劇場版の制作とともに変更し、広く一般にヒットさせてしまう。
 もちろん全てが作り手側の「計算通り」であったはずはなく、そこには「時代の要請」と呼ぶほかない不確定要素が大きく関与したのだろう。
 結果的には、作り手が初期に企てたかもしれない「嘘や方便」は、予想外の商業的なヒットによって免罪された。
 ある意味、これは「完全犯罪」ではないかと思うのだ。
 
 あまり同意は得られないと思うが、ある時期から私はTV版の主題歌「翔べ!ガンダム」を聴く時、「これは連邦のプロパガンダではないか?」と解釈するようになった。
 噂の天才少年パイロットが駈る最新鋭の機体の活躍を宣伝し、地球連邦内の戦意高揚を図るために作られた曲を仮想するなら、まさにこんな曲ではないだろうか?
 低年齢向けのサブカルチャーの商業的ノウハウは、技術としては政治的プロパガンダの手法とほぼ一致しているのだ。
 アニメ「機動戦士ガンダム」はその内容によって、小学校高学年以上の子供に、アニメソングに対する批評眼までインストールしてしまう作品だったのだ。

 TV版や劇場版「機動戦士ガンダム」の主題歌、挿入歌をあらためて味わってみたい場合は、以下のCDがよくまとまっている。



 曲間にアニメの名シーンの音声が挿入されているのがまた素晴らしい。
posted by 九郎 at 21:27| Comment(0) | TrackBack(0) | サブカルチャー | 更新情報をチェックする

2017年03月27日

旧キット 1/144 ガンキャノン

 相変わらず暇を見つけてはガンプラ旧キットを作っている。
 今回は1/144ガンキャノン。
 以前作った1/100リアルタイプガンキャノンは本当に良いプラモで、私の旧キット趣味に火をつけてくれた作品になったのだが、小サイズのこちらはどうだろうか。
 例によってamazonでは高値がついている時期もあるが、基本的には昔と同じ300円で入手できる懐かしプラモである。


●1/144 ガンキャノン

 まずは素組み。

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 成型色は赤一色で、ちょっと目が痛い。
 1/100は成型色だけでもかなり色分けが出来ていたのだが、廉価な小サイズモデルなのでこれは仕方がない。
 形状自体は1/100をそのままサイズダウンした感じで、よくできている。
 確かガンプラブーム当時も1/100が先行で、後から1/144が発売されていたはずだ。
 関節の構造などはかなり省略されていて可動軸がちょっと細く、塗装のためにいじっていたら肘関節を折ってしまった。
 折った瞬間記憶がよみがえってきた。
 ああ、そうそう、小学生の頃も同じところを折ってしまったっけ!
 仕方がないので片肘は接着固定。
 もともと動かして遊ぶつもりはない(もうおっさんだから)ので、別に問題ないのだが、子供の頃はショックだったなあ……
 上の写真でライトグレーに見えているところは、パーツの合いが悪かったり、ヒケがあったりしたところを、タミヤパテで修正した箇所。
 旧キットを作る以上、こうした基本工作は楽しまなければならない。

 色はいつものごとく、缶スプレーのつや消しブラックからアクリルガッシュ筆塗り。
 今回アニメ版ではなく、リアルタイプカラーにしてみた。

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 まさにガンキャノン!
 おっさんの記憶の中のガンキャノンそのもの!

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 1/100と並べるとこんな感じ。

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 ついでに1999年発売のHGUC第一弾、1/144ガンキャノンとも並べてみよう。

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 こちらも発売当時買ってみて、接着剤要らず、塗装要らずでここまでよく動く完成品ができるのかと驚愕したのを覚えている。
 デザイン上どうしても肩幅が広くなるところを、キャノンを「少しはみ出させる」形でスタイルをまとめた発想が素晴らしく、とても良いキットなのだが、結局素組みした時点でそれ以上いじる意欲がわかず、放置していた。
 今はバージョンアップ版も発売されているけれども、ちょっとガンキャノンにしてはスタイルが良すぎて、おっさんの感覚には合わない(笑)
 やっぱりガンキャノンは武骨な支援メカでないとね。



 可動フィギュアを比較的安価に欲しいなら、HGUCは素晴らしい。
 しかし、プラモを模型としてがっちり作って塗りたいなら、やっぱり旧キットだ!
posted by 九郎 at 23:18| Comment(0) | TrackBack(0) | サブカルチャー | 更新情報をチェックする

2017年03月28日

旧キット 1/144 ガンタンク

 続いてガンタンク。
 こちらも基本的に昔と同じ600円で入手可能。


●1/144 ガンタンク

 このプラモも小学生時代に作ったことがある。
 1/144サイズのMSでは最高値の部類で、同じ600円はジオングとゾックだけだったと記憶している。
 まずは素組み。
 例によって、ライトグレーに見えるところはパテによる修正が必要な個所。

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 ガンダムの倍の値段だけあって、圧倒的なボリュームだ。
 成型色はダークブルー一色で、キャノピーもクリアーではないけれど、キャタピラは軟質素材使用でけっこうモールドが細かい。

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 今回はちょっとだけ改造した。
 素組みだと、肘関節が可動の仕組みはちゃんとあるのにパーツが干渉してほとんど曲がらない。
 このままでは手のバルカン砲を前に向けようとすると、「前へならえ」みたいになってしまう。
 溝を延長し、少々肘の内側を削ることで、多少は曲がるようにすることができる。
 あと、ボリュームがありすぎて素組みの完成品は箱にしまえなくなるので、腰部と両腕は脱着可能にした。
 後の収納まで考えるのが、大人のプラモ作りのたしなみである!
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 戦車なので、足元(足じゃないけど)中心に汚すのが楽しい!

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 腰を脱着可能にするついでに、回転もできるようにした。

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 設定ではコアブロックが収納される箇所なので回転できないはずなのだが、やはり「戦車」としては砲部の回転は欲しいのである。

 私は個人的な趣味から「旧キットしばり」で作っているけれども、今普通にガンタンクが欲しいなら、HGUC版を買うのが正解だろう。
 色分け、可動、キャノピーのクリアー化など、旧キットの欠点が全部解消されていて、しかも実売価格にほとんど差がない!


●1/144 HGUC ガンタンク
 
 ただ、やっぱり「おれの思うガンタンク」より、ちょっとスマート過ぎるのが難……

 ともかく、連邦のV作戦コンプリート!

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posted by 九郎 at 20:12| Comment(0) | TrackBack(0) | サブカルチャー | 更新情報をチェックする

2017年03月29日

旧キット 1/144 ジム

 今月は連邦で行きます!

 続いてのネタは連邦の量産型MS、GM(ジム)。
 こちらも基本的に昔と同じ300円で入手可能。
 プレミア価格で買うようなものではない。


●1/144 RGM-79 ジム
 
 今回は全くの素組み。

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 成型色はガンダムよりやや色味の強い、薄いエメラルドグリーンのような感じ。

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 ジムはいわば「量産型ガンダム」だ。
 生産コストを抑えた一般兵士用のMSを、ガンダムから引き算して絶妙に「弱そう」なデザインにまとめてあるのが素晴らしい。
 先月紹介した旧型ザクでも述べたけれども、一度完成させたデザインから「盛って」強そうにするよりも、「削って」弱そうにする方がデザイン作業としては高度ではないかと思うのだ。

 ガンダムと形状の共通点が多い分、先行発売のガンダムのプラモから改良されている箇所がいくつかある。
 ガンダムやザクでけっこう難易度の高かった腕の取り付けが、シンプルに挟み込みになり、クリック構造も付いている。
 腕の形状は微妙にレベルアップ。
 右手はスプレーガンを持った状態と、サーベルが持てるように穴の開いた握り手が付属。
 シールドののぞき穴は開口。
 などなど。

 このプラモも小学生の頃作った覚えがある。
 おっさんになってから作ると、プラモの出来は向上させつつ、見た目はきっちり「弱そう」に製品化しているバンダイの企業努力が見えて、味わい深く感じられるのである。

 いつものように缶スプレーのつや消しブラックから、アクリルガッシュ筆塗りで塗装。

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 白っぽい部分はアニメ設定ではもっと色味が強いのだが、私は彩度を落とすスタイルが好みだ。

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 ガンダムとの比較。

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 ジムは、定価が安かった頃の初期のHGUCでも発売されていて、こちらも味わい深い良いプラモだ。
 堅気の衆にはこちらがお勧め。



 でも、私はやっぱり旧キットがいい。
posted by 九郎 at 22:30| Comment(0) | TrackBack(0) | サブカルチャー | 更新情報をチェックする

2017年03月30日

旧キット 1/144 ボール

 もういっちょ!

 今月最後のプラモ紹介は、連邦の量産MS(?)ボール。
 こちらも基本的に昔と同じ300円で入手可能。


●1/144 RB-79 ボール

 このプラモは小学生時代に作った記憶がない。
 小遣いは限られているので、「ボールはいらん!」と思ったのだろうか。
 荷物整理をしていたら、完成させていないものが見つかった。
 おそらく90年代に買ったものだと思うが、なぜ買ったかは覚えていない(笑)
 
 今回は全くの素組み。
 塗装前の写真を撮り忘れたので、いきなり完成写真からいってみよう。

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 飾り台と、1/250の小サイズのボールがおまけに付いている。
 1/250というのは、ガンプラブーム当時発売されていた「ガンダム情景模型」や、一部のモビルアーマー、Gアーマーなどと共通のスケールで、並べられるようになっているのだ。

 成型色はアニメ設定の地色に近い、薄いラベンダーだった。
 1/144のプラモ本体は、頭頂部の砲台と腕関節が可動。

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 どこからどうみてもボール以外の何物でもない。
 作業用ポットを応急で武装したみたいな「間に合わせ感」が、とにかく物量でジオンを圧倒しようとする連邦の焦りを表しているようだ。
 MSなのに、中古だったら百万くらいで売ってそうな、見事な雑魚キャラの雰囲気がたまらない。
 相方のジムと並べると、エースパイロットが駈るガンダムの華々しい活躍とは違う、一般兵士のリアルな戦場の空気が感じられてくる。

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 ボールはもうこの旧キットで十分じゃね?
 とも思うのだが、一応HGUC版も紹介しておこう。
 二機セットとはいえボールで千円超えは、私としては「高け〜」と思ってしまうのだが、色分けや可動、コクピットまで再現されていれば、このくらいの値付けにはなるだろう。
 それはわかるのだけれども。。。


●HGUC 1/144 RB-79 ボール ツインセット

 旧キット作例紹介、今月はここまで!
posted by 九郎 at 12:43| Comment(0) | TrackBack(0) | サブカルチャー | 更新情報をチェックする