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2007年02月21日

晴明神社

 北野天満宮に早咲きの梅を見に行った日、足を伸ばしてもう一つの神社に参拝してきた。

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 今はもう、ごく普通の橋にしか見えない「一条戻橋」のほど近く、五芒星ののぼりを目印に進むと、その神社はある。

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 陰陽師・安倍晴明を祀る晴明神社である。

 昔の戻橋は境内に保存されている。
 晴明伝説を再現した式神像とともに。

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 奥に見えるコンテナ状のものは、神社公認のグッズ販売所。

 神社の隣には、非公認(?)のグッズ販売店もある。

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 境内には他に、イラストで晴明伝説を略述したパネル展示があり、↓このようなものもある。

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 現代における陰陽師人気の高さがうかがわれる。

 天満宮とともに参拝したのは、晴明伝説の中に菅公の怨霊を鎮めたエピソードがあるからだ。平安朝最強の怨霊を見事鎮めた伝説は、時代的には一致しているが、史実かどうかは不明。
 安倍晴明は実在の人物だが、多くの架空の物語を背負っている。背負えるだけの素養を持った人物であった、という表現も出来る。
 そして、物語の中での晴明の、怪しの力の源泉と目されたのが、「金烏玉兎」という書物なのだ。
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2007年02月23日

晴明の秘伝書

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 実在の平安朝役人としての安倍晴明とは別に、後世に成立した数々の陰陽師・晴明伝説。その物語の中で活躍する晴明はまさに超人、それもかなり怪しい光を放つ異様な超人として描かれている。
 物語の中の晴明は「葛の葉」という霊狐を母に持ち、少年時代には助けた蛇に連れられて竜宮城に赴き、妖怪・玉藻前を調伏し、唐に渡って仙人に秘法を伝授され、宿敵・芦屋道満と激しい術比べを繰り広げる。
 もちろん史実ではないのだが、晴明と道満の最後の戦いは、実はある書物の争奪戦でもあった。
 その書物こそが「金烏玉兎」だったのだ。

 このカテゴリ「金烏玉兎(きんうぎょくと)」では、この伝説の書物について絵と文章で紹介してみたいと思う。
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2007年02月24日

金烏玉兎の由来

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(↑クリックすると画像が大きくなります)


 伝説の秘書「金烏玉兎」、正確な書名を「さんごくそうでん おんみょうかんかつ ほきないでん きんうぎょくとしゅう」と読む。(一部表示されない漢字があるので、画像内を参照)
 書名をまとめると「天竺→唐→日本の三国相伝、陰陽・天地・日月にまつわる秘密の全てを網羅した安倍晴明撰の書」と言うほどの意味になる。
 この書物の由来としては、以下のような概略の物語が伝えられている。

 昔、天竺で釈尊が説いた天地の成り立ち・暦に関する経を文殊菩薩が結集した。
 菩薩は聖霊山において、その教えを唐の国から来た伯道上人という仙人に伝授した。仙人はその書物を唐に持ち帰り、やがてそれは皇帝の管理下に置かれることになった。
 その書物「金烏玉兎」の名は日本にも届き、日本招来のための使者として安倍仲麻呂が入唐。しかし志半ばにして異国の地に倒れる。次に派遣された吉備真備は仲麻呂の霊に助けられつつ、見事秘伝の書を日本に持ち帰り、厳重に祀って保管した。

 時は流れ、吉備真備の手によって、唐で倒れた仲麻呂の血を引く不思議な童子に「金烏玉兎」は伝えられた。父から安倍家の血を、母から霊狐の力を受け継いだこの童子こそ、後の安倍晴明であった。
 成長した晴明は唐に渡り、直接伯道上人の口伝を受けて「金烏玉兎」の正当な所有者となった。
 その後、宿敵・芦屋道満との激しい争奪戦、晴明の死と再生を経、「金烏玉兎」は晴明自身の手によって、現在の形に書き改められた。


 真偽はともかく、このような由来をもつ書物として「金烏玉兎」は伝えられてきたのである。
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2007年03月29日

金烏玉兎にまつわる物語

 金烏玉兎にまつわる物語には、書物としての「金烏玉兎」そのものに描かれている物語と、「金烏玉兎」の持つ力を表現するための周辺物語がある。
 本編である「金烏玉兎」が非常に専門的であったためか、注釈書や由来書の方が広く一般に流布された。そのような書物の中で、元々はバラバラに成立していた安倍晴明伝説が集約されて、波乱万丈の物語が熟成されていった。

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 晴明の宿命のライバルとしては芦屋道満が有名だ。箱の中身を当てる術比べで、先に正解である「大柑子十六個」を道満に言い当てられた晴明は、直ちに術をもって「鼠十六匹」に変身させ、勝負を制する。

 時代が下り熟成された物語の中では、道満は晴明の「魂の兄弟」として登場する。
 (以下は、史実ではない物語の世界の出来事)

 晴明の前世である阿倍仲麻呂は「金烏玉兎」を得るために唐に渡り、志半ばで倒れるのだが、渡唐前に兄に安倍家の後事を頼んでいた。ところが兄は裏切って安倍家乗っ取りを企むが、結局失敗に終わり、安倍家自体も没落していく。
 生まれ変わった晴明は、様々な試練を超えて大陰陽師として成長していくが、同じく転生した兄も芦屋道満として術を磨いていた。
 前世の因縁に引きずられるように両者は再び対峙する。道満は晴明の手元にある「金烏玉兎」を我が物にしようと画策し、やがて二人はお互いの存在をかけて術を比べる。
 勝負は晴明に軍配が上がり、宿命を悟った道満は晴明の弟子となり、世の平和のために尽くすようになる……


 宿命のライバルは実は「魂の兄弟」であり、対決後は和合してともに世のために尽くすというのは、非常に完成された物語の定型だ。今でも多くの作品世界がこのパターンを踏襲している。
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2007年03月30日

金烏玉兎にまつわる物語2

 金烏玉兎にまつわる物語の中での安倍晴明は、やがて神話的な存在へと昇華して行き、時代を超えて活躍するようになる。

 実在の安倍晴明が活躍した時代の百数十年後のこと、宮中を惑わす一人の妖女が現われた。絶世の美女、玉藻前(たまものまえ)である。
 彼女を寵愛する天皇が重い病に犯されたため、その原因の特定に晴明が呼び寄せられ、占いが行われた。結果、玉藻前は中国でいくつもの国を滅ぼしてきた魔性の妖狐、金毛九尾であることが判明した。
 各国の王の心を捉え、蕩かせ、腐らせて、国を滅ぼす大妖怪である。

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 正体の露見した玉藻前は直ちに狐の姿になって逃走したが、ついに那須野の原で討ち取られた。流れ出た血は凝って石となり、毒気を吐き出す殺生石となったという。


 この「殺生石」の物語にはいくつかのバージョンがあるが、金烏玉兎の由来書の一つによれば、金毛九尾を調伏したのは安倍晴明であるという設定になっている。
 晴明と言えば、霊狐・葛の葉を母に持つ。ここでは狐の霊力を受け継いだ主人公が、同じく狐である妖怪を退治する構造になっている。
 主人公が調伏されるべき適役の性質を併せ持った「あいのこ」であるという設定は、現在でも多くの作品世界で踏襲されている定型である。
posted by 九郎 at 23:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 金烏玉兎 | 更新情報をチェックする