2007年04月30日

金烏玉兎の創世神話4

 古い形の中国神話では、原初の巨人・盤古は死して山脈になったと伝えられているが、「金烏玉兎」においては盤牛王の生死には触れられていないようだ。
 盤牛王がどのような形でこの世に存在しているか、このカテゴリの種本である藤巻一保著「安倍晴明占術大全」より、そのまま引用してみる。

 盤牛王が上の世界におられるときは大梵天王とお呼びし、下の世界に鎮座するときは堅牢地神と申し上げる。また、この神が迹不生であることをもって盤牛大王と名づけ、本不生であることをもって大日如来と称するのである。


 やや難解な文章だが、「梵天」「堅牢地神」「大日如来」などの仏教の概念を使用して盤牛王を説明している。この世界そのものである盤牛王の本地を大日如来にしてあるのは、真言密教の胎蔵曼荼羅を思わせる。

 中国神話には様々なバージョンがあり、同じ神名でも物語が一定しないのだが、一説によると盤古は天皇(てんこう)を生み、天皇が地皇(ちこう)を生み、地天が人皇(じんこう)を生んだとされる。天皇・地皇・人皇を三皇(さんこう)と呼び、伝説上の帝王と考えられている。

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 上図は左から順に地皇・人皇・天皇の図を元にして描いたが、
「金烏玉兎」における盤牛王を活躍の場によって姿を変えるものと仮定すると、

 天皇・・・・・大梵天王
 人皇・・・・・盤牛大王
 地皇・・・・・堅牢地神

 と振り分けて図像を当てはめてみるのも「有り」かもしれない。(このあたりは神仏与太話、融通無碍なお遊びということで……)

 
 ここまでの「盤牛王」についての神話は、陰陽五行の内の「陰陽」がモチーフになっていると思われる。
 天と地、日と月、円と正方形のイメージは、つまるところ「陽と陰」が展開されたものだ。

 そしてここからは盤牛の五人の子供たちの物語、「木・火・土・金・水」の「五行」が展開された「五帝五竜王」の神話が始まることになる。
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2007年05月16日

五帝五龍王

 中世陰陽師の伝説の秘伝書「金烏玉兎」の巻之二には、中国神話を元にした独自の創世神話が語られている。登場する天地創造の神「盤牛王」は、続いて東西南北と中央のあわせて五方の宮を構え、それぞれ五人の子供を生んだ。これが五帝五龍王である。

 この五帝五龍王は、中国起源の五行説を下敷きにしている。世の万物を「木火土金水」の五つの要素に分類する考え方だ。この分類には色や時間・方位も含まれる。以下に基本的な分類パターンをまとめてみよう。

「木」・・・色では青。方位では東。時間では朝・春、人生では「青春」
「火」・・・色では赤。方位では南。時間では昼・夏、人生では「朱夏」
「土」・・・色では黄。方位では中央。
「金」・・・色では白。方位では西。時間では夕・秋、人生では「白秋」
「水」・・・色では黒。方位では北。時間では夜・冬、人生では「玄冬」

 この五分類に陰陽二元論を加味すると、こうなる。

「陽」・・・「木」(陽中の陰)、「火」(陽中の陽)
「陰」・・・「金」(陰中の陽)、「水」(陰中の陰)
「陰陽半ば」・・・「土」

 模式図にまとめてみよう。

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 五行の中では中央の「土」が、やや特殊な扱いになっていることが分る。この特殊さが、次回記事以降に述べる「五帝五龍王」の、とりわけ「黄帝黄龍王」の特殊な扱われ方に表現されていくことになる。


 五行説は近代科学の目で見れば根拠の無い分類ではあるけれども、感覚的には非常に納得しやすいものだ。特に色の分類は「三原色+白黒」になっており、物の色を「三原色+白黒」の五色で分析することが習い性になっている私のような絵描きには、非常に親近感が持てるのである。
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2007年05月18日

五帝五龍王2

 「金烏玉兎」における天地の創造神・盤牛王の五人の子供たちは五帝五龍王と呼ばれ、東西南北と中央の五方を治めた。さらに、この五帝五龍王の子供たちには、十干・十二支などの代表的な暦法が配され、神話の中のキャラクターとして組み込まれている。

 この五帝五龍王とその子供たちを「ともかく絵で描いてみる」ことを目指してみる。占術の詳しい内容は、藤巻一保著「安倍晴明占術大全」を参照のこと。
 絵図の無い神仏を絵にする場合、その神仏と同体とされる神仏や、関連が深いと思われる神仏の姿を引用するしかない。一応の理屈付けはしておくので、当ブログにありがちな、こじつけの「神仏与太話」としてお楽しみください。

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【青帝青龍王】
 盤牛大王と第一の妻の間に生まれたのが青帝青龍王である。大王はこの息子に春の七十二日間を支配させた。青帝青龍王が妻と結ばれて生まれたのが、甲(きのえ)乙(きのと)丙(ひのえ)丁(ひのと)戊(つちのえ)己(つちのと)庚(かのえ)辛(かのと)壬(みずのえ)癸(みずのと)の十干である。
 十干は、木火土金水の五行を、それぞれ陰陽に分けたものだと考えられている。
 
【図像について】
 今回の青帝青龍王の図像は、中国神話の伏羲(ふっき)・女媧(じょか)像から引用している。
 中国神話は同じ神名の説にも様々なバージョンがあって一定しないのだが、伏羲を「天界を治める五人の天帝」の中の、東を治める一人として数える説もあるので、今回はそれを参考にした。
 伏羲と女媧は、元々は中国の一地域で「人類の祖」として伝えられてきた神で、直角定木とコンパスを持ち、蛇体を絡み合わせた姿で表現される。
 本来、伏羲と縁が深いのは「十干」よりも「八卦」なので、十干は八角形の中に配置してみた。
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2007年05月19日

五帝五龍王3

【赤帝赤龍王】
 盤牛大王と第二の妻の間に生まれたのが赤帝赤龍王である。大王はこの息子に夏の七十二日間を支配させた。赤帝赤龍王が妻と結ばれて生まれたのが、いわゆる十二支である。

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【図像について】
 今回の図像は、中国神話の「神農(しんのう)」を参照した。神農は人間に農業や医薬の知識を与えた温厚で慈悲深い神で、中国起源であるが日本でも信仰されている、人気のある神だ。
 またの名を「炎帝」と呼ばれ、天界を治める五人の天帝のうち、南を治める一人に数えられることもあるので、今回の赤帝赤龍王の参考にした。
 五行の「火」にあたる赤龍王と十二支を結びつけたのは、「金烏玉兎」のオリジナルアレンジだと思われる。

 赤龍王と言えば、中国漢王朝を開いた劉邦は赤龍の生まれ変わりで、火徳の体現者であるというお話がある。そして漢王朝末期の「三国志」の時代、赤龍王・劉邦の開いた王朝を大いに乱したのは太平道を奉じる「黄巾党」という一種の道教集団だったと伝えられる。
 五行説では「火生土(火は土を生む)」で、「土」は色では「黄」になる。このことから黄巾党は、五行説を元に漢王朝を終わらせようとした、とする説もあるようだ。
posted by 九郎 at 11:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 金烏玉兎 | 更新情報をチェックする

2007年05月20日

五帝五龍王4

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【白帝白龍王】
 西の宮で盤牛大王と第三の妻の間に生まれたのが白帝白龍王である。大王はこの息子に秋の七十二日間を支配させた。白帝白龍王が妻と結ばれて生まれたのが、「建(たつ)・除(のぞく)・満(みつ)・平(たいら)・定(さだむ)・執(とる)・破(やぶる)・危(あやう)・成(なる)・納(おさむ)・開(ひらく)・閉(とず)」の、いわゆる十二直である。

【図像について】
 今回の白帝白龍王は、中国神話上の帝王「少昊(しょうこう)」を意識している。少昊は一説には「百鳥の王」で、容貌も猛禽類に似ていたと言う。


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【黒帝黒龍王】
 北の宮で盤牛大王と第四の妻の間に生まれたのが黒帝黒龍王である。大王はこの息子に冬の七十二日間を支配させた。黒帝黒龍王が妻と結ばれて生まれたのが、九宮図である。

【図像について】
 今回の黒帝黒龍王は、中国神話上の帝王「(せんぎょく)」を意識している。(せんぎょく)は、魚のイメージを重ねられることもあるようだ。
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