2007年06月21日

どろのうみ5

doro-06.jpg


それからそれから月と太陽は、東の方位を見定めました。
そこからウナギを引きよせて、よくよく事情を説いて聞かせ、承知をさしてもらい受けました。
そして食べてしまってその心味わいを確かめると、ぬるぬる抜けるので飲み食い出入り、水気上げ下げの守護の道具にしようと決め、「くもよみのみこと」と言う神名を与えました。

それからそれから月と太陽は、坤(西南)の方位を見定めました。
そこからカレイを引きよせて、よくよく事情を説いて聞かせ、承知をさしてもらい受けました。
そして食べてしまってその心味わいを確かめると、ぱたぱた平べったいので息吹き分け、風の守護の道具にしようと決め、「かしこねのみこと」と言う神名を与えました。

それからそれから月と太陽は、西の方位を見定めました。
そこから黒蛇(くろぐつな)を引きよせて、よくよく事情を説いて聞かせ、承知をさしてもらい受けました。
そして食べてしまってその心味わいを確かめると、にょろにょろしぶとく強いので、よろず引っぱり出しの守護の道具にしようと決め、「をふとのべのみこと」と言う神名を与えました。

それからそれから月と太陽は、艮(東北)の方位を見定めました。
そこからフグを引きよせて、よくよく事情を説いて聞かせ、承知をさしてもらい受けました。
そして食べてしまってその心味わいを確かめると、おなかが大きく毒を持つので、生き死に、縁を切る鋏の守護の道具にしようと決め、「たいしょくてんのみこと」と言う神名を与えました。
posted by 九郎 at 22:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 泥海 | 更新情報をチェックする

2007年06月22日

どろのうみ6

doro-07.jpg


こうして人間の元はじまりの神が揃いました。
月と太陽の二柱「月日親神」は、人魚と白蛇に様々な道具を仕込み、男と女の雛型としました。

「体はできた。でも、あともう一つだけ、足りないものがあるぞ」
月日親神は泥海をキョロキョロ見澄まします。
すると泥の中をニョロニョロニョロニョロ、ぬたくる無数のドジョウがいました。
posted by 九郎 at 22:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 泥海 | 更新情報をチェックする

2007年06月23日

どろのうみ7

doro-08.jpg


「ああ、そうだった。このものたちがたくさんいたんだ」
月はドジョウを承知させてもらい受け、全部食べてしまって味わって、人間の魂の材料にしようと思いました。
その数は九億九万九千九百九十九。
そして月は男雛型の人魚にはいりこみ、これが人間の種「いざなぎのみこと」となりました。
太陽は女雛型の白蛇にはいりこみ、これが人間の苗代「いざなみのみこと」となりました。
posted by 九郎 at 23:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 泥海 | 更新情報をチェックする

2007年06月24日

どろのうみ8

doro-09.jpg


それから三日三夜の間に、いざなみは種を宿しこみました。
そして泥海の中の一番良いところ「ぢば」に三年三月留まり、七十五日かけて、その周辺に九億九万九千九百九十九人の全ての子供を産みました。
産んだ場所のそれぞれは、今で言うお宮の場所になりました。
生まれた子供はたったの五分(約1.5cm)。
それから五分五分と育って、九十九年後にはようやく三寸(約10cm)まで成長しました。
ところがやっと成人したと思ったら、すぐにみんな出直してしまいました。
それを見て男のはじまり・いざなぎは、ぷいと姿を消してしまいました。

女のはじまり・いざなみは一人になってしまいました。
しかしいざなみには、ねばりふんばり強いカメが道具に仕込まれています。
前にやったやり方のまま、たった一人で再び九億九万九千九百九十九の子数を宿し込み、十月かけて全てを産みおろしました。
この二度目に産んだ場所のそれぞれは、今で言う墓地になりました。
しかしその子らも、五分から生まれ九十九年たって三寸五分まで成人すると、みんな出直してしまいました。

いざなみはまだあきらめません。
三度、同じように子数を宿し込み、全てを産みおろしました。
三度目に産んだ場所のそれぞれは、今で言う、お地蔵様や道祖神を祀る野原の辻になりました。
一度目のお宮、二度目のお墓、三度目の辻が、今でも大切なおまいりの場所になっているのは、この元初まりの時、元の人間が生まれた場所だからです。
その子らも五分から生まれ、五分五分と九十九年かかって四寸まで成長しました。
それを見たいざなみは、はじめてにっこり笑いました。
「ここまで大きくなれば、いずれ五尺の人間になるだろう」
そしてそっと姿を消しました。
すると子供らは、お母さんを慕って残らず出直してしまいました。

いざなみが姿を消してしまった今、もう産んでくれるお母さんはいません。
人間は今度こそ終わってしまうのでしょうか?
いえいえそうではありません。
一度は死んでしまった子らの魂は、お母さんのにっこり笑った顔を思い出して、今度は自分で生まれ変わり始めました。
でもお母さんがいないので、人間の姿がわかりません。
posted by 九郎 at 18:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 泥海 | 更新情報をチェックする

2007年06月25日

どろのうみ9

doro-10.jpg


「人間って、どんな姿だったかな?」

色んな姿を考えて、虫、鳥、けものなど、何度も何度も生まれ変わり、死に変わります。

「人間って、どんな姿だったかな?」

何度生まれ変わっても、どうしても思い出すことができません。
生まれ変わりは何度も何度も数え切れないほど繰り返されました。今の人間が色んな生き物の真似ができるのは、この生まれ変わりがあったからです。
そして八千八度生まれ変わったとき、ようやく人間に似たものが生まれました。
posted by 九郎 at 21:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 泥海 | 更新情報をチェックする