blogtitle001.jpg

2007年09月13日

山のあなたの空遠く

 以前、カテゴリ原風景奇妙な記憶山の向こうへと言う記事の中で、私の記憶の底に残る「前面に水の流れ、背後に山」という空間認識を紹介したことがある。
 この「前面に水の流れ、背後に山」という原型は、偶然かどうかわからないけれども、今思えば風水説による空間認識の基本形とも通じるものだった。

 あの山の向こうには何がある?
 もっと高い山がある。
 そのまた向こうには何がある?
 もっともっと高い山がある。
 そのまた向こうには……

 こうした問いと答えは、おそらく山の麓に生活する人間が、古来素朴に積み重ねてきた空間認識だったことだろう。
 数学の国・印度では、こうした空間認識を非常に精緻な宇宙観にまでまとめ上げ、やがて仏教の「須弥山宇宙」が作り上げられていくことになる。

 当ブログでは以前に一度、簡単ながら須弥山宇宙について取り上げたことがある。今回のカテゴリ須弥山では、更に詳しく紹介してみたいと思う。

 参考図書の紹介はこちら
posted by 九郎 at 23:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 須弥山 | 更新情報をチェックする

2007年09月14日

風輪

 以前、当ブログで仏教の須弥山宇宙観を紹介したとき、以下の図を添付した。

dk-09.JPG

 写実っぽく描いているが、一枚の絵でわかりやすくまとめるために、かなり各部分の大きさの比率をいじってある。つまり、嘘が多い図だ。
 さっそく「嘘が多い」と書いてしまったが、そもそも「須弥山」そのものが、現代科学的な意味では「嘘」という事になる。確かに天文学や地理学としての価値はもう現代では存在しないだろう。
 しかし、人間の心の在り方を世界の構造に投影した模式図と考えれば十分検討に値する宇宙観だと思うし、何よりも「今昔物語」等の仏教説話を楽しむためには、大前提になっている世界観の知識は欠かせない。

 仏教で伝えられる須弥山宇宙観では、各所の詳細な数値まで語られているので、今回はその数値になるべく忠実に描いてみたいと思う。

syumi-01.jpg


 虚空の中に巨大の気体の円盤が浮かんでいる。
 これを風輪という。
 円周の長さは無数(という大きな数の単位)、厚みは160万由旬。
 由旬(ゆじゅん)というのは長さの単位で、一説には約7km。
 無数というのは10の59乗。
 
 厚みも相当な数値だが、円周があまりに巨大であるため、全体が見渡せるほどの十分な距離をとり、斜め上方から眺めれば、上掲の図のような円盤に見えることだろう。

 風輪の上には、下から「水輪」「金輪」「須弥山」そして何層もの「天」が重なっているのだが、風輪の巨大な円周のスケールに比べると、視認できないほど小さな規模に過ぎない。
posted by 九郎 at 13:31| Comment(2) | TrackBack(0) | 須弥山 | 更新情報をチェックする

2007年10月14日

風輪上の世界

 虚空に浮かぶ巨大な気体の円盤「風輪」の上には、液体の「水輪」固体の「金輪」の層が重なっている。
 風輪と、水輪から上の世界は大きさのスケールが違い過ぎ、水輪以上の世界を認識しようとすれば、風輪は限りなく続く平面に見えるだろう。
 水輪より上の世界について、比率をなるべく正確に図示すると、以下のようになる。

syumi-02.JPG


 水輪と金輪は底面積の同じ円柱で、高さはそれぞれ80万由旬と32万由旬だ。(1由旬は約7km)ちなみに最下層の風輪の高さは160万由旬とされている。
 水輪と金輪の境目が「金輪際(こんりんざい)」で、現在日常的に使われる「金輪際」という言葉の語源になっている。
 金輪の中心部にあるのが須弥山で、上空には須弥山山頂と同じ面積の天界が何層か浮揚している。
 図中の金輪から上、他化自在天(第六天)までが、六道輪廻の世界だ。だから「解脱」とは、この範囲から「外」に出るということになる。他化自在天のさらに上空には、悟りの世界が何層にも続いていくのだが、同スケールで図示できるのは、ちょうど六道輪廻の範囲内になっている。

 以前アップした須弥山のイメージ図もあわせて参照すると、感じがつかみ易いかもしれない。

dk-09.JPG
posted by 九郎 at 23:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 須弥山 | 更新情報をチェックする

2007年10月15日

九山八海

 虚空に浮かぶ風輪上に、水輪の層が載る。
 水輪の上層には、ミルクに膜が浮かぶように金輪が載っている。
 そして金輪は、お盆にいくつかの石を配置し、水を張ったように、九つの山と八つの海の世界が展開されている。

syumi-03.JPG


 金輪中央にそびえる立方体のアウトラインをもつ高山が須弥山。
 須弥山を七重の柵のように囲む山が七金山。
 金輪をぐるりと囲む縁が鉄囲山(てっちせん)。

 この合計九つの山の合間には、八つの海がある。
 須弥山及び七金山内の七つの海は淡水で、鉄囲山が囲む一番外周の海は、いわゆる海水である。

 この様を総称して「九山八海(くせんはっかい)」と呼ぶ。
 鉄囲山と七金山の間の海水には、東西南北にそれぞれ洲がある。南に位置する「南瞻部洲(なんせんぶしゅう)」が、我々人間の住む世界だ。
 太陽と月は、須弥山の中腹程の高さの軌道上を周回している。

 衆生が輪廻する六道は、主にこの九山八海の世界で繰り返される。
 六道の内、地獄は南瞻部洲の地下に存在し、畜生・餓鬼・人間は四つの洲上、阿修羅は海中に住する。
 太陽と月を喰う悪魔で紹介したラーフは、一説には東西南北の海を支配する四大阿修羅王の一つとされる。「北野天神縁起絵巻」では、日月を手にした姿で天の神々と激しい戦争を繰り広げている。
 天の神々は、中央の須弥山及びその上空の世界に住んでいる。
posted by 九郎 at 23:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 須弥山 | 更新情報をチェックする

2007年10月16日

四大洲

 鉄囲山と七金山の間の海には、東西南北にそれぞれ洲があり、四大洲と呼ばれる。

 東には半月形の「勝身洲(しょうしんしゅう)」
 西には円形の「牛貨洲(ごかしゅう)」
 南には正三角形に近い台形の「贍部洲(せんぶしゅう)」、またの名「閻浮提(えんぶだい)」
 北には正方形の「倶盧洲(くるしゅう)」がある。

 このうち南の贍部洲が我々の住む世界だ。

 四大洲は金輪上に正確な比率で描写すると、小さくて視認できなくなる。今回は模式平面図で紹介してみよう。

syumi-04.JPG


 この模式平面図はそのまま曼荼羅の構成にも発展する。
 曼荼羅は上空の天界から須弥山を鳥瞰する構造になっており、曼荼羅図内の円形と方形の組み合わせは金輪上の九山八海と重なるイメージを持っている。
posted by 九郎 at 23:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 須弥山 | 更新情報をチェックする