2007年10月17日

南贍部洲

 直径約120万由旬の金輪、その金輪の内側を占める巨大な須弥山及び七金山のスケールと比べると、2000由旬前後の大きさの四大洲は非常に小さい。海の広さと比較すれば「大陸」と言うより「絶海の孤島」に見える。

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 我々人間が住む南贍部洲は、一辺が2000由旬のほぼ正三角形と設定されている。1由旬は約7kmだから、南贍部洲の一辺は約14000kmで、この大きさはインド亜大陸を実測した数値と近い線を行っている。須弥山宇宙観は数値だけ取ってみると、地球のスケールを上回る規模を持っていることがわかる。

 インドの大地を北に進むと、まず「九黒山」が聳えている。その山を越えると「雪山(ヒマラヤ)」に到達する。ヒマラヤの奥地には「無熱悩池」があり、東西南北から四つの大河が流れ出している。
 無熱悩池は一辺50由旬の正方形で、竜王が住んでいる。金輪上空の軌道を周回している太陽と月は、この無熱悩池と大体同じ程度の大きさとされている。
 無熱悩池の更に奥地、南贍部洲の最北には「香酔山」があり、常に妙なる香りと歌舞音曲が漂っているとされる。
 山の向こうにはまた山。香酔山の向こうには、海を隔てて七金山と須弥山が続いている。


 南贍部洲の正三角形(あるいは台形)には、インドから中国を経て日本に伝承されると、それぞれの国の位置も組み込まれるようになった。日本に伝わる絵図では、台形の右肩に「唐土」や「高麗」(朝鮮半島)が表記された物もある。
 インド亜大陸をイメージさせる正三角形は、仏教の広がりとともにユーラシア大陸にまで拡大されて行ったようだ。

 今、試みにGoogle Earthでユーラシア大陸を眺めてみると、わりあい正三角形に近い概容を持っているのがわかる。
 偶然にしても面白い。
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2007年10月18日

七金山

 我々の住む南贍部洲から海を隔てた遥か北方に、金輪上の世界の中心部を占める巨大な山々がある。
 須弥山を中央に、七重の正方形の柵のように取り囲んだ山々を「七金山」と呼ぶ。

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 七金山は外側の低い方から順に、以下のような名称を持つ。

 尼民達羅山(にみんだつら)
 象耳山(ぞうじ)
 馬耳山(ばじ)
 善見山(ぜんけん)
 檐木山(えんぼく)
 持軸山(じじく)
 持双山(じそう)

 外側から順に標高は倍々に高くなり、最も内側の持双山では4万由旬になる。この標高は、日天・月天の周回する軌道の高さと同程度と考えられる。
 須弥山は更にその倍の8万由旬(約56万km)に達する。
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2007年10月20日

須弥山

 七金山を越えると、そこには金輪上の世界の中心、須弥山が聳えている。

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 水面から上の須弥山は、縦横高さ全て8万由旬(約56万km)とされている。図像では伝統的に、中央部のくびれた砂時計のような形状で表現される。

 須弥山は金輪上と地続きだが、神々の住む天界はもう始まっている。これを「地居天(じごてん)」と呼ぶ。
 金輪水面から最初の天界「四大王衆天」までの高さが4万由旬で、それ以上の天界は、順に高さが二倍の地点に展開されていくことになる。
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2007年10月25日

地居天

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 須弥山は神々の住む天界の始まり。中腹までの四段の張り出しの最上階には、東西南北を守る四天王が住んでいる。
 東は持国天、西は広目天、南は増長天、北は多聞天(毘沙門天)で、下の三段や七金山等にはそれぞれの眷属が存在している。
 海中の阿修羅から天界を守る精鋭軍だ。

 須弥山の頂上は一辺8万由旬の正方形になっており、神々の宮殿が立ち並んでいる。三十三の神々が居を構えるので「三十三天」と呼ばれる。
 三十三天の中心部は「善見城」で、神々の王「帝釈天」の住いだ。
 帝釈天はインド神話のインドラ神を発祥とする。手に雷撃を意味するヴァジュラを構え、千の目を持つとも伝えられる。
 仏教に読み替えられてからは優美な貴神の姿で表現されることが多いが、密教図像では元々の雷神の性格を想起させる武装した姿で描かれることもある。
 
 三十三天上空には、更に何層もの天界が重なっている。
 金輪に地続きの地居天に対し、これより上の天界は空中に浮揚しているので「空居天(くうごてん)」と呼ばれる。
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2007年10月27日

夜摩天

 金輪上の海面から続く二層の天界、四大王衆天と三十三天の上空には、第三の天界にして空居天の第一層「夜摩天(やまてん)」が浮揚している。海面からの高さは16万由旬、面積は三十三天と同じ8万由旬×8万由旬だ。
 夜摩天は閻魔(えんま)と同意で、インドの古い神話における最初の人間、ヤマを起源に持つ。最初の人間=最初の死者なので、ヤマは死の国の王になった。ヤマは仏教に読み替えられて夜摩天となり、須弥山上空で衆生の生死を支配するようになったらしい。
 仏教では天界の神々も不死ではなく、人間よりはるかにおおきな能力と寿命を持っているが、欲望からは離れておらず、いずれ死に行く者であるとされている。
 夜摩天が神々の王・帝釈天の宮殿の、更に上空に住まいしているのはその構図を表現しているのかもしれない。

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 夜摩天の図像にはいくつかの種類があるが、水牛にまたがり、三日月の上に人頭を掲げている姿で表現されることが多く、閻魔大王とも同体であるいう。
 閻魔大王は地獄の支配者で、地獄は金輪上の贍部洲の地下にあるとされている。つまり、衆生の輪廻する六道の世界は、地下と須弥山上空で同じ支配者に挟まれて管轄されていることになる。
 チベットで広く見られる六道輪廻図は、その支配の構図をもっとはっきりと表現してあるので、概容を紹介してみよう。

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 巨大な夜摩天が抱え込む時間の輪の中に六道の世界が展開され、最下部には地獄、最上部には天界が配置されている。天界の部分には須弥山が描かれ、地獄の上部、時間の輪の中心のやや下部には閻魔大王が描かれている。
 時間と生死、欲望に縛られた六道の世界を、巧みに視覚化した図像だ。
posted by 九郎 at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 須弥山 | 更新情報をチェックする