紹介してきた一連の百均ボックス楽器制作は、だいたいこの一年あまりのマイブームだ。
手作り楽器自体は90年代半ばあたりから始めていた。
覚えているかぎりでは、ベランダ栽培の千成り瓢箪を二つ割りにしてボディに使った一弦琴や、一本竹でネックもボディも兼ねた「竹レレ」、ホームセンターで売っている塩ビ管製の尺八などといったネタ楽器を作っていた。
それらはほとんど人にあげたりして手元に残っていない。
当時はあまり自分の作品の記録を取ることに関心がなかったので、残念ながら写真も残っていない。
現存している中で最も古いのが、十数年前に作った以下のウクレレだ。
度々紹介してきた安価な自作キットを制作したものだが、そのころは今の値段の半額程度、1200円くらいで売っていた。
値上がりした割りには木材等の品質が年々落ちてきているので、ちょっと手を出しづらくなってしまったが、今でもそれなりに鳴るオモチャウクレレを安く作るなら、このキットを選ぶことになるだろう。
作業行程を省き、作例や簡単な演奏法が解説されたブックレット付きのセットもあり、書店でもよく見かけた。
どうせ作るならギター的なルックスにしようと、素人なりに色々気負って工夫している。
ヘッド部分を改造して糸巻きが横に張り出す形にしてあり、黒い下敷きからカラス型のピックガードを切り出してサウンドホールの周りに張り付けてある。
制作当時の私は、造形的な関心が主で、音はまあ鳴ればいいかというくらいだった。
だからこの「最初の一本」も、ルックスはそこそこいいけれども、ネックの取り付け角度が原因で弦高が高すぎ、音程が定まりにくくなった。
今見ると、指板を厚目の板から新造すれば、音程はもう少しなんとかなりそうな気がする。
またいずれ心の中で意欲が高まれば改良するかもしれない。
デザインのテーマは「ワタリガラス」だった。
当時の私は(今もだが)、世界各地の神話に残るトリックスターとして「ワタリガラス」に関心を持っていた。
どこにでも持ち運べる携帯楽器としてのウクレレに、神話のキャラクターのイメージを重ねていたのだと思う。
カラスというデザインテーマは今も継続して追求中で、例えばヤタガラスの紋章にそれは繋がってくるのだ。
2014年12月12日
2014年12月13日
縁日ギターの系譜
以前紹介した縁日ウクレレ、実は三代目である。
初代は自作ウクレレの最初期、前回記事の最初の一本の次くらいに作った。
その段階でデザインは完成しており、ステンシルで着色した型紙はそのまま二代目、三代目にも流用した。
初代は友人にあげてしまったので手元に残っていないが、二代目はかなり塗装がハゲながらもまだ現存している。
手作業の着色なので、比較すると微妙に色合いが違う。
二代目
三代目
この稲荷縁日のデザインはかなり気に入っていて、当ブログの初代ロゴ画像や、フリマで売っているTシャツにも使っている。
まあぶっちゃけ使い回しなのだが、このレベルで気に入ったデザインがそうそう連発できるわけがなく、そんなことができるくらいなら私はとっくに「ハシクレ」ではない絵描きになっているはずだ(笑)
私は自分の思い入れのあるいくつかのモチーフについて、いろんな角度からあーでもないこーでもないと時間をかけて煮詰めていくタイプで、それ以外のものには成り得ないのだから、この道を逝く。
。。。と言い訳をはさみながら、同じデザイン系列の画像を並べて、その変遷をまとめておくのである。
縁日ギター
ここまでくると我ながら、TVのヒーローもののシリーズが進行してごてごてのワケわからない進化をしたみたいな感じがする。。。
目一杯複雑化したあとは、やっぱりシンプルに戻りたくなるものだ。
百均ボックスギターMk-2
初代は自作ウクレレの最初期、前回記事の最初の一本の次くらいに作った。
その段階でデザインは完成しており、ステンシルで着色した型紙はそのまま二代目、三代目にも流用した。
初代は友人にあげてしまったので手元に残っていないが、二代目はかなり塗装がハゲながらもまだ現存している。
手作業の着色なので、比較すると微妙に色合いが違う。
二代目
三代目
この稲荷縁日のデザインはかなり気に入っていて、当ブログの初代ロゴ画像や、フリマで売っているTシャツにも使っている。
まあぶっちゃけ使い回しなのだが、このレベルで気に入ったデザインがそうそう連発できるわけがなく、そんなことができるくらいなら私はとっくに「ハシクレ」ではない絵描きになっているはずだ(笑)
私は自分の思い入れのあるいくつかのモチーフについて、いろんな角度からあーでもないこーでもないと時間をかけて煮詰めていくタイプで、それ以外のものには成り得ないのだから、この道を逝く。
。。。と言い訳をはさみながら、同じデザイン系列の画像を並べて、その変遷をまとめておくのである。
縁日ギター
ここまでくると我ながら、TVのヒーローもののシリーズが進行してごてごてのワケわからない進化をしたみたいな感じがする。。。
目一杯複雑化したあとは、やっぱりシンプルに戻りたくなるものだ。
百均ボックスギターMk-2
2014年12月14日
ワタリガラスのウクレレ
2000年代の私は、よく遠出して遍路をやったり、フリマに参加したりしていた。
どちらの場合も「自分で担いで歩ける範囲」の装備が基本で、売り物等を持たなければならないフリマの場合も、なるべくコンパクトにしていた。
映画の寅さんみたいに「トランク一個の流れ者」とはいかなかったが、それに近くなるよう努めていた。
お祭りやイベントでのフリマ参加のときは鳴り物なども持参したくなり、そういう場合はコンパクトなウクレレを選ぶことが多かった。
ウクレレは楽器の中ではかなりコンパクトな部類なのだが、大きさがちょっと微妙で、カバンやリュックにぎりぎり入らないことが多く、扱いに困ることがあった。
もう一回り大きければ、覚悟して別に担ぐか、すっぱり持参を諦める。
もう一回りコンパクトなら、荷物をまとめやすくなる。
そのちょうど境目の辺りの大きさなのだ。
楽器が今の大きさ、形に落ち着いてることには、それなりの必然性がある。
何よりも「音」の要素が大きいし、そこに操作性や携帯性も絡んでくる。
私も色々と楽器工作をやってきて、楽器メーカーから出ているウクレレの大きさや形、素材の持つ意味を、少しは理解できるようになってきた。
もしウクレレに今以上の携帯性(要するに小型化)を求めるならば、肝心の「音」の面で、捨てなければならないものが大きすぎるということは、よくわかる。
だからちゃんとした楽器メーカーが、あまりその領域には手を出していないのも、まあ当たり前のことだ。
しかし、幸いなことに私は素人である。
素人なので、自分の楽しみの範囲でおバカな実験的工作をでっち上げるのも自由自在だ。
もしウクレレに今以上の携帯性を持たせるとするならば、物理的にいくつかの方法がある。
楽器として機能させるために弦駒から指板先端までの寸法はいじりようがないとして、ボディのサイズを削るには、以下の三つが考えられる。
1、薄くする
2、細くする
3、小さくする
どれを選んでも「鳴り」の面で条件が悪くなるのは避けようがないが、どのくらいまでなら自分は納得できるか、それは作ってみなければわからない。
ということで、一度極限まで「細く」してみようと試作したのが、以下の作品。
私の自作ウクレレ4本目くらいに当たり、そろそろノーマルな形に飽きて、変なものを作ってみたい気分になっていたころでもあった。。。
一目瞭然だと思うが、マーチンのバックパッカーをパクっている(笑)
当ブログではお馴染みの、例の廉価版ウクレレキットをぶった切り、バックパッカー風に工作したものだ。
作り始めた時点で「鳴り」はほとんど諦めていて、せめて見映えがするようにとデザインにはかなり凝っている。
デザインモチーフは、最初の一本に続いて「ワタリガラス」だ。
北米先住民のワタリガラスをトーテムに持つ部族の意匠を下敷きにしている。
完成して爪弾いてみると、やっぱりというか、全然鳴らなかった(笑)
本家マーチンは同じような形のバックパッカーウクレレも出しているけれども、もっとちゃんと鳴るんだろうな。。。
十年近く前に作ったものなので、今なら同じ形状でも使用する木材に厚みを持たせる等で、もう少しマシな鳴りのものが作れると思うのだが、制作当時はそれでもけっこう気に入って、旅のお供にしていた。
何よりも、リュックのサイドポケットに突っ込めるお手軽さが良かったのだ。
一人旅の夜、焚き火をしながらこのオモチャウクレレを弾いてみたり、星野道夫の本を開いてみるのが好きだった。
●「森と氷河と鯨―ワタリガラスの伝説を求めて」星野道夫 (ほたるの本)
この本は、今でも何年かに一度手にとって、一人静かにゆっくり楽しむ一冊だ。
どちらの場合も「自分で担いで歩ける範囲」の装備が基本で、売り物等を持たなければならないフリマの場合も、なるべくコンパクトにしていた。
映画の寅さんみたいに「トランク一個の流れ者」とはいかなかったが、それに近くなるよう努めていた。
お祭りやイベントでのフリマ参加のときは鳴り物なども持参したくなり、そういう場合はコンパクトなウクレレを選ぶことが多かった。
ウクレレは楽器の中ではかなりコンパクトな部類なのだが、大きさがちょっと微妙で、カバンやリュックにぎりぎり入らないことが多く、扱いに困ることがあった。
もう一回り大きければ、覚悟して別に担ぐか、すっぱり持参を諦める。
もう一回りコンパクトなら、荷物をまとめやすくなる。
そのちょうど境目の辺りの大きさなのだ。
楽器が今の大きさ、形に落ち着いてることには、それなりの必然性がある。
何よりも「音」の要素が大きいし、そこに操作性や携帯性も絡んでくる。
私も色々と楽器工作をやってきて、楽器メーカーから出ているウクレレの大きさや形、素材の持つ意味を、少しは理解できるようになってきた。
もしウクレレに今以上の携帯性(要するに小型化)を求めるならば、肝心の「音」の面で、捨てなければならないものが大きすぎるということは、よくわかる。
だからちゃんとした楽器メーカーが、あまりその領域には手を出していないのも、まあ当たり前のことだ。
しかし、幸いなことに私は素人である。
素人なので、自分の楽しみの範囲でおバカな実験的工作をでっち上げるのも自由自在だ。
もしウクレレに今以上の携帯性を持たせるとするならば、物理的にいくつかの方法がある。
楽器として機能させるために弦駒から指板先端までの寸法はいじりようがないとして、ボディのサイズを削るには、以下の三つが考えられる。
1、薄くする
2、細くする
3、小さくする
どれを選んでも「鳴り」の面で条件が悪くなるのは避けようがないが、どのくらいまでなら自分は納得できるか、それは作ってみなければわからない。
ということで、一度極限まで「細く」してみようと試作したのが、以下の作品。
私の自作ウクレレ4本目くらいに当たり、そろそろノーマルな形に飽きて、変なものを作ってみたい気分になっていたころでもあった。。。
一目瞭然だと思うが、マーチンのバックパッカーをパクっている(笑)
当ブログではお馴染みの、例の廉価版ウクレレキットをぶった切り、バックパッカー風に工作したものだ。
作り始めた時点で「鳴り」はほとんど諦めていて、せめて見映えがするようにとデザインにはかなり凝っている。
デザインモチーフは、最初の一本に続いて「ワタリガラス」だ。
北米先住民のワタリガラスをトーテムに持つ部族の意匠を下敷きにしている。
完成して爪弾いてみると、やっぱりというか、全然鳴らなかった(笑)
本家マーチンは同じような形のバックパッカーウクレレも出しているけれども、もっとちゃんと鳴るんだろうな。。。
十年近く前に作ったものなので、今なら同じ形状でも使用する木材に厚みを持たせる等で、もう少しマシな鳴りのものが作れると思うのだが、制作当時はそれでもけっこう気に入って、旅のお供にしていた。
何よりも、リュックのサイドポケットに突っ込めるお手軽さが良かったのだ。
一人旅の夜、焚き火をしながらこのオモチャウクレレを弾いてみたり、星野道夫の本を開いてみるのが好きだった。
●「森と氷河と鯨―ワタリガラスの伝説を求めて」星野道夫 (ほたるの本)
この本は、今でも何年かに一度手にとって、一人静かにゆっくり楽しむ一冊だ。
2014年12月15日
再び、NO NUKES,MORE UKES!
反原発関連の専用カテゴリ釜で、NO NUKES,MORE UKES!という手作りウクレレを一本紹介したことがある。
こちらのカテゴリ音遊びではまだ触れていなかったので、改めて紹介しておこう。
私は個人的な信念により反原発、それも「段階的な脱原発」というような一見穏当な意見ではなく、全原発の即時停止を主張する極端な立場をとっており、手透きの時には反原発デモ等にも参加している。
様々な反原発活動について調べていたときに、抗議行動やデモにウクレレを持っていこうというささやかな運動があることを知った。
どうやら合言葉は「NO NUKES,MORE UKES!」というらしい。
前半の「NO NUKES(ノー・ニュークス)」は、言わずと知れた反核の略、後半の「MORE UKES(モア・ユークス)」の「UKES」はウクレレの略称ということで、言葉のニュアンスとしては「止めろ原発、もっとウクレレ!」というほどの意味になるようだ。
ウクレレは音色も見た目も極めて平和的で、どんな場面に持ち込んでも、ポロンと爪弾けばその場に冗談半分みたいな空気を醸し出すことができる楽器だ。
機構的にも社会的にもあまりで巨大で複雑怪奇な原発という代物に対して、小さくてシンプルで、そこにあるだけで笑みが浮かぶようなウクレレという楽器をぶつけてみようという発想が、なかなか面白いと思った。
ちょうど手持ち素材の中に「後は塗るだけ」になっていた半完成ウクレレがあったので、さっそくちなんだペイントを施してみた。
中央のサウンドホールを「O」の文字とシンクロさせるように、言葉の配置をいじっている。
ついでにロゴも作ってみた。
以下三枚は著作権放棄。(クリックすると大きくなります)
今のところ勝手に「NO NUKES,MORE UKES!」の言葉をデザインに使用しているけれども、もし権利関係で問題が生じるようでしたら御一報を。
こちらのカテゴリ音遊びではまだ触れていなかったので、改めて紹介しておこう。
私は個人的な信念により反原発、それも「段階的な脱原発」というような一見穏当な意見ではなく、全原発の即時停止を主張する極端な立場をとっており、手透きの時には反原発デモ等にも参加している。
様々な反原発活動について調べていたときに、抗議行動やデモにウクレレを持っていこうというささやかな運動があることを知った。
どうやら合言葉は「NO NUKES,MORE UKES!」というらしい。
前半の「NO NUKES(ノー・ニュークス)」は、言わずと知れた反核の略、後半の「MORE UKES(モア・ユークス)」の「UKES」はウクレレの略称ということで、言葉のニュアンスとしては「止めろ原発、もっとウクレレ!」というほどの意味になるようだ。
ウクレレは音色も見た目も極めて平和的で、どんな場面に持ち込んでも、ポロンと爪弾けばその場に冗談半分みたいな空気を醸し出すことができる楽器だ。
機構的にも社会的にもあまりで巨大で複雑怪奇な原発という代物に対して、小さくてシンプルで、そこにあるだけで笑みが浮かぶようなウクレレという楽器をぶつけてみようという発想が、なかなか面白いと思った。
ちょうど手持ち素材の中に「後は塗るだけ」になっていた半完成ウクレレがあったので、さっそくちなんだペイントを施してみた。
中央のサウンドホールを「O」の文字とシンクロさせるように、言葉の配置をいじっている。
ついでにロゴも作ってみた。
以下三枚は著作権放棄。(クリックすると大きくなります)
今のところ勝手に「NO NUKES,MORE UKES!」の言葉をデザインに使用しているけれども、もし権利関係で問題が生じるようでしたら御一報を。
2014年12月16日
ドブロ(?)ウクレレ
特に目的を持たずに百均やホームセンターによく行く。
様々な素材や工具をぼんやり眺めるともなく眺めていると、ふいに霊感のようなものが訪れて、工作のアイデアが浮かぶことがある。
以前、プラスティック植木鉢が並ぶコーナーで、商品棚と二重写しになって兜や甲冑が並んでいるのが見えたことがあった(笑)
その時の「幻視」が元で、プラ鉢鎧兜なるものをでっち上げたこともある。
数ヵ月前、百均の調理器具コーナーのステンレスボールや落し蓋の並ぶ一画で、久々に「幻視」が訪れた。
ギラリと金属光沢のある穴の空いた落し蓋を中心に、「ドブロ」と呼ばれるギターの一種の姿が二重写しになって見えたのだ。
ドブロギターというのは、ボディの一部または全部が金属でできており、音の増幅される仕組みが内蔵されたギターのことで、ブルースのスライド奏法等でよく使用される。
前にネットだったか書籍だったかで分解した様子の図を見たことがあって、そのパーツの記憶と目の前のステンレスボールや落し蓋が結び付いたのだろう。
「このボールとフタをウクレレキットにぶちこんだら、ドブロウクレレになるんじゃね?」
ひとたび霊感が訪れてしまえば、ソワソワして作らずにはおれなくなるのが私の習性である。
手持ちの作りかけのウクレレを、急遽ステンレスボールと落し蓋装着タイプに改造してみたのが、以下の作品。
ウクレレのボディにステンレスボールがすっぽりはまる直径の穴を開け、埋め込んだあとに落し蓋をビス止めしている。
パッと見ではけっこうドブロ風。
こちらから自己申告しないと、百均の調理器具使用だとは気づかれない(笑)
途中まで作っていたボディを流用したので、サウンドホールの無い方にボールを埋め込む穴を開けた。だから裏面には本来のサウンドホールが開いており、内蔵したステンレスボールが少し覗ける。
今回は試験的に安く入手したウクレレ用のギアペグを使ってみた。
ステンレスボールと落し蓋の「なんちゃって増幅機」で少しでも音を反響させるため、硬めの弦でテンションを高めようという目論見だ。
結果としては、まずまず成功。
ウクレレ用のナイロン弦の音に加え、金属的な音の増幅があって、なかなか面白い音色が出るようになった。
弦高が高めなので、それこそドブロ風にオープンCかGにしてスライド奏法をやってみても面白い。
昔は造形的な関心が主で、気に入ったルックスのものができれば満足だったのだが、手作り楽器歴10年を超えたあたりから「どうせ作るなら少しでも面白い音色のものを」という欲が出てきた。
怒濤の手作り弦楽器シリーズ、これにて一段落!
様々な素材や工具をぼんやり眺めるともなく眺めていると、ふいに霊感のようなものが訪れて、工作のアイデアが浮かぶことがある。
以前、プラスティック植木鉢が並ぶコーナーで、商品棚と二重写しになって兜や甲冑が並んでいるのが見えたことがあった(笑)
その時の「幻視」が元で、プラ鉢鎧兜なるものをでっち上げたこともある。
数ヵ月前、百均の調理器具コーナーのステンレスボールや落し蓋の並ぶ一画で、久々に「幻視」が訪れた。
ギラリと金属光沢のある穴の空いた落し蓋を中心に、「ドブロ」と呼ばれるギターの一種の姿が二重写しになって見えたのだ。
ドブロギターというのは、ボディの一部または全部が金属でできており、音の増幅される仕組みが内蔵されたギターのことで、ブルースのスライド奏法等でよく使用される。
前にネットだったか書籍だったかで分解した様子の図を見たことがあって、そのパーツの記憶と目の前のステンレスボールや落し蓋が結び付いたのだろう。
「このボールとフタをウクレレキットにぶちこんだら、ドブロウクレレになるんじゃね?」
ひとたび霊感が訪れてしまえば、ソワソワして作らずにはおれなくなるのが私の習性である。
手持ちの作りかけのウクレレを、急遽ステンレスボールと落し蓋装着タイプに改造してみたのが、以下の作品。
ウクレレのボディにステンレスボールがすっぽりはまる直径の穴を開け、埋め込んだあとに落し蓋をビス止めしている。
パッと見ではけっこうドブロ風。
こちらから自己申告しないと、百均の調理器具使用だとは気づかれない(笑)
途中まで作っていたボディを流用したので、サウンドホールの無い方にボールを埋め込む穴を開けた。だから裏面には本来のサウンドホールが開いており、内蔵したステンレスボールが少し覗ける。
今回は試験的に安く入手したウクレレ用のギアペグを使ってみた。
ステンレスボールと落し蓋の「なんちゃって増幅機」で少しでも音を反響させるため、硬めの弦でテンションを高めようという目論見だ。
結果としては、まずまず成功。
ウクレレ用のナイロン弦の音に加え、金属的な音の増幅があって、なかなか面白い音色が出るようになった。
弦高が高めなので、それこそドブロ風にオープンCかGにしてスライド奏法をやってみても面白い。
昔は造形的な関心が主で、気に入ったルックスのものができれば満足だったのだが、手作り楽器歴10年を超えたあたりから「どうせ作るなら少しでも面白い音色のものを」という欲が出てきた。
怒濤の手作り弦楽器シリーズ、これにて一段落!