
●『福島原発の闇 原発下請け労働者の現実』
文:堀江邦夫 絵:水木しげる(朝日新聞出版社)
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70年代末から原発の定検作業を中心に下請け労働の現場を実体験したルポ『原発ジプシー』を執筆する著者が、それに先駆けてアサヒグラフに執筆、水木しげるがイラストを担当した幻の記事があったという。(原題「パイプの森の放浪者」)
90年代から原発関連の本を読み漁っていた私も知らなかったその記事が、2011年の原発震災後に朝日ジャーナル編集部で発見され、本として復活した一冊である。
添えられた多数の水木しげるのイラストが凄まじい。
ろくな資料も無く描かれたのが信じがたいほどに、被曝労働の過酷な現実が活写されている。解説にもあるが、水木しげる本人の過酷な従軍体験が描写の源泉になっていることは間違いないだろう。
本文は『原発ジプシー』の濃厚なダイジェスト版のような内容であり、まともな安全管理が無く、土台無理な放射線まみれの現場労働が恐ろしい。
原発自体はほとんど当時のままであり、今現在も同様の過酷労働が行われていることは間違いなく、事故を起こした福島原発の労働現場は更に酷いものになっているだろう。
今も昔も、原発の下請け労働は「被曝リスクを換金する」のがその本質なのだ。
原発を稼働させるのに不可欠な被曝労働を、電力会社の正社員にやらせず、非正規雇用に押し付ける。
そもそも電力消費地に原発を作らず、わざわざ人口の少ない地方に作り、ロスの大きい長距離送電を行う。
私が原発を忌避するのは、もちろんひとたび事故が起こった際のリスクがあまりに大きすぎることもあるが、こうした通常運転での「悪徳」が受け入れがたいからでもある。
端的に言うなら、原発は存在そのものが差別で成り立っているのだ。
原発について何か論ずるならば、まずは本書で告発されるような下請け労働の現実を認識してからにすべきだろう。
更に言うなら、再稼働派が常に持ち出す「経済性」においても、既に破綻していることが明らかだ。
電力会社に都合の良い数字だけをいくら並べようと、廃炉と半永久的に続く放射性廃棄物の管理コストを考えれば、原発を稼働させればさせるだけ、膨大な負債が積みあがっていくのだ。
超少子化で今後人口が減るしかない日本では、その負債は近い将来とてつもない禍根となる。
これからを生きる若い皆さんには、以上のことをしっかり考えてほしいと切に願うのである。
